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【MV