登山靴の新調に関する雑記
登山をはじめて約15年が経った。各種山道具(ギア)も経年劣化と時代の変遷により買い替え時期に差し掛かっており、登山靴も三代目の買い替え時期が近づいている。この間に世間では道具の軽量化もあって登山はライト&ファストな方向にシフトしつつある中、では四代目登山靴はどう選ぶべきだろうか。半年以上の構想の末に出した結論は、キャラバンの「C1-02S」であった。様々調べる中で想像以上に世の中には「登山靴難民」は多いようだ。特にローカットで登るなんて山を舐めてると怒られた一昔前からすると、当たり前のようにトレランシューズで登る人たちが増えたように、選択肢は明らかに多様化した(昔からいる地下足袋勢や草鞋勢はもちろん)。インスタを開けばお高そうなガチガチアルパインスタイルのおにーちゃんから、ULギアで身を固めて軽やかに山中を駆け巡るハイカーがイケてる写真をアップしている。2ちゃんねる(5ちゃんねる)を見ればゴツい登山靴は特権階級の証であった名残りとの書き込みも目にする。そんな難民の一人となった自分として、店員さんや知人、各種ブログやYouTubeチャンネルレビューなどを参考にして、どういう考えに基づいて一応の答えを出したのかを記す。同じく迷える誰かの参考になればと思う。
■プロフィール
年 齢:アラフォーのおっさん
登山歴:15年+α
形 態:以前は年1回以上 北アルプスなど
最近は比良、鈴鹿、大峯系と近所の低山
日帰り〜一泊程度のテント泊
基本は3シーズンのみ
運 動:10km50分くらいで走る一般人
体 型:175cm60kgくらいやや痩せ型
足 形:甲高幅広
■登山靴遍歴
初代 :ABCマートで買ったミドルカット
二代目:ミズノ ウェーブナビゲーション
三代目:スカルパ シェルモ
◯初代
・学生時代に富士山登山をきっかけに購入。
・柔らかく軽かったが非防水ということもあり
登山にのめり込んでいく中で使わなくなった
◯二代目
・サッカーシューズは代々ミズノユーザーであり、登山靴も足にぴったりあったので購入
(ちなみにプーマ、ナイキ、アンブロなどのサッカーシューズは幅が合わず、ミズノ一択でした)
・値段は当時15,000円前後と手頃
・愛子内親王もご愛用だとか
・ソールは手で曲がりアッパーも比較的柔らかめ
・とにかく自分の足にシンデレラフイット
・実測g
・モンベルで言うところのマウンテンクルーザー200と400の間くらい
◯三代目
・岩場を歩くならソールもガチガチのやつだよね、イタリア靴履いてると玄人感でるよね、ということで購入
・ソールは手ではびくともしないくらい硬い
・幅方向の締付けがややきつく、縦方向も少し余裕が足りなくて下山時に親指が軽くあたる
・良くも悪くも足をガチガチに締め付けて守ってる感
・実測g
・モンベルで言うころののアルパインクルーザー1000をもう少しだけ硬くした感じ
■四代目検討で重視したこと
◯基本は一足のみ
・悩むなら両方買ったらいいじゃん、となるかもしれないが、育児や物価高への対応を迫られるアラフォーのおっさんにはそんな金銭的余裕はない。なにせ数ヶ月に一度は子どもの靴を買い替えなければならないのだ。おっさんの趣味の靴に割く予算などない。
・山登りに使用する登山靴とザックはいつも一緒な相棒である。ほとんど単独行の自分なので、それこそほぼ誰にも会わないような(獣や物の怪の方が数が多いような)山行を重ねる中で、自然と道具への愛着は強くなる。誰もいない山中の、ちょっとした平地にテントを張り漆黒の闇の中で風と獣の音に怯えながら夜を越す際の孤独に寄り添うのは各種の道具なのである。一足に寄り添いたい、という勝手な思い入れがある。
◯足へのフィット
・靴の剛性や格好良さは大事だけれど、何よりも重要なのはフィット感だろう。どうしても登山は長時間の歩行を伴う(自己最長は一日13時間)。豆や靴擦れを起こさないで歩ききるにはフィットが大前提。
・特に甲高幅広で合う靴に限定される。
・そうなると現物を見られる前提になる。よほどマニアックな店にいかなくても実際に履けるものが候補となる。
◯軽さ
・三代目スカルパを履き出してしばらくして気づいたのが、コースタイムがいつもギリギリなこと。これって登山靴の重さ(厳密には登山靴を持ち上げる自分の大腿筋)のせいじゃないか。実際通勤時の駅構内ではおおよそ平地でも階段でも速い部類の自分が、山ではどんどん追い抜かされる。
・ということで、次の登山靴には同等には軽量化を求めようとなった。
◯ソールが硬すぎない
・三代目スカルパを履き出して、下山時に腸脛靭帯炎を発症するようになった。ストレッチを念入りにしても、なるときはなる。仕方がなく下山スピードを落とす(ポールにかなり荷重をかける)ことで膝痛はなんとか抑えてはいるが、当然コースタイムはぎりぎりになる。
