マガジンのカバー画像

本編でいつか使うであろうalice in underland

5
運営しているクリエイター

#小説

間際でさえ美しいのか

「あっ」

 思わず、声を上げた。窓辺に佇み話していた彼の鼻から、すぅ、とまた血が垂れたのだ。

 え?と困惑の声を上げた瞬間、彼が咳き込む。そして口元を押えた手からぱたぱたと零れ落ちる、深紅が。華奢で蝋人形のように白い指を伝い、溢れ、手首へと落ちる。普段あまり表情の動かない彼の、驚いたようなその顔。

「ああ・・・済まない、布を」

「分かったし、動かんとき。大丈夫やよ、狼狽えんと静かにな」

もっとみる

猫の土産

「・・・何じゃ、随分と生臭いのう」

 ボクが部屋に入るなり、ご主人様は宙に紅茶のカップを一瞬止めてそう呟いた。日も暮れかけ、徐々に夜の気配が迫る3番街の外れの洋館。おかしいな、今さっきシャワー浴びてきたばっかりだっていうのに何で気付かれたんだろう。

 暖炉に近寄る。髪が長いから乾かさないと風邪を引くのは知っているけれど、ドライヤーは何となく嫌いだ。まぁ、この時代にエアコンじゃなくて暖炉が部屋の

もっとみる