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AIによってプロ野球はつまらなくなるがプログラミングは楽しくなる

松井がイチローに「今の大リーグは見ててストレスじゃないですか?」と尋ねた。「打線とかも意味なくなってきてますよね?」と。

イチローは「みんながデータを見て試合をしていて、試合がとにかく詰まらない。選手の役割分担もあったもんじゃない。いずれ日本の野球もそうなる」と答えた。

大リーグがデータ重視の野球を評価するようになってきて、選手は自分で考えなくなった。見えるものだけ信じるけど、見えないものこそ重要である。
選手各々が自分で判断する野球こそ楽しいのに。そんな趣旨だった。

本論とは関係ないが、中田英寿はカーナビをつけないという。
あらかじめ地図をプリントアウトして、乗車する前に予習するそうだ。
理由は、カーナビをあてにすると、頭を使わなくなってしまうからだと。

さて、ITエンジニアの話にうつる。
世の中のIT化やAI活用は進んで来ているのはエンジニアたちの働きによるものだったが、彼らのコーディングにAIが介入するようになってきたのは、Co-Pilotが登場してからなので、ほんの数年前の話である。

ジェット機の機長などは、もっと昔からほぼ自動操縦であるのに比べるとエンジニアのAIサポートはごく最近なのである。

では、プログラミングの世界でも「AIのせいで詰まらなくなるのか?」といえば、答えは「NO」である。

まず、プロ野球のように、選手のワンプレーに一喜一憂する観客は開発作業においてはいない。「君のデバッグ、ナイスプレーだったよ」なんてことはない。できれば、とっとと開発を終わらせたい。だからAIアシスタントが自分のために「ナイスプレー」をしてくれたらそれで十分だ。

イチローが言及している「頭をつかわない問題」は、ショービジネスでは深刻かもしれないが、一般人の作業現場では、より正確に早く仕事を終えた方が良い。それは、エンドユーザ(観衆でなく利用者)にとってもウエルカムなのである。

確かに「頭をつかなない問題」はプログラミングにおいても当然存在する。
先輩エンジニアが「ちゃんと根拠あってそう書いているのか?(ChatGPTが作ったコードを理解もせずにコピペするなよ)」と後輩エンジニアを注意するのは今も昔もおなじである。AIアシスタントがなかった時代でもサンプルソースはごろごろしているので、昔から「頭をつかわない問題」はある。

今後、ソースコードがチャットGPTに寄ってくるということはあるだろう。
これは懸念点というより、コーディング方法が標準化されるという点で、歓迎すべきことである。

私は「頭を使わせる」学習法のせいで、プログラミング挫折率95%を作り出していることの方が、全人類の機械損失だと思っている。

日本人で誰が日本語を学ぶのに苦労しただろうか?
日本語を覚えるのにそんなに頭を使っただろうか?

「AIによって頭を使わない分、他のクリエイティブ作業に注力できる。」というメリットをどう使うかがポイントである。
従来のプログラミング学習はまったくクリエイティブではない。

「創意工夫」というやつだ。
受験業界は、さまざまな試みがいろいろな業者によってなされている。
授業も参考書も教え方もどんどん進化しているが、残念ながらエンジニア教育は旧態依然である。というか良き見本がまだないので私たちが作っている。

結論として、私は「頭をできる限り使わない」プログラミング学習を提唱しているし、そのやり方をテックジムでは伝授している。
AIを使う学習法は、まさにこの延長線上にある。

さて、「考えない問題」の他にイチローが危惧したのは「野球がつまらない問題」である。プログラミングの場合はどうだろうか?

これは、AIがあろうと、なかろうと、つまらないやり方をしていればつまらない。プログラミング教育の問題である。

私たちは創業以来「どうしたらプログラミングが面白いものになるのか」を探求してきた。まずまっさきに捨てたのは暗記偏重の学び方である。

授業も「つまらない」から不要なやり方にした。
理解しようとしても「理解できない」から、むしろ理解できなくても書けるようなやり方にした。気分を塞ぐやり方は心によくない。

プログラミングの場合、どういう時が楽しいか?
それはエラーやバグを潰した時、しかも自分の力で解決した時である。
あるいは急に「理解」が降りてきたときかもしれない。

別に100%自分の力でなくても、AIを使って解決しても嬉しいものだ。
主体者が自分である限り「自分で解決した」ことにはかわりない。
プログラミングに楽しさを見出せば、上達は時間の問題だ。

この経験をしてもらうには、どういう教え方が良いのか?

答えは、野球のコーチのように「その場でアドバイス」である。
エラーしてからでは遅い。コーディングそのものを見る必要がある。
このようにしてできたのが「テックジム方式」、無理やり言葉にすると「自習見守り型コーチング」である。これは現在のAIにはできない。

大リーグでもAIがコーチに代わることはないだろう。

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テックジム創業者:藤永端(みんなのグラさん)のIT業界裏話
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