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ニデック株主総会2024
ニデックの第51回株主総会に参加してきました。今年も永守節炸裂で、たくさん笑わせてもらいました。新幹線に乗って参加した価値がありました。岸田CEOの挨拶は、具体性には欠けるものの、彼の情熱と今後のニデックへの想いは伝わってきた気がします。今後の経営に期待したいと思います。
質疑応答もバラエティに富んだものでした(参加者もおしゃべりな人が多いですね)。若い人の質問も多く、参加者に若い人が増えているのかな、と感じました。
永守会長は終始ご機嫌な様子で、後継者問題、中国のイーアクスル事業に一区切りつけ、プレッシャーから解放されたのかな、とも感じました。「今年で満80歳になるが、体力は38歳です」と冗談を飛ばしていましたが、このバイタリティを見習わなければいけないと改めて思いました。
【投資に関する情報】
投資の参考になる話はあまりありませんでしたが、データセンター向け冷却装置に関しては、かなり強気でよいと感じました。社員の説明も聞けましたが、具体的な話として、Nvidiaの次世代GPU "Blackwell"は発熱量が大きくそれが使用されるサーバーは100%水冷になるそう。同チップが採用される2025年以降は、冷却装置の売上が大きく伸びることが予想されます。また、ユニット自体の大型化も進む見通しで、ニデックも開発を進めているとのこと。総会後の日経の記事で「データセンター関連の事業は1兆円規模になる」と相変わらず永守会長が大風呂敷を広げていましたが、2~3千億円規模だとしても、ニデックの成長の柱になることは間違いありません(売上の10%以上になります)。
また、冷却装置において、カップリングなどの配管部品の加工精度が非常に大事であるという話も聞けました。第一に、水漏れによってサーバーダメになってしまう。第二に、配管内部からのコンタミ(金属片)をなくすため、高い加工技術が求められる。写真だけ見ると、こんなのどこにでも作れるのでは?と思ってしまうのですが、高い加工精度と品質管理が求められる製品とのことです。
さらに、この部品を作れる競合は限られており、その競合も急激な需要に対し供給を拡大できていないことが伺えました(そもそも大量に作るようなビジネスではなかった)。ニデックがカップリングなどの配管部品だけを販売するケースもあるということでした。また、小部会長からは、この製品がNvidiaの認定が必要だという話もありました。このように、冷却装置は参入障壁が高いビジネスだと考えられます。供給力の問題もあり他社が参入するにも設備投資が必要であり、すぐに追いつけるという感じはしません。ニデックの先行投資、待受戦略が見事にハマった商品だと言えます。
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その他の事業についてはほとんど質問もなく、あまり有益な情報はなし。唯一イーアクスルについて質問があり、回答からするに日本メーカーへの採用は時間がかかる模様。部品単位での納入を云々という話もしていたので、イーアクスルとしての納入は厳しいのかなという印象を受けました。一方、永守会長からは「中国をコテンパンにやっつける」すごい新商品を開発中だという話もあったので、中長期的には引き続き期待をしています(永守会長の話は、案外出鱈目ではなく、後々大型のIRとして出てくる印象があります。冷却装置についても、決算説明会の中で「大型の製品開発をしていますから...」という程度には触れられており、実際、株価に相当のインパクトのある製品でした)。
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【以下、主要な質疑応答】
1.日本におけるイーアクスルの戦略は。欧州や中国のように特定のメーカーについていく戦略なのか
岸田:中国では広州汽車と日本メーカーの合弁、広汽トヨタ、広汽ホンダへの納入が24年度内に始まる。日本市場向けは、ケイレツの絡みもあり、時間軸としてはもう少しかかる。すべてのメーカーに売り込みをかけている。部品レベルでの納入の意思も表明している。
→「意思も表明している」という独特の言い回しがよくわかりませんが(この表現は決算説明会の中でもあった気がする)、提案をしているぐらいの話なのか。いずれにせよ、日系OEMからのイーアクスル受注に関する正式なIRはしばらくは見れ無さそう(なお、時間がかかると言っているのは、日系OEMの開発スケジュールが長いため。だとすると、ニデックが実際に納入するのは3~4年後ぐらいか)。とりあえずは広汽トヨタ、ホンダに関するIRを待ちたい(そういえば、ホンダが中国で新しく展開する烨(yè:イエ)シリーズは、ニデックではないのだろうか。期待していたのだが...)。
ただ、前述の通り「中国をコテンパンにやっつける」製品を開発中とのことなので、3年後ぐらいに大きな期待を寄せたいと思います。
2.冷却装置について、他社でも簡単に作れるのではないか?
