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『今年こそ!エッセイ脳』② 「へえーっ」に至る前に必要なもの

さて、岸本葉子さんの「エッセイ脳」2回目の本日は、第二章 頭にはたらきかける文、感覚にはたらきかける文 を読み込んでいきます。

<目次>
第一章
 テーマは連想の始動装置 ー「私」と「公共」の往復運動 
第二章 頭にはたらきかける文、感覚にはたらきかける文 ー 無意識を意識する
👆今回ココ
第三章 リスク回避と情報開示 ー 「自分は他者でない」宿命を超えて
第四章 文を制御するマインド ー 「筆に随う」はエッセイにあらず
終章 ひとたび脳を離れたら

岸本葉子「エッセイ脳」

文章のはたらきとは?

前回は、エッセイとは何か。それは自分の書きたいことを他者が読みたくなるように書くことだと述べました。

「あるある、へえーっ、そうなんだ」

と、思ってもらえる文章が良い◎。
この「へえーっ」の部分をつくる「転」を中心に起承転結を配置していくといった話をしました。

今回は、エッセイを成り立たせている文章の3種類の役割について考えます。

<エッセイを成り立たせている3種類>
① 枠組の文
 (状況説明)
 描写 (状況の中味、具体的な書き込み)
 セリフ (活気、臨場感、描写の補強)

3種類の文章を意識するのは、文章の分類が目的ではなく、「今、この文章がどうはたらいているか、どういう役割を果たしているか」を捉えながら配置してくためです。

小説とエッセイの違い

フィクション(小説)では、ノンフィクション(エッセイ)で書く枠組の文は取り除きます。「つまりはこうです」という念押しや位置づけの一言はいらないからです。これらを描写でするのがフィクション(小説)

例えばエッセイなら「ひと月後に行ってみたところ」と書くところを、ひと月後に、と言った記号的な書き方ではなく、ひと月経ったことを感じさせる描写を置くようにと言われました。病院に通っているならば、待合室の椅子に座ったら、目の前のカレンダーの写真が変わっていたとか、受付の人が変わっていたとか。そういう描写でもって話を前に進める、時間の進行、場所の移動なども、描写でするようにと。

岸本葉子「エッセイ脳」

エッセイの場合は要所要所、説明の文を入れて言いたいことをわかりやすく伝えます。
小説や詩や俳句のように余韻を楽しむ、というより筆者の伝えたいことを誤解のないように伝えることがエッセイでは大切なのでしょう。

頭にはたらきかける文、
感覚にはたらきかける文

① 枠組の文  ・・・ にはたらきかける
② 描写③ セリフ ・・・ 感覚にはたらきかける

枠組の文はにはたらきかけ、描写やセリフは感覚にはたらきかけます。

「あるある」「あ、そう」は枠組の文。「へえーっ」は描写やセリフ。
「へえーっ」が大事と前回言いましたが、それだけでは部分的にリアリティは感じても、何が何だかわからず「そうなんだ」まで辿り着けない。
「へえーっ」に至る前の「あるある」に入っていくには枠組みの文が必要なのです!
「あるある、へえーっ、そうなんだ」というダイナミズムを生み出すには、3種類をバランスよく混ぜていくことが大切です。

言い換えると、

頭にはたらきかける=理解
感覚にはたらきかける=追体験

とも言えます。

読み手が、この「理解」と「追体験」の両方をバランスよく進めていけるようにすることが大事です。偏ると読み手を置いてきぼりにしてしまいます。

これは会話でよくやってるな〜と思いました。
セリフの「へえーっ」だけ伝えて、そこに至るまでの説明がないから相手に伝わらない。補助線としての説明もセットで伝えなくては納得してもらえないんだよなぁ(反省)。「追体験」と「理解」を両方行き来して話ができるようになりたいものです。

アウトライン(枠組)の中で話を進めて、描写で詳しく書き込みつつ、ときどきセリフを入れる。描写だけで流さずに、要所要所ポイントをまとめて引き締めつつ進めるイメージですね

岸本葉子「エッセイ脳」より


「伝える」には他者に対する思いやりが大切

文章を書くことも、話すことも、他者に対する思いやりが大切なんだなーと思いました。
自分の主観で突っ走らないで、要所要所相手がついてきているか確認しながら話を進めるイメージでしょうか。

一方、小説や詩などは説明を描写に代えます。言葉の捉え方に余白を残す。自分の意図を離れて物語が勝手に進んで出来上がるとよく聞きます。芸術は作り手にとっても読み手にとっても他力の部分が存在するのでしょうか。
エッセイは本人が体験したことを中心に文章が書かれるので、ポイントが少し変わるのかもしれません。
次回少し触れますが、言いたいことを悪い方へ誤解されない配慮が必要です。
そこがフィクションとノンフィクションの違いでありシビアな部分かもしれませんね。

それでは続きはまた明日!


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