「滑り台の世界」の日 12月-Vol.3
青豆さんからの伝言があります。暗くなってから滑り台の上に来ていただけますか?
タマルの言う「滑り台」について、天吾にはそこがどこかすぐにわかった。
おれはそこから二つの月を見上げていた。もちろんあの滑り台のことだ
滑り台の上で青豆と今夜会う。 青豆は知っているのだ
そう、最強のパシヴァになった青豆にはわかっている。「滑り台の世界」が、青豆と天吾の「教室の世界」の出口であることを。
天吾は、タマルのメッセージを聞いて理解する。青豆がすべきことを知っていることを。
青豆は、「滑り台の世界」で、すべきことを知っている。
この物語は、「教室の世界」で青豆が天吾の手を握った二十年前に始まった。
だから「滑り台の世界」で青豆が天吾の手を握る。
それがすべきことのすべてだ。
この物語は、その瞬間までの長い、長い「約束の物語」なのだ。
小説「1Q84」の第27章のラストは美しい。
滑り台の上で目を閉じて、耳を澄ませ、「チューニング」する天吾。
そして、創造主は純粋なレシヴァになる。
天吾に近づき、ポケットの手を握る青豆。
握り返す手、握り合う手。
「世界の終わり」の静止した時間が訪れ、
最高のパシヴァと最高のレシヴァとが感応する。
ふたりの各々の孤独な二十年の歳月が、静止した時間の中で融解する。
これが「滑り台の世界」だ。
「何かを約束する声」が囁く。
天吾くん 目を開けて 月が見える
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