マクガフの1年を振り返る【後編】
ダイヤモンドバックスの魅力
マクガフのおかげでMLBとダイヤモンドバックスの魅力を知ることになるのですが、マクガフの6月以降を振り返る前に、この1年で感じたダイヤモンドバックスの魅力を書いておきたいと思います。
①若手の躍動
新人王キャロルを筆頭に伸び盛りの若手がチームを活性化させているのは楽しいですね。しばらくは、その若手たちが長くチームを支えてくれそうです。出入りの激しいMLBで、シーズンが変わっても同じメンバーを応援できるのは嬉しいことですし、そういうタイミングのチームに巡り合えたのは幸運です。
②超有能なGM
マイク・ヘーゼンGMが有能すぎます。少なくともこの1年は打つ手が当たりに当たる。2023シーズン前の補強(マクガフもその一人)、2023シーズン中の補強、2023シーズン後の補強。的確で迅速。そもそもビッグクラブではないので超一線級に大金をつぎ込むことはできないのですが、それを補って余りある賢い補強に魅了されます。安心と信頼のヘーゼンGMなのです。
③日本的スモールベースボール
現在のチーム編成的にそういうスタイルが合っているということなのかもしれないけれど、鉄壁の守備とアグレッシブな走塁が売りのチームです。今年は先発も補強し、長打力も強化。スモールベースボールに強さも加えてドジャースを倒してほしいものです。
④ファンがのんびりしている(ような気がする)
この快進撃にも関わらず、なかなか満員にならない本拠地フェニックスのチェイスフィールド。弱い時も強い時も、のんびり応援している感じが、それはそれで親近感がわきます。日本はともかくMLBにおいても地味チーム。応援のしがいがあります。
1年を振り返る【後編】
6月
試合:11 回:12.1 勝:0 負:2 S:5
防御率:2.19 HR:0 三:15 WHIP:0.97
マクガフ個人としては調子と成績のピークが6月だったでしょう。1年を通してのベスト防御率が6/25段階の2.41でした。5/14~6/25まで17試合連続で自責点0となります。チームとしてクローザーを固定せず、チェフィンやカストロなど調子の良いピッチャーでやりくりしていましたが、6月後半はマクガフが立派なクローザーに。スワローズ時代と同様にゲームを締める雄姿が見られます。
6/14のチェイスフィールドでのフィリーズ戦は9回から延長回またぎで敗戦。なかなか延長での勝ち星に恵まれないのがもどかしい。6/21のミルウォーキーでのブルワーズ戦は7回1失点のエース、ゲーレンの後を受け2回4三振無失点でセーブ。エースとクローザーのリレーはいついかなるときも美しいですね。6/28のチェイスフィールドでのレイズ戦は2-0の勝ちゲームだったのが9回に3点をとられて敗戦。18試合ぶりの自責点となります。暗雲漂う6月最終登板となり7月に突入します。
7月
試合:11 回:10.1 勝:1 負:0 S:3
防御率:9.58 HR:3 三:15 WHIP:1.84
7/1のアナハイムでのエンゼルス戦で、あの大谷翔平VSマクガフが実現。大谷をファーストライナーに打ち取り、7セーブ目となります。ちなみに前日6/30のエンゼルス戦は無料のインターネット中継をしていて、たまたまLIVEで中継を見られたのです。6-2の勝ちゲームの9回、もしやもしやと待ち望んだ中、登板する背番号37、そうです、ギンケルでした。まあこの日に登板していたら3連投だったし、セーブシチュエーションではなかったので・・・。妥当な器用ではありましたね。
そして7/8のパイレーツ戦。チェイスフィールドにて待望の瞬間が訪れます。恒例となった9回からの延長回またぎ。10回表に1点を勝ち越され、またか、のムードが漂う中、10回裏にトーマスの同点内野安打、キャロルのサヨナラタイムリーと続き、ついにマクガフにMLB初勝利が転がり込みます。これで1勝6敗。やっと勝てました。
しかしここから苦難の時期が訪れます。この時点で40試合46.1回を投げてきたマクガフ。疲労もあったでしょう。7月は苦しいピッチングが続きます。相変わらず奪三振率は高いものの集中打を浴びることも多く、特に7/15~7/26の5試合で自責点11となります。その後、7/29と7/31には持ち直してセーブをあげますが、マクガフの今シーズンのクローザーとしての役割はここまで。なぜならヘーゼンGMのトレードが敢行されたから。
ダイヤモンドバックスは6月に何度か貯金16を記録しながらも、一時期の絶好調は影を潜め一進一退を繰り返します。7/1の貯金16を最後に、オールスター前後から、苦しい戦いを強いられ貯金を減らします。特に前半がんばってきたブルペンはマクガフ同様に調子も下降線。そこでヘーゼンGMの強力な一手。マリナーズのクローザーであったシーウォルドを7/31にトレードで獲得するのです。これがダイヤモンドバックスにとっては大きかった。マクガフもこれでクローザー降板。ブルペンの一角としてチームを支えることとなります。
