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アートまち散歩 〜ボテロ展〜

渋谷のBunkarura ザ・ミュージアムにて絶賛開催中の「ボテロ展」に行ってきた。

コロンビアの画家フェルナンド・ボテロ(1932~)は、御年90歳。
卒寿を記念して26年ぶりに日本上陸となる。

油彩、水彩、素描など計70点もの作品が来るとあって、以前からとても楽しみにしていた企画展の一つだ。

予備知識ゼロで観に行くのも面白いが、
私はどちらかと言うとそのアーティストの生き様、ドキュメンタリーをある程度予備知識として持った上で作品を鑑賞したいタイプだ。

なぜならどうしてこんな作品をつくるに至ったのか?どういう文脈でこの作品は出来上がったのか?
その背景となるドラマを少しでもイメージし、理解した上で、作品に込められた感情やメッセージを読み解くことが一つの楽しみとなるからだ。

ということで、今回の予備知識の入り口は、山田五郎さんのYouTube「山田五郎 オトナの教養講座」である。
いつもとてもわかりやすくて面白い!
この記事を読んでくださってるような、美術に関心がある方には是非一度ご視聴いただきたい。

作家の人柄や、作品が作られた時代背景、作品の前後の文脈などを学ぶことで、
ボテロにいたっては、一体なぜ全てが膨らんでいるのか?それを理解することができた。

そこにはやはり彼なりの哲学が潜んでいた。
芸術とは「デフォルメ」だとボテロは言う。
ただあるがままを描くのではなく、そこに自分を乗せる。

自分のルーツ、記憶、感情、熱量をのせて
ひたすらに描いていく。

ルーツとはときに
時代のことであり、地域のことであり、
家庭のことであり、宗教のことであり、
個人的なことだ。

それらを表現する時に最も美しい方法は、
触覚値によるデフォルメだと、
彼は強く信じるようになっていく。

したがって人も、動物も、花も、パンパンに膨らむ。
全ての作品が、どんどんボテロ色に染まっていくのだ。

タイトル忘れてしまったが、今回来ている作品の中で、静物シリーズの「オレンジ」と「花瓶の花 3点3色」に私は感銘を受けた。

膨らむ対象は、
リスペクトするアーティストたちの
絵画作品にも及ぶ。

クラーナハも、ゴヤも、
ベラスケスも、ホルバインも、
アングルも、ヤンファンエイクも、

元の作品は、アルノルフィーニ夫妻像(ヤン・ファン・エイク 1434年)


そしてダヴィンチも、

元の作品は、モナ・リザ(レオナルド・ダ・ヴィンチ 1503-1519年頃)


このモナ・リザにいたっては、原作と違い構図が横向きになっているが、
この構図はピエロ・デラ・フランチェスカの「ウルビーノ公夫妻の肖像」を真似ているのだそう。

横向きであることに、何か意味があるのか?
山田五郎さん曰く特に意味はないようだ。

ボテロはオマージュではなく、あくまでデフォルメする人。
構図や線、色に、社会への風刺など意味やメッセージを込めたりしない。ただただ膨らませる。
美を追求し、触覚値をひたすらデフォルメするのだ。

その美意識が理解されず、若くして認められるも、作品を否定する人たちは沢山いたようだ。
ヨーロッパでも、アメリカでも、そして母国コロンビアでも。。

だからこそ自分の信じる表現を、ここまで貫き通し続けたボテロを私は尊敬する。

彼の波瀾万丈な人生と、揺るぎない作品への情熱は、何より原画からビシビシと感じ取ることができた。

一見ファンタジーに見える作品の世界観の根底には、常にリアルと向き合い、戦ってきたボテロの心の強さと美しさがあった。

この度のボテロ展、百聞は一見に如かずといえばよいのか、是非足を運んでみてもらいたい。

ミュージアムショップも充実していて、
私は図録と「オレンジ」のプリントを買った。

現在額に入れて家に飾っているが、部屋にも合うし、ボテロの勇気と豊かさを思い起こすことができるのでとても気に入っている。

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