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0416「非物書きの文章構築」

アメリカに帰ってきたが、ニューヨークの自宅に戻ることはまだできず、ロサンゼルスに寄って打ち合わせをしてやっと帰ることができる。入国の列が過去最大に長くて、ガチで2時間半かかった。半端なく長い。打ち合わせにも遅れるわ、散々だったが、とにもかくにも、アメリカに入国成功した。パスポートを守りきった。やった。あとは国内線だからパスポートを提示するというリスクなしに、運転免許証で行ける。


東京→ロサンゼルスの移動時間と、この入国のひどい並び時間とを合わせて、ずっと、溜めていた連載原稿4本くらいを並行して書き続ける。私の場合、真面目な原稿はスマホではちゃんと仕上げられないので、あくまで仕上げの前段階の作業をやっただけだが、ここまでやっておくと後は書くだけなので、ひとたび落ち着いた作業環境にたどり着ければ、あんまし時間がかからない。漫画でいうとネームまではできているような感じだ。

この日記を毎日書いているが、仕事用の真面目な原稿は、当たり前だが全くと言って良いほど制作プロセスが違うので、適当にスマホで書くこということができない。

ジャズのアドリブと、しっかり作曲されて楽譜に落とし込まれた楽曲くらいの差がある。

この日記は完全にアドリブで、作業環境にたどり着けなかったらスマホで書いてスマホから公開することも多い。とにかく結論とか何も考えずに書きなぐる。書いている間に結論がどうなるか、自分でもわからずに書いているのだ。この文章も、この部分を書いている時点で、どう収拾がつくのかよくわからない。このへんがやはり、ジャズのアドリブに近い。

それに対して、仕事の原稿というのは、まず最初に何を書くかを決める。書く内容を決めたら、内容に関係するキーワードをバーっと書き出す。文章の細かい最小単位をまとめていく。ビッグバンみたいなもので、細かい文章の粒からつくっていく。で、それが終わったら今度はそれらを組み合わせて簡単な文章の固まりにする。細かい表現はこの時点では端折って、各々の文章で書きたい最小限の情報にまとめる。文章の粒を集めて中くらいのモジュールにまとめる。

モジュールをつくったら、文章のスタートとゴールを決める。 

スタートは適当で良いが、文章のオチをどうつけるか、どう収拾をつけるかだけはこの段階で時間をとって考えておかないと後でハマる。これをやらずに次に進むと、目的地がはっきりしないので、ダラダラと構造を並び替えてはウーン、みたくなる。文章のスタートは、PR文の見出しみたいなもので、後で推敲しても良いが、決めておくと楽な気もする。

それが終わったら、モジュールを並び替えて、どういう順番で表現するか決める。 

これがこの日記を書く場合なんかだと絶対やらないやつで、わりとこの構造設計がいわゆる文章のUX(ユーザー・エクスペリエンス)になる。たぶんこれが、今書いているような適当に思いついたそばから書き殴っているやつと、そうではない納品可能な文章との違いをつくる。

これを先にやらないといけないのと、書きながらちょこちょこ組み替えたりもするので、仕事の原稿というのはスマホだとやりにくい。カットアンドペーストが遅くなりがちだからだ。

で、このラフな構造を決めたらやっと間を埋め始める。細かい表現を加えていって、文章を仕上げていく。ここで細かい言い回しとかを調整して読むに耐える感じでテンションをつないでいく。ミュージックビデオとかをつくるときも、最後まで見てもらうために定期的に刺激をパンプアップさせていきながら時間を埋める、みたいなことをしているような気がするが、それに近いことをやって、文章を仕上げていく。

私の現在の場合、しばらくロクな作業環境に戻れる見込みがないので、とりあえず数本分、ここまでの工程をむりやり飛行機でPCを開いてやってある。

で、最後に見直して細かく直していったり、文字数制限がある場合は、文章を絞るようなことをやる。

こうやって整理してみると、漫画のつくり方に結構似てるなあ、と思う。プロットをつくって、ネームという構成をつくって、そこで構造化して、最後に隙間を埋める。

とか書いてるとなんかいっぱしの物書きっぽい感じがするが、これはあくまでプロの物書きではない私が、本業に派生して必要に迫られて無理矢理編み出している方法で、物書きではないのに突然寄稿を依頼されたりして困る人のお役に立てれば良いなと思って書いたような気がする。別に大したことを書いていなくてたぶん普通のことを書いているが、私の場合は、物書きではないなりにこういうことをしている。

実はニューヨークに帰ったら間を置かずにアメリカが休日になって、我が家も出かけるので、なんとしても原稿とかたまっているものを全部終えて休みに入りたい。2週間の出張ツアーが終わらんとしているが、まだ家には帰れない。がんばろう。