0713「おでん窟」
昨日は、BASSDRUMやWhateverの事務所が入っていたシェアオフィス「HOLSTER」のさよならパーティーだった。なんか時間の感覚がよくわからなくなってきてしまっているが、昨日っちゃ昨日だ。もともとは家入一真さんが「ON THE CORNER」をつくったときに併設したシェアオフィスをリノベーションした感じの場所で、家入さんの自伝とかにも出てくる。読むとわかるのだが、家入さんがだんだんぶっ壊れてどんどんいろんなお店やスペースをつくっていた時期につくられた場だ。
建物の老朽化もあり、解体することになってしまったが、5年以上の間、いろんな人が出入りして一緒に働いてきた場所だ。私も後半はだいぶいろいろお世話になった。
そんなHOLSTERなので、いろいろな人に愛され、いろいろな人がパーティーに来てくださったのだが、必然的にいろんな人とご挨拶をしてお話をさせて頂くことになる。それはとてもありがたいことなのだが、酒を飲みながら人と話し、そして酒を飲み、とやっていると、段々と脳が飽和してきて、自分が許容できる一定時間内でのコミュニケーション量を超える。その上で、酒がエラーを起こし始める。
そんなわけで、落ち着いていろんなものを処理できるようにするために、HOLSTERのギャラリーのバースペースのカウンターに入って、洗い物をすることにした。
すごいもので、バーテンダーをやっていたのなんて20年以上前のことなのに、ちゃんと身体にそういうスイッチが入る。まず、衛生的になる。どこかに触ったらとにかく手を洗う。普段まったく気にしないようなことも気にするようになる。洗ったグラスを拭きたくなる。拭くものがなかったが、そういった、普段やっていたのだけどバーテンダーをやっていたときにはやっていた(組み込まれていた)所作みたいなものがどんどん甦ってくる。
そうやって働いていると、お客さんとの距離感がうまく調整される。洗い物をして、作業をしているなりの距離になってくる。で、洗い物をしながら少しずつ酒を飲む。基本的に私は立っていると酔っ払うことがなく、どんどんアルコールが抜けていく性質なので、いろいろバランスが良くなってくる。
老後はどこかで洗い物の仕事をするのも悪くないなと思う。
かなり朝まで酒を飲んだ。朝まで飲む酒はうまいし、朝から飲む酒はうまい。朝に飲む酒というのは、なんであんなにうまいんだろう。
家族は妻の実家に帰っているので、私も妻の実家に行かなくてはならないのだが、始発もまだだったし、笹塚のマルシンスパに行って寝てととのって、京王線に乗って実家に向かった。
妻の実家に行くと、全身が弛緩してダメ人間になってしまう。全然寝てないので、日中から夜にかけて食っちゃ寝を、意識レベルがすごい低い状態で繰り返していた。こんなの太るしかない。妻の実家というのは魔窟だ。おでんが無制限に出てくる。低い意識レベルの中で、「すごいおいしいおでんを食ったような気がするんだけどあれはなんだったんだろう」みたいな感じになる。阿片窟ならぬ、「おでん窟」状態だ。
低意識レベル状態でおでん窟で1日を過ごしたら、いつのまにか日曜日になっていた。こんなことではまずいので、仕事をして日記を書いた。結婚してもう15年、妻の実家の台所にも屈託なく入れるようになった。「もしかしたら」と思って見てみたら、まだ大量のおでんが残っていた。確実にうまいことが保証されているずくずくの大根がいま目の前にある。
今日も低意識レベルのおでん窟生活が始まろうとしている。