岸田:他社が簡単に作れるものではない。冷却装置の中を大量の水が通過することを想像してほしい。一滴の漏水でもサーバーがダメになる。加工精度が重要。また、金属配管の内部からコンタミ(金属片)が出てもいけない。これも高度な加工技術が必要。加工技術は今後も高度化していくとみている。技術の仕込みや継続的な開発に努める。
→冒頭で述べたとおり、冷却装置については思いのほか参入障壁は高い。期待してよいと思います。コンタミの話が出てくるあたり、けっこうな流量があるんですね。またホットスワップの技術は加工精度とは別の技術なんだそう。
3.永守会長はあのCMをどう評価しているのか
永守:CMのランキングでも良い評価を得ている。今後も作る。同じタレントを使うかはわからない。
→「あの歌は私たちが若い頃に流行った歌なんですよ!」と会長が言っていたが、やはり永守会長の意向があったのか?と勘繰ったりなど(まあ電通がそういう提案をしてきたのだろうが)。あと「うちが川口春奈を採用したから他もみんな起用したんですよ」ということを言っていたが、それはさすがに事実誤認でしょう。質問者が「いいえ、はま寿司が先です」と否定していたのは笑った。
4.社員の福利厚生についてどう考えているのか。四季報では平均年収720万円とあったが、これでは人材が集まらないのではないか。
永守:平均という考えがそもそも間違ってる。成果を出す人には1000万円出す人がたくさんいる。今年は初任給を15%上げた。2〜3年で中堅以上の給与を払うこともできる。
→平均が720万円もあるの?と正直驚きましたが、かなりの成果主義と見ます。多くもらっている人が全体を引き上げているのでしょう。とはいっても、メーカーで720万円は、少なくとも機械系としてはかなり立派ではないでしょうか。自分よりも高い...。
5.ニデックのモーターの入った製品を買いたい。どうすればわかるか。
永守:シェアを見ればわかる。うちの社員に聞いてくれたら答えます(一同笑)
→これは自分も最近思うこと。リーファとかIRが出ればわかるけど、扇風機とかエアコンはわからないよね。リストで一覧出してほしいけどなー。
6.岸田さんがニデックに来られた動機は?
岸田:ソニーの定年の62歳になる半年ほど前に、縁があって会長と面談する機会があり、永守会長の虜になった。ソニーは途中から製造分野をあまりやらなくなってしまい、自分の学んできたことをニデックで全力で生かしたいと思ったし、京都に住んでいた時期もあったので、それも縁に感じた。
7.ソニーの盛田さんと比較すると永守会長はどうですか?
永守会長は本当に実務の人。どんなタイトルや役職になってもそれは変わらない。尊敬している。
→盛田さんについては、岸田さんがアメリカで勤務していた際、参加したゴルフコンペで郷ひろみとともにヘリで現れた話も。お、おう。。。さすがはソニー。(永守会長とは対極的ですね)。
8.工作機械メーカーを買収したが、ニデック三大精神はどの程度浸透しているのか。
永守:会社が赤字になる理由は三つだけ。製品の値段が高い、納期が遅い、サービスが悪い。これを全部変えた。工作機械の顧客は中小企業が多くトラブルにすぐ応えることが大事。今は365日の体制。
三菱重工工作機械は本当に良い技術を持っていた。しかし、すぐやらない、できるまでやらない、ニデックの全部逆(だから赤字だった)。
おたくの会社も買収しますよ(会場爆笑)
→この質問者は京都の工作機械メーカーの人との自己紹介があった。ニデックは以前彼の会社のお客さんだったのに、三菱重工工作機械を買収してから、1台も買ってくれなくなったとのこと(露骨ですね)。永守会長の回答のあと「うちにも講演会に来てください」と言っていたが、質問と照らして考えると、彼は自社に対して、危機感を感じられているのかもしれないと思いました。
9.ヒューマノイドロボットが今後登場して大きな市場になると考えるが、ニデックはそれに対してどういう立ち位置を考えているのか、また見通しについてどう考えているか。
→いろんな話があり、あんまり答えになっていなかった気がしますが、ヒューマノイドロボットには、例えば手だけでも76個のマイクロモーター、そして減速機が使われるとのことで、身体全体を考えたらものすごい量の部品が使われることは想像できます。ただ、その時代が来るにはまだ10年以上かかる気がしますが。
10.今年の成人式で永守会長の話を聞いた。キーエンスの滝崎さんは「いつまでも会社にいてはいけない、独立しろ」ということを話しているが、ニデックは社員に長く働いてほしいですか?それとも早く独立してほしいですか?
永守:結論から言うと、要らん人はいらん(会場爆笑)。優秀な人にはいつまでも働いてほしい。いまニデックにも70歳を超えては働いている人もいる。優秀な人というのは儲けてくれる人。設計、営業、生産管理だけじゃなく、人事とかいろんな仕事があります。いい会社ですよ。何よりね、創業者が楽しい(会場爆笑)
→ずいぶん若い女性だなと思ったが、なんと弱冠20歳で就活中とのこと。あとで調べたところ、向日市の成人式が、永守重信市民会館で行われたので、永守会長がしゃべったようです。親に株を買ってきてもらったのかわかりませんが、若いのに総会に参加するなんて、殊勝な心掛けです。この歳で質問する度胸もすごいし、可愛らしい質問ではありましたが、しっかり質問されてましたね。
以上、総会の速報でした!