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MLB2年生の雑感④〜選手の入れ替えによる刹那の青春〜

MLBは選手の入れ替えが多い。昔から知っていたことだけど、ようやく「なぜ」そうなるのかということが「実感」としてわかるようになった。今回はそのシステムをまとめておきたいのと、NPBとMLBの各システムそれぞれの良さについて、ファン目線で書き記したい。

選手の入れ替えや契約に関する主なシステム

NPBの場合

①契約保留制度
契約期間が満了した場合、翌年も現所属チームと契約を結ぶことが前提となる。所属チームを選手の意志で変えることはできない。

②FA権
145日を1年として、高卒選手は一軍登録8年、大卒or社卒選手は一軍登録7年で国内FA権を取得。全選手とも一軍登録9年で海外FA権取得。権利を行使するかどうかは選手の判断に委ねられる。

③人的補償
FA移籍選手の旧所属球団での年俸が上位10名以内だった場合に、旧所属球団は移籍先球団のプロテクト外選手を1名獲得できる。

③トレード
球団間の選手の移籍。以前よりは盛んになっているが多くはない。1つのチームで年に1、2件あるかどうか。

④ポスティング
海外FA権のない選手がMLB移籍を目指す場合に利用。所属球団の許可が必要。以前よりはずっと増えている。

⑤現役ドラフト
出場機会の少ない中堅選手を中心に移籍を活性化させる目的で実施される。現在は1チーム1名の移籍が主流。

⑥戦力外→他球団と契約
基本的に戦力外はシーズン終了時に通告され、他球団との契約もシーズンオフとなる。

NPBの場合は自由契約や引退にならない以上は、所属球団との契約がずっと続いていくことが前提となる。数少ないシーズン中のトレード以外での選手の移籍は、ほぼシーズンオフに行われるので、基本的にはシーズン開始時点のチームの姿は大きく変えないまま、そのメンバーで1年を戦っていくことになる。

生涯1チームというフランチャイズ選手が多くなり、ファンとしてはチームに感情移入できる1つの要素になっているのは間違いない。1人の選手を自分の好きなチームでルーキーから引退まで追いかけられる。1人の選手の人生を好きなチームの中で追いかけて行けるのは、長年1つのチームを好きでいることの醍醐味だ。NPBがこういう仕組みでなければ、石川雅規投手もとっくにスワローズにいないだろうし、山田哲人選手だってそろそろ立場が危うくなっていてもおかしくない。

MLBの場合

①FA権
アクティブロースター26人枠に登録6年で取得。取得した時点で自動的にFAとなる。以降、契約期間が終了するたびに自動的にFAとなる。ロースター40人枠に登録されていない期間が6年に達した選手もFAとなる。

②DFA
マイナー降格拒否権を持つ選手、マイナーオプションが切れた選手をロースター40人枠から外す場合はDFAとする。DFAとなった場合、他チームに獲得される、現所属チームとマイナー契約を結び直す、FAとなる、といった措置になる。チームに必要とされなくなった中堅以上の選手はシーズン中でもDFAとなり、現所属チームを去ることが頻繁に起こる。

③トレード
NPBよりもずっと頻繁に行われる。主力選手のFA取得が近かったり、契約に見合わない状態になったりすると、FA取得や契約満了を待たずにトレードで放出し、プロスペクト選手を獲得する。また、7/31のトレード期限に合わせて、トレードでチームを再編する。上位を狙うチームはプロスペクトを放出し、チームに今必要な戦力を獲ってくる。ワイルドカードさえ難しいチームは主力選手を放出し、今ではない未来のためにプロスペクトを獲得する。

MLBで選手の入れ替えが多い理由①FA状態の選手が大量に発生すること。FA権取得までの年数がNPBより短く自動的にFAとなる、シーズン中もDFAを経てFA状態になる選手が多い。ゆえに、いろいろなレベルの契約待ち選手が常に大量に市場に発生する。また、マイナーオプションなど、飼い殺しを防ぎ、出場機会を広げるため、1チームに縛られずに市場に出られる細かいシステムが整えられているので、プロスペクト期間を経てMLBに定着できない選手が大量にFA状態になる。

選手の入れ替えが多い理由②チームが生まれ変わることが常であること。 シーズン中含め、今勝つために、または将来のために、チーム編成は常に変わるものであるというのがMLBの常識だ。ロースター40人枠は常に更新され、FAやトレードを駆使してチームを変化させていくことになる。シーズン開始時と終了時でメンバーが随分と変わることもあるし、1シーズンでいくつものチームを渡り歩く選手も発生する。

