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私の名前を教えてください

幼い頃、冷蔵庫を開けると常備されていたアイスは、2本に割って食べる『アレ』だった。

当時、近所の商店では、1本20円でバラ売りしていたが、家庭では10本ほどまとめて包装されているものが冷凍庫に入れられていた。

味が様々ある場合は何を食べるか選択することになるが、それよりもまずは『シェアする相手』を探すことからはじまった。

半分に割った片割れを誰に渡すのか、が目的である。

1人で両方共食べる方法があったのだろうが、何故だか基本的にそれはタブーとされていた。

時にシェアする相手がその場に見つからなかったとき、冷凍庫へ残りの半分を一応立てて置いておくのだが、これが後の悲劇を招くのだ。

既に切断されたことによって密閉されておらず、その切断面から濃度差などによって一部が溶けて垂れてくる。それが庫内を汚してしまう。それはベタベタとしており実に悲惨である。

そして親に叱られる。

また我々が食べていた頃、2本に折った片方だけに突出した部分が存在していたため、その僅かな出っ張り、つまり容量の多い部分を含む側を誰が食べるのかということをシェア相手と決めねばならなかった。争いのタネとなった。平和的解決としては大抵じゃんけんということになる。

そして後年、このアイスに確たる名前がないことを知る。

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そんな『この名もなきアイス』について、佐賀新聞に面白い記事があった。

呼んでいる名前のアンケートを募った。

その結果が以下だ。

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棒ジュース、棒アイスあたりが多数を占めている。『パンちゃん』とは、いわゆる『生協』が販売する商品名である。

私は『チュッチュ』と呼ぶ地域に住んでいたので、この結果からはマイノリティであったようだ。

以上は佐賀新聞のリサーチなので九州地方に優勢な結果の可能性がある。

次に中部地方の結果をみると、『チューペット』という名前が多くを占めていた。この呼び名は商品名であったらしい。

そして『チューチュー』は、なんとキン肉マンに由来というので、佐賀新聞の結果のチューチューやチュッチュなどもその影響かもしれない。

さらに上記の調査は非常に広範囲に行っており、貴重な資料となっている。以下に引用して示します。

【北海道】
「ポッキン」派が半数
【東北】
「ミルちゃん」
宮城県に本社がある(株)アキヤマの「ミルちゃんフルーツ」。
東北と新潟県ではTVCMが放送されていて認知度バツグン。
【北陸・甲信越】
「チューチュー」「チュッチュ」二大派閥。
【関東・関西】
「チューペット」のCM放送エリアだったこともあり、ほとんどが「チューペット」でした。
【中国・四国】
最も支持を集めたのは「チューチュー」。
【九州】
「パンちゃん」=九州限定の生協商品
「兄弟ゲンカが起きる」というお客様の声から、全国でどこよりも早く「両凸容器」を製品化したのが「パンちゃん」だったのです。
【沖縄】
50代以上の人には「ミッキージュース」、その下の世代には「サンティー」と呼ばれている、沖縄生まれのレモンティー。

なんと正式な名称は、『ポリエチレン詰清涼飲料』といい、通称『ポリドリンク』というようだ。

しかしこれはあってないに等しい。

『通称』とまで言っておきながら、全く浸透していない。

このような事態であったからがゆえ、地域によって全く異なる呼称が存在するようになったわけである。

転校を経験したり、進学や就職で故郷以外の出身者と出逢うことで、この『ポリエチレン詰清涼飲料』に様々な呼び名があったことに気づく。

この『事実』を知ること事態が、成長過程における一種の『通過儀礼』なのかもしれない。

その土地土地で名前が変わる。

京都で忍、神戸で渚といった風にさながら『昔の名前で出ています』のような『ポリエチレン詰清涼飲料』。

とても興味深い調査です。


おしまい

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pirokichi
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