1217「ビンロウは絵文字になれない」
昨日は福岡のサウナに関する専門的な見解を書いたのだが、noteではサウナ記事は全く受けないことがわかった。日本がサウナブームと言われる昨今だが、サウナクラスタとnoteのクラスタは、かぶっていないらしい。なんでそんなことをいうのかというと、「スキ数」だ。
それなりにいい感じのことを書いた12月14日の「あまり承認欲求をいじめてくれるな」は、現時点で100以上の「スキ数」を取得した。次の日は、「十二国記」というラノベの新刊のニュースに盛り上がっていただけなので12スキというのも納得が行くが、全編に渡って福岡のサウナ「ウェルビー福岡」について書いた昨日の日記に至っては現時点で「2スキ」である。初期の、隠れて書いていて後で公開した日記ですら「2」はないのに、たったの2だ。
思ったことを書きなぐっているだけなので、「スキ数」が増えても「いやあ、変なもの読ませちゃってすみません」くらいに思っているが、さすがに「2」はどうなのか。どんだけみんなサウナに興味が無いのか。
そして実際、note全体を「サウナ」で検索してみると、数日前に「サウナしきじに行った」という記事が上がっていた。サウナしきじといえば、サウナーの聖地であり、私自身も既にその洗礼を受けている。とにかく水風呂がやばい。水風呂が富士の天然水なのだ。水質が良すぎる。水と一体化できる特別な場所だ。
そんなサウナしきじへの行き方から楽しみ方までしっかり書いた素晴らしい記事であるにもかかわらず、現時点で「4」だ。天下のしきじをして、4である。
というわけで、noteとサウナは合わないことがわかった。このままだとまずいので、深津さんはデザイナーの投稿を増やすためにがんばったりするより、「サウナイキタイ」と連携してnoteから「サ活」を送れるようにすべきだと思う。それでサウナクラスタはnoteを使うようになる。
こんなサウナのことばかり書いているとまたどうせ「2スキ」とか「3スキ」で終わるので、このくらいにしなければならない。
今日は上海でひたすら仕事と打ち合わせをして、ふんわり1日が過ぎた。昨日から勃発しているニューヨークの家での大変な状況が気にかかりながら、どうにかがんばる。これについてはいつか書くこともあるとは思うが、いまいま大変すぎて書く気にならない。
私が上海で主に食うものといえば、麻辣燙(マーラータン)だ。麻辣燙は、その名の通り麻辣、つまり辛くてしびれる、唐辛子と山椒を混ぜたスープに、野菜やランチョンミートなどを突っ込んで煮たものだ。お店に並べられた素材を桶に入れてお店の人に渡すと、それを調理して麻辣燙にしてくれる。麻辣火鍋の風味を気軽に味わえるおいしい食い物だ。もちろん辛い。
ニューヨークのチャイナタウンにも、麻辣燙のお店がある。以前、うちの会社のオフィスはチャイナタウンにあったのでよく行っていたし、今でも近くに来ると行く。
ところが、上海で、「今日お昼に麻辣湯食ったよ」などと言うと、びっくりされることがあった。「麻辣燙って、貧しい人たちの食べ物だよ」と。実際、麻辣燙というのは、四川から発祥した麻辣火鍋を元にしているが、麻辣火鍋のような肉をわんさか入れるようなものは高くて食べれない人たちが、「麻辣火鍋っぽい何か」ということで発明した食い物であるらしい。
私は結構そういうところがあって、今年の初頭に仕事で行ったインドのムンバイでも、1人でふらっと入った活気がありそうなレストランで食事をとったら(ブリキの食器にいろんなカレーがよそってあって、それを手で食べる)、それを聞いた友人に驚かれて病院に連れて行かれそうになった。いわゆるカーストが低い人たちが集まる衛生状態の悪い場所だったらしく、カーストというものの存在を実感した瞬間だった。
台湾には、食い物ではないが檳榔(ビンロウ)というものがあって、これは檳榔というヤシの実に石灰を挟んだもので、台湾の街中では派手なネオンのお店で、露出の多い女性が普通に売っている嗜好品だ(この檳榔女性は、檳榔西施と呼ばれていて、台北から離れて田舎になるほどセクシーになる傾向があるらしい)。アルカロイドを含む日本では違法なもので、覚醒作用があるらしい。噛むと口の中が赤くなる。
で、これを試そうとすると「それはトラック運転手とかの労働者がやるものだからやめとけ」と止められる。
台湾ではこれを恥ずかしいと思っている人はかなり多いようで、檳榔の話をするとみんな顔をしかめる。
会社の台湾オフィスのデザイナーのShinyが、去年、「TAIWAN EMOJI PROJECT」という、台湾の風物詩を絵文字化したものをつくって、台湾でめっちゃバズってテレビなどにも出たのだが、檳榔は台湾の至るところで売っているものなのに、絵文字化されていないし、「ビンロウは絵文字にしないのか」と聞いても、はぐらかされてしまう。
こういう、「これを食うのは◯◯だから」という文化は世界のいろんなところにある。日本の被差別部落出身のライターである上原善広さんが書かれた「被差別の食卓」には、日本の油かす(最近はかすうどんとかでメジャーになりつつあるが、元々は差別の対象となる食べ物だった)を始めとして、アメリカのソウルフード(ニューヨークでも、ハーレムの方に行くと、チトリングスという豚のモツの酢漬けを始めとした南部の奴隷が食べていた料理を「ソウルフード」として供している)など、様々な、差別の対象になってきた食べ物を紹介していてとても勉強になる。上原さんの本は、他にもいろいろ興味深い題材を扱ったものがある。
そういう食べ物って、味を良くする工夫、効率的に栄養を摂る工夫がたくさん入っていて、中毒性が高くて病みつきになるものも多い。
というわけで、昨日も今日も麻辣燙を食った。ニューヨークに帰ってもマーラータンを食うだろう。
最後に重要なミーティングを行って、ニューヨークに帰る。どうせまた15時間、エコノミークラスだ。