2022年は源平合戦!「鎌倉殿の13人」とアニメ「平家物語」
無類の歴史好きです。
「歴史を好きになるには、1つの国を徹底的に好きになって追いかけること」といいますが、それは今の時代、本からでもTVからでも、漫画からでも、ゲームからでもいいと思います。
私の場合は、塩野七生の「ローマ人の物語」を読破したことで、歴史を見る背骨みたいなものができました。
そのうえで、漫画「蒼天航路」を通読し、三国志が、ローマ史のカエサルの時代と同年代だと知ったことで、背筋がゾッとして、中国とローマ帝国の横軸で古代史ー中世史を眺める視点ができました。
その横軸の観点からNHK大河ドラマなどを観ると、世界史の共通性が少しづつ見えるようになってきました。
正直、これがわかるようになると、中学ー高校の歴史の時間をもっとちゃんと勉強しておけばよかったと悔やみます。でも裏を返せば、学校では、このワクワク感とか、歴史を読み解く背骨みたいな芯をつくってもらえなかったから、興味がもてなくて、単なる受験勉強用の丸暗記で終わってしまったというのも事実です。大半の日本人も同じだとおもいます。
その意味で、一昨年から、自分なりにワクワクしながらじっくり日本史を深く理解しようと始めたのが、「通史で読み解く司馬史観」という試みです。
ここでは司馬遼太郎作品を歴史の順に読み継いで、日本史の中世から近現代までの意味を考えようとしています。
戦国時代の斎藤道三から始まって、順調に大坂の陣まで来たところで、この活動をいったん休止することにしました。
なぜなら、2022年はしっかり「源平合戦」を学ぶ大チャンスだからです。
そして、残念ながら司馬遼太郎先生は、源平時代の著作を残しませんでした。
NHK大河ドラマの「鎌倉殿の13人」、面白いですね。
笑いと残虐、無慈悲と哀れみが1シーンごとに濃縮されてます。さすが三谷大河の総決算です。
加えて、アニメで始まった「平家物語」が素晴らしいのです。
没落していく平家を女琵琶法師の視点で語り継いでいく構成が素晴らしく。
平家の中で、平重盛というはじめて感情移入できる人物をみつけました。
TVアニメ「平家物語」公式サイト (asmik-ace.co.jp)
この2作品を並行で鑑賞することで、正直、日本史の中でもわかりにくい、武家政権の誕生、幕府による国家運営を、しっかり理解するチャンスが来ているのだと思います。
源氏中心の鎌倉殿と、平家没落を描く平家物語の2作の立ち位置の差から、源氏側の主張と平家の主張のズレも見えてきますし、歴史の変節点もよくわかります。
特に、平和な江戸時代に精神性の武士道、技術としての武道などが整備される前の「武家」について、有益な知識がふんだんに盛り込まれている点も見逃せません。例えば、刀を使うシーンでは、大見得を切ったり、一撃必殺みたいなスマートな佇まいなど皆無。野蛮なゴリ押し中心の肉弾戦、足を使って首をはねるなど残虐非道な合戦シーンが繰り広げられます。これは最新の調査研究の成果だそうで、当時の花形は刀より弓で、弓取りが一番のヒーローでした。
2作品が同時並行的に進んだ5話までで見えてきたのは、「幾内の天皇家と平家の闘争に、関東で旗を揚げた源頼朝の動きは、さして影響していない」という事実です。
遷都した神戸(福原)で日本を動かす平清盛と、京都の後白河法皇らの朝廷の勢力争いからすれば、頼朝だけでなく、甲斐の武田源氏も、新田義貞など各地の源氏の反乱はしばらく「どうでもいい地方のいざこざ」だったのです。
ここで見えるのは、日本を掌握していたようにみえる大和朝廷の「日本」という概念、つまり直轄エリアの狭さです。たぶん、朝鮮半島のほうが、関東や北陸、東北よりも近く感じていたのでしょう。平家側のセリフに「関東など地侍に任せておけ」的な発言が多いのはそのためです。
歴史を後代から答え合わせのように見ていくと、歴史の勝者が順当勝ちしたように思えるのですが、実際には、そんなことはなくて、勝敗はどちらにも可能性がある、ギリギリの争いの連続なのです。
特に後に勝者による歴史の改竄が行われるので、後代の我々には、敗者が一方的に不正義で、ひたすら弱かったかのような印象がありますが、これも正しい見方ではないと思います。そうした印象操作から歴史の正しい姿を発掘するのも歴史学の醍醐味です。
だからこそ、源平合戦の初期で重要だったのは、各地の源氏が拠り所にした「以仁王の令旨」の正当性です。
この文章が、中央政府の闘争と地方の反乱を結びつける根拠だったのです・・・。
・・・待て待て、これ以上ハマると、歴史オタクの戯言になりそう。
なので、ここで深い話は止めますが、朝廷側の平家の専横に対する制裁を発した「令旨」があることで、各地の源氏が朝廷側からの依頼として反乱を起こした、という朝廷と後に幕府になる頼朝側の依頼関係がそこにあるのです。
朝廷と武家、天皇と将軍の関係はとても興味深く、江戸幕府以降の静止した歴史観では正しく把握できません。
そのことに気づかせてくれたのが、「通史で読み解く司馬史観」の豊臣家の存在でした。
「公家と武家」考 豊臣家の人々
通史で読み解く司馬史観6 「公家と武家」考 豊臣家の人々|太田泉 / 太泉|note
豊臣家による「関白による武家政権」誕生の秘密。
秀吉は、武家の棟梁である征夷大将軍にならずに、公家の関白になった。
そして、藤原、源と並ぶ、公家の一門として、豊臣家を建てることになる。
これが百姓出身の秀吉の天下取りであり、秀吉がなしたのは「公家による天下支配」だったのだ。
この徳川幕府につながる豊臣政権の政体が「公家による支配」だったと理解したときの驚きは、近年にないワクワクでした。
たぶん、今年1年をかけて、源平の盛衰記を鑑賞しながら、「公家と武家」について研究を続けると、日本人の政治意識の根底みたいなものに肉薄できる気がしています。そんなワクワク感をもって、大河とアニメを楽しんでいきます。アニメは3月までで平家滅亡を描いて終わり、大河は源氏鎌倉幕府誕生から、承久の乱まで一年で描くので、この幸福な並走期間は長くありません。
みなさんも、できればこの2作品を並行で鑑賞されることをお勧めします。