つつがなし【妖怪シェアライフ】
つつがなく【恙無く】
という言葉がある。
例えば
つつがなくオープンの日を迎えることが出来ました。
などと使ったりする。
御存知の方もおありかと思うが、
この「恙無く」の「恙」とはなんなのだろうか。
病気・災いとしての恙
「恙」という漢字には、「病気」や「災い」という意味があるそうです。
よって「恙無い」ということは
「病気や災いが無い」
という意味として使われるようになったようです。
妖怪としての恙
やはり今回「妖怪を知ることは教養である」という持論を支持することになりました (下記引用記事参照)。
妖怪が教えてくれることは、オトナになってからでもあるぞ、と思ったのです。
ある妖怪の絵本には、以下のような説明がありました。
【つつがむし】
夜中に家に忍び込んで人の眠りをうかがい、人を刺し生血を吸って殺す虫の妖怪。この虫を「恙」という。このことから無事なことを「恙なし」というようになった。(少年少女版日本妖怪図鑑)
上記の絵「少年少女版日本妖怪図鑑」のつつがむしの絵を参考に描いてみました。
霊獣としての恙
中国では「恙」は虎や豹より凶暴で、人を食い殺す霊獣として恐れられていたそうです。
しかし徳川家康公は、霊獣である「恙」を簡単に飼いならしたといわれ、日光東照宮の唐門の屋根では守り神として「恙」が置かれているというのです(下の写真)。
感染症としての恙
もともと原因不明の病気があり、それを妖怪「恙虫」に刺されたことで発症するのだ、と信じられていたそうです。
時代が下って「恙虫」が刺したとされる原因不明の病気は、ダニの一種の仕業によることが判明しました。
妖怪が名付けた病
上記の病気を引き起こすダニは「ツツガムシ」と名付けられました。これは既に妖怪「恙虫」の仕業であるという言い伝えがあったことに起因したものです。
さらに「ツツガムシ」によって引き起こされる病気を
「ツツガムシ病」
と呼ぶことになったのです。
現代においても恐ろしい病
国立感染症研究所のホームページによれば、ツツガムシ病を引き起こすダニは学名Orientia tsutsugamushiと呼ばれているそうです。
妖怪の名前がダニの学名になるとは、実に驚きです。
ツツガムシ病は、現代においても我が国で年間数百人の感染者が発生し、数人の死亡例も報告されているようです。
全国でみると、年間に春〜初夏、および秋〜初冬の2 つのツツガムシの発生ピークがみられるようです。
予防にワクチンは存在せず、ダニの生息エリアに近づかないようにして、さらにダニに吸着されないような服装をすることが肝要なようです。
万が一、刺された場合はすみやかに抗菌剤を投与することが重要であるそうです。
おわりに
古くから人々が苦しんできた病気の原因として恐れられていたのが、妖怪「恙」と信じられていました。
そんななか医学の進歩によって明らかにされた原因のダニに、ツツガムシと名付けたことには驚きを隠せませんでした。
マダニだけでなくツツガムシにも気をつけて、「恙なく」新たな年を迎えたいと思う今日この頃です。
おしまい