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0805「第2のクリエイター人生」
ひどく暑い。どうにもならない。朝、電話会議をしていて、AirPodsの電源が尽きたので、電話を耳に当てる形、というか普通の電話の形で会議に参加したが、電話が汗でびしょびしょになってしまって、タッチパネルがバグりまくって途中から会議にならなくなってしまったほどに暑い。
今日は都合で、裁縫仕事というか、通電糸を使って基盤を布に縫い付ける作業を自分でやらなくてはいけなかった。コンビニでソーイングお直しセットを買ってきた。こういうこともしなくてはならないのがこの仕事の面白いところではあるが、この、裁縫という作業は正直最悪だ。
私は自慢ではないが、自分が知っているすべての人類の中で一番手先が不器用である自信がある。細かい手作業というものが全くできず、まともに指を動かすことができない。デジタルっぽい仕事をしているので、たまーに半田付けとかの作業をやらざるを得なくなるが、ちょっと笑ってしまうレベルで下手だ。毎回、吐きそうになりながらやっている。
元来、何かをつくりたい人ではあったのだろうが、致命的に手先が不器用であったから、一度はそういう道を閉ざされてしまったと言っていい。絵描きとか漫画家とか、何かクラフトっぽい仕事に憧れたことはあるが、そこに進むにはフィジカルな才能が無いに等しかった。ゆえに、「コンピュータで何かをつくれる」というパラダイムシフトに救われた人で、コンピュータが登場しなかったら、私はたぶん、別の向いていない仕事をやっていたのだろう。
そこで裁縫だ。これは最悪だ。とりあえず、針が指に刺さる。痛い。で、縫ったそばからどんどんほどける。そして、糸同士がこんがらがる。針が刺さる。なんで糸がほどけるのかというと、あの「ダマダマ」をつくれないからだ。妻に聞いたら「玉結び」というらしい。妻に泣きを入れたら、YouTubeのビデオを送ってくれた。
アホか。ふざけるな。完全に手順通りにやってみても、全くこの通りにならない。本気で20回くらいやってみたが、一度もうまく行かない。というか、なぜ3回糸を巻き付けて引くとダマダマになるのか。物理的に無理な話で、こんなことしても糸がすっぽ抜けてほどけるに決まっているし、実際何度やってもほどける。自慢か。この動画の人は自慢しているとしか思えない。「玉止めのやり方」とか言っておいてその実、「俺は玉止めできるぜ。お前はできないけどな」と言われているようにしか思えない。こんなものは不可能だし、UIとしては、モバイルSuicaのUIレベルでひどい。
スネ毛なんかだと、一生懸命丸めているとダマダマになる。スネ毛みたいに直感的だったらよかったのに。
暑い。糸は思い通りに縫われてくれないし、居候オフィスだから設定温度を19度とかにすることもできない。どこかに行きたい。ここではないどこかに行きたい。気持ち悪くなってくる。本当に気持ち悪くなって、トイレに行って嘔吐した。指は痛い。いまは、お世話になっている会社のオフィスに一時的に居候させて頂いている。しかしその状況にあっても、思い切り放送禁止用語を叫びたくなるほどストレスレベルが上がる。
「●●●!」「●●●!」「●●●!」「●●●!」
心の中で放送禁止用語を叫ぶ。老眼で糸がまともに見えない。ハズキルーペが欲しい。泣けてきた。ダマダマができない。
今まで仕事の中で、いろんな不可能を可能にしてきた。あっと驚くデジタルの仕掛けをたくさんつくってきた気がする。しかし、どんなすごいテクノロジーよりも、ギミックよりも、複雑なプログラムよりも、玉結びは無理だ。ごめんなさい。これは無理でした。無理です。クリエイターとしての敗北だ。
デッドラインを少し移動させて頂き、わりと普段から刺繍をやっている妻に、週末作業をお願いすることにした。
敗北してしまった。明日から第2のクリエイター人生が始まるのだと思う。