8月
試合:10 回:11.2 勝:1 負:1 S:0
防御率:5.40 HR:3 三:13 WHIP:1.63
チームはオールスター前から完全に失速。マクガフも良かったり悪かったりを繰り返します。そんな中、8月のハイライトは8/19のサンディエゴでのパドレス戦。この日は急遽、ダブルヘッダーとなるのですが、その2戦目になんとマクガフがMLB初先発。おまけにパドレスの先発投手はダルビッシュ有。奇跡のマッチアップとなります。ダブルヘッダーによる緊急ブルペンデーという報道が多かったのですが、この試合は予告先発がずっと発表されず、マクガフも前回登板から中4日空いており、実はマクガフの先発はチーム内では事前に予定されていたのではないかとにらんでいるのですが、真相はわかりません。2.1回を無失点で切り抜け、見事に役割を果たし勝利に貢献します。
8/27のチェイスフィールドでのレッズ戦。7回途中から登板し8回をおさえ、同点の8回裏に打線が3点を勝ち越し2勝目が転がり込みます。一時期の無双状態からは程遠いものの、ブルペンに欠かせないメンバーとして8月を乗り切ります。
チームはというと8/1から何と9連敗。貯金を使い果たし借金2へと転落。正直、終わったと思いました。が、ここからまだまだ終わっていなかったのです。地獄の9連敗を抜け出した後、なんとそこから持ち直し、マクガフ2勝目の8/27に貯金を7まで回復。地区優勝は遠ざかるものの熾烈なワイルドカード争いの渦中で再浮上を果たします。意気揚々と乗り込んだ月末のドジャースタジアム3連戦。完全に波に乗っていたドジャースにスイープをくらい8月を終えます。ダイヤモンドバックスとマクガフの結末やいかに。波乱の9月を迎えます。
9月
試合:5 回:6.1 勝:0 負:0 S:0
防御率:7.11 HR:3 三:8 WHIP:1.89
その報道は9/17に突然飛び込んできました。マクガフ、右肩の炎症により15日間の故障者リスト入り。熱いワイルドカード争いの真っただ中。離脱。きっと無念だったでしょう。この時点では大きなケガではなさそうでしたので、プレーオフにマクガフが帰ってくる可能性は考えられました。が、結果的にマクガフのシーズンはここで終了。どんな想いでプレーオフ、そしてワールドシリーズを見ていたのでしょうか。
右肩の影響か終盤は失点を重ね、少し持ち直した防御率も9/14の最終登板時が今シーズンのワーストに近い4.73という結果で終わりました。
【シーズン成績】
試合:63 回:70.1 勝:2 負:7 S:9 H:14
防御率:4.73 HR:14 三:86 WHIP:1.28
立派な数字です。アメリカに帰って良かったと言える数字ではないでしょうか。
さて。ダイヤモンドバックス。この9月で大きかったのは、プレーオフ争いのライバルであったカブスとジャイアンツに8勝1敗という勝負強さを見せ、この2チームを蹴落としたことだったのではないでしょうか。中でも9/16のチェイスフィールドでのカブス戦。延長13回サヨナラの死闘は個人的にはレギュラーシーズンのベストゲームです。鈴木誠也のバックホームをかいくぐった大ベテラン、ロンゴリアのヘッドスライディングは震えました。
プレーオフ進出を決めたのはレギュラーシーズン終了の2日前。9/30のチェイスフィールドでのアストロズ戦の最中でした。ワイルドカードを争っていたレッズの敗戦によりプレーオフ進出決定。レギュラーシーズン最後はなんと4連敗という中での逃げ切りとなりました。
そしてここからポストシーズンでの快進撃。レギュラーシーズン勝率上位のチームをなぎ倒します。あのドジャースに3連勝、熱狂的なファンが待つフィラデルフィアでフィリーズを退け、たどり着いたワールドシリーズ。マクガフはというと結局、ポストシーズンの登板は叶わなかったものの、ロースターからは外れずチームに帯同。各セレモニーでのマクガフのユニホーム姿は確認できました。きっと投げたかっただろうに。でもワールドシリーズの場にいられたのは本当に良かった。
シーズンオフの動向
では最後にシーズンオフの動向を少し。
MLBネットワークの単独インタビューに出演。日本への感謝と大谷翔平や山本由伸について語る。
マクガフとアメリカ自主トレを敢行したヤクルトスワローズ木澤尚文投手が「マクガフは元気でしたよ」とコメント。
今年もダイヤモンドバックスのスプリングキャンプに招待された古田敦也さんが「今年も活躍してくれそう」とコメント。
3/4時点、オープン戦で2試合に登板。
つまり。マクガフは元気そう。あとは34歳の年齢に抗いながらどこまでMLBにしがみつけるか。実力次第です。今年もマクガフの登板を楽しみに待ちましょう。