MLBのダイナミックなチーム編成に感じること

食わず嫌いだった

ずいぶん長い間、MLBにそっぽを向いてきた理由が、この選手の入れ替えの多さだった。1人の選手を好きなチームの中で長く愛せる醍醐味を絶対だと感じていた筆者はMLBを向くことができなかった。毎年のようにメンバーが変わってしまうのでは、1つのチームを長く愛せないじゃないかと。どうせビジネスライクに事が運んで、1つのチームをエモーショナルには見られないんじゃないかと。そんなのつまらんと。

MLBは刹那の青春だ!

ところが実際に1つのチームを追いかけ始めて、MLBに抱く印象は変わっていった。むしろとてつもなくエモーショナルだった。これは某キャスターの受け売りという自覚があって書くのだけれど、昨年、MLB1年生を終えかけたタイミングで、そのキャスターのその記事を目にして、まさに抱えていた気持ちを言語化してもらったと感じたもので、ニュアンスをそのまま使わせていただく。(現在、有料記事になっているので引用できません…。)

MLBは選手の入れ替えが激しいゆえに、今このメンバーで、今このチームで戦うことはもう二度とない。よってMLBのチームは刹那の青春なのだ。たぶん学生野球に近い感覚。常にチームはダイナミックに変化し生まれ変わる。もう二度と同じメンバーで戦えないからこそ、このチームで全力で勝ちを目指し熱く戦うのだ。ロンゴ先輩と一緒にワールドシリーズに行った2023年のダイヤモンドバックスはもう存在しないし、ウォーカーとジョクが打線の中心に鎮座してMLB最強打線を誇った2024年のダイヤモンドバックスももう存在しない。

選手の移籍も決してビジネスライクというだけではない

選手の移籍やトレードは、基本的にはチームの利や、チームと選手双方に都合の良い契約条件が優先されるのだろうけれど、決してビジネスライクというだけではなさそうだ。

ウォーカーのFA移籍。長年4番ファーストとしてチームを支えたクリスチャン・ウォーカーが、このシーズンオフにアストロズへFA移籍となった。MLB2年生としては、初めてのチームの大功労者の流出である。思ったよりずっとずっと惜別ムード満載だった。FA移籍はしょうがないと、どこかで覚悟しながらも、実際にそうなればちゃんと悲しいのだ。残念ながら移籍です。はいおしまい。では決してなかった。

コービン・バーンズの獲得。このオフのビッグニュース。FA市場の目玉であったコービン・バーンズのまさかの獲得。MLBの大物の移籍なんて、代理人主導で1番いい契約に決まるものだと思っていたが、そうでもないこともあるのだと知った。バーンズは自宅がアリゾナにあって、家族の近くでプレーしたいという希望がありダイヤモンドバックスに接触してきたらしい。契約条件は他チームのオファーの方が良かったと報道されているけれど、アリゾナの税率の安さも後押しとなって契約に至ったということだ。ずいぶんといろいろな要素があるものだ。

ちなみに思っていたよりは選手の入れ替えも多くはなかった。勝手なイメージではチームの半分くらいが入れ替わるのかと思っていたが、実際はそこまでではない。40人のうちの10人前後くらい?チームの核となる若手が多くいると、そこまでチームの骨格が毎年変わるようなことはない。

もしスワローズがMLBのチームだったら

ここからはただの妄想。細かいことは気にせず。

20代後半以上になっても一軍と二軍を行ったり来たりしているような選手はDFAだ。たぶん宮本丈も北村拓己も太田賢吾も高梨裕稔も原樹理も星知弥も石川雅規もDFAだ。来年FAで(ということにしておいて)流出が確実な村上宗隆をトレードに出して、プロスペクト野手を4人ぐらい獲って来た方がいいだろう。契約に見合わなくなってきた山田哲人は放出して、先発ローテを担える投手を獲るべきかもしれない。余剰戦略気味の松本直樹や岩田幸宏を放出してブルペンの補強も狙おう。

うーん。こんなスワローズはいやだ。耐えられない。

NPBは今のままでいい。みんなずっとスワローズにいてほしい。MLBもそれでいい。チーム編成をドキドキしながら見守れるのは楽しいし、その刹那の青春を選手たちが全うしている姿はエモーショナルだしかっこいい。

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