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MLB2年生の雑感③〜MLBの出場枠って不便じゃない?〜

MLBではメジャー契約を結ぶ40人の枠と、実際にメジャーの公式戦に出場できる26人の枠があります。NPBは一軍の登録人数が31人、その日の試合に出場できるベンチ入り選手は26人です。

MLBもNPBも試合に出場できるのは同じ26人かと思いきや、これは全く違います。NPBは一軍登録31人からその日のベンチ入りメンバー26人を選びます。基本的にはローテーションピッチャーはベンチ入りしませんし、連投中のリリーフピッチャーもベンチ入りから外すことがよくあります。しかしMLBはローテンションピッチャーだろうと連投中のリリーフだろうと、その日の試合出場の可能性が実際は低いであろう選手もこの26人に含まれるということになります。

NPBに慣れた立場からすると、このMLBの26人の使い方が、ものすごぉく大変そうに映るのです。

以下、例を挙げながら述べてみます。相変わらず観察の対象はスワローズとダイヤモンドバックスですのでご容赦下さい。(※実際のシーズン中のどこかを切り取ったわけではありません。今回はシステムの話ということで敬称略。)

スワローズ26人の例

投手【9名】
・吉村貢司郎(右・先発) ・原樹理(右)
・木澤尚文(右) ・田口麗斗(左)
・ロドリゲス(右) ・山本大貴(左)
・大西広樹(右) ・丸山翔大(右)
・小澤怜史(右・クローザー)

捕手【2名】
・中村悠平(右) ・松本直樹(右)

内野手【6名】
・オスナ(右・1B) ・山田哲人(右・2B)
・長岡秀樹(左・SS) ・村上宗隆(左・3B)
・川端慎吾(左・PH) ・武岡龍世(左・2B/3B/SS)

外野手【6名】
・西川遥輝(左・CF) ・サンタナ(右・LF)
・丸山和郁(左・RF) ・並木秀尊(右・OF/PR)
・青木宣親(左・PH) ・岩田幸宏(左・OF/PR)

ユーティリティー【3名】
・宮本丈(左・1B/2B/OF) ・増田珠(右・1B/2B/OF)
・内山壮真(右・C/3B/OF)

ベンチ入りしていない一軍登録の選手5名は、通常であればローテーションピッチャー5名であることが多いはずです。例えば、サイスニード、ヤフーレ、高橋奎二、小川泰弘、山野太一。ただしスワローズの場合は、投げ抹消も通常運転なので、連投中のリリーフ投手がベンチ入りを外れることも多いと思います。

ダイヤモンドバックス26人の例

先発【5名】
・ギャレン(右) ・ケリー(右)
・ロドリゲス(左) ・ファート(右)
・ネルソン(右)

リリーフ【8名】
・ギンケル(右) ・マンティプリー(左)
・モンゴメリー(左) ・シーウォルド(右)
・AJパック(左) ・マクガフ(右)
・トンプソン(右) ・マルティネス(右・クローザー)

捕手【2名】
・モレノ(右) ・ヘレラ(両)

内野手【6名】
・ウォーカー(右・1B) ・マルテ(両・2B)
・ペルドモ(両・SS) ・スアレス(右・3B)
・ニューマン(右・1B/2B/3B/SS)
・ベル(両・1B)

外野手【3名】
・キャロル(左・RF) ・マッカーシー(左・CF)
・グリエルJr(右・LF)

DH【2名】
・ピダーソン(左・OF) ・グリチック(右・OF)

控え野手の数が全く違う

スワローズは野手17名、DHがないので、控え野手が9名います。ダイヤモンドバックスは野手13名、DHもあるので、控え野手はたった4名です。NPBは延長は12回までですが、MLBは延長無制限です。タイブレークが導入されたとはいえ、先を見通しにくいことに変わりはないでしょう。

内山壮真をユーティリティー扱いしましたが、もちろんキャッチャーなので、NPBは基本的にはキャッチャー3枚。NPBでキャッチャーを使い切ることは稀です。ダイヤモンドバックスはレギュラーキャッチャーのモレノを休ませようものなら、試合の途中でモレノが代打で出ていって、控えのキャッチャーがいなくなる状態なんて普通です。

NPBでは、多少の代打、代走、守備固めを出したところで、まだ控え野手には余裕があります。ベンチ入りメンバー全員を駆使して、先発メンバーだけではなく控え野手も含めて勝ちにいくというのはNPBの魅力だし、チームスポーツの醍醐味も感じられます。スワローズで言えば、川端慎吾、並木秀尊、武岡龍世、宮本丈、といった控えメンバーの存在価値がとても大きいです。

一方、MLBでは守備固めや代走なんて、そうそう出せません。代打を2人でも出そうものなら、アクシデントがあった時点で大ピンチです。今年のダイヤモンドバックスはDHを左右のプラトーン起用で徹底していたので(まあまあ上手くいっていたけど)、相手ピッチャーの左右が変わると、スタメンDHを試合途中で簡単に変えていました。また、野手の休養日も積極的に使います。試合途中でチャンスが回ってくれば、当然休養日でスタメンを外れたレギュラー野手が代打で出ます。危なっかしいったらありゃしない。

そんなMLBの控え野手の少なさと、積極的な?選手起用が裏目に出たのが4/3のダイヤモンドバックスの試合でした。野手を使い切り、まさかのバッター、マクガフ!詳細はここで書きました。

まあこれはロブロ監督の失態でしょうけれど、他のチームはどうなんでしょうか?野手を使い切るピンチってどれくらい発生するものなのでしょうか。

まあスリルはあるし、少ないメンバーで必死に戦っている姿も、それはそれで魅力的だなとは思っていますが、NPBとMLBでの野手起用はずいぶんと違うものです。でも、どちらかと言えば、もう少し控え野手を増やせばいいのにと思うことの方が多いです。若手のチャンスも増えるし。たぶんMLB2年生の知らない何かしらの伝統や理由があるのでしょう。

MLBは簡単にマイナーに落とせない

出場枠ともう一つ、MLBで不便だなと感じることがあります。それなりにキャリアを積んだ選手をマイナーに落とせないことです。

キャリアの浅い選手にはマイナーオプションがあり、26人の枠を外してマイナーに落とせます。しかしキャリアを積んだ主力選手は契約やルール上、マイナーに落とせません。マイナーに落とすにはDFA(いわゆる事実上の戦力外というやつ)にしなければならないことがほとんどです。

NPBでは一軍の主力選手も、キャリアを積んだベテラン選手も、二軍に落とすこと自体に制限はありません。スワローズでは青木宣親も川端慎吾も石川雅規も小川泰弘も、再調整という名目で二軍に落ちますし、それこそ先発投手の投げ抹消は日常茶飯事です。

ダイヤモンドバックスで今年感じたのは、FAで獲って来た先発左腕のモンゴメリーの調子が上がらず、NPBみたいにマイナーで調整できたらどんなに都合がいいかということ。どんなにボコボコに打たれてもローテーションで投げさせないといけない、あるいは何とかロングリリーフの役割に収まってもらったこともありました。

マイナー組織が広大であることや、選手登録のルール、契約システムがそもそも日本とは違うのでしょうけれど、マイナーに落とせないのは不便だなあと思います。

今回は出場選手枠についてMLBとNPBの違いを書いてみましたが、同じプロベースボールチームと言っても、ずいぶんとチームマネジメントのやり方が違うのだなと思うMLB2年生なのでした。

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