・分析すると、どうやら下山時の足裏の動きが起因しているようだった。本来は足裏の先端部分が着地し、足裏のアーチがいくぶんか衝撃を吸収したあとに踵が設置し、膝を含めた足全体に負荷がいく。それがソールが硬い靴を履くと、足裏アーチが吸収する間もなく、ダイレクトに足全体に衝撃が伝わる。自分の貧弱な筋肉ではそれを受け止めきれず、結果膝にしわ寄せがいく。
・ある程度足裏が使えるよう、ソールは硬すぎない程度の強度に留めておくべきだと推測した。
■店員さんへの相談
・上記を踏まえ、知人や店員さんに相談した。「最大15kg(水込み)でテント泊するならどう選ぶか」。下記の通り、おおむね剛性の高い(≒三代目スカルパ的な)ものを推奨する意見が多かった。確かに登山者の脚力はどの程度なのか分からないので、教科書的な答えになりがちだろう。特に老舗店の店員さん的には「最近の若者はトレランシューズでけしからん」な思いもあっただろうと思う。
・某老舗登山店Aの店員さんは「テント泊なら最低限の剛性は必要。最低でもアルパインクルーザー800クラス以上。」
・某老舗登山店Bの店員さんは「軟らかい靴も売れているが脚力次第。テント泊なら靴に仕事してもらうほうが良いのでやはりアルパインクルーザー800以上は必要。最低でもマウンテンクルーザー600レベル。」
・モンベルC店の店員さんは「マウンテンクルーザー600なら行ける。400以下ではかなり足が疲れるはず。」
・モンベルD店の店員さんは「アルパインクルーザー800を推す。」
■ネットでの情報収集
・店員さんとの対面相談の一方で、ネットで見ると意見は多様化する。ベアフット系の登山靴こそ人間本来の足の機能に沿っているとか、岩稜帯でなければテン泊でもトレランシューズでオーケーとか、色々出てくる。
■候補と判定
◯キャラバンC1-02S
・「初心者が履く靴」のイメージ。
・おっさん(おばさん)っぽい気がするが
オールブラックは締まって見えるので許容範囲。
・全体的に足首のカットは高めではあるけれど
見た目とは裏腹に剛性は柔らかめと言える。
・ソールは「キャラバンソール」で実力は未知数。ネット上では濡れた岩場などは比較的滑りやすい、とのコメントもあり。これは試して見ないと分からん。
・幅広な作りであり、モンベルの普通幅とモンベルの幅広ワイドの靴の、中間くらいの幅感覚だと見ている。
・よほど田舎でない限り、登山用品店やアウトドア店に行けば現物がある。見て触って履けるので検討しやすい。
・最終的には(1)程よい剛性、(2)重すぎないという絶妙なポジショニングと、(3)全身モンベルおじさん回避、(4)ブラックは見た目的にも悪くないという、気分の問題で決定。
・懸念しているテント泊〜15kg程度の重量を背負ったうえでの対応力と、キャラバンソールの実力については今後の山行で検証していくしかない。
◯キャラバンfree trek hi
・全体的にアッパーもソールも柔らかい。ぐにゃぐにゃ曲がる。
・同じく3Eだと思うが、C1-02Sと比べて幅方向はややきつめな印象。
・ぱっと見キャラバンと分からず、おしゃれな印象。
・キャンプ用途なども想定されているらしい。
・幅が狭いと感じたので早々に却下。
◯キャラバンC1_DL MID
・C1-02Sの軽量化モデル。ネットでは良い評判を目にすることが多い印象。
・複数店舗をまわったが置いている店がなく断念。
◯モンベル マウンテンクルーザー600
・ミドルカットでやや浅めの作りの印象。
・ソールは比較的かため。トレールグリッパーの吸い付く感じは良い。
・全体として、浅めのミドルカットの割に全体の剛性が高く、その点がアンマッチな感触を持った。
(ローカットなら柔らかく、ハイカットなら硬いのが通常だとすると、浅いミドルカットで硬いってどうなんだろう?)
◯モンベル アルパインクルーザー800
・アルパインクルーザー1000ほどのゴツさはない割りに剛性も確保されており、履いた感じは正直一番良かった。
・もうこれで良いじゃんと思ったが、「全身モンベルおじさんになる」「結局ハイカットの硬いの買ったら進歩がない」という個人的都合で見送り。
・これからそこそこ登山にはまっていきたいという人がいたら、とりあえずこれにしといたら良いと勧める。
・ワイドにすべきかノーマルにすべきかは試し履きして確かめるべき。噂に聞いていたがモンベルのワイドは幅広人間の自分が履いても驚くほど幅広いであり、ちょっと広すぎるか(靴の中で足が動くか)?と思うほど。
■最後に
世の中には沼と呼ばれるものが多々ある。カメラのレンズ、自転車のサドルなど、藻掻けば藻掻くだけ沈んでいく。登山靴も似たようなものだろう。今回の自分の選択の善し悪しは、これから山に行ってみないと答えが出ない。色々なお店の店員さんやネットに情報を出してくれている方々への感謝の気持ちとともに、備忘録として残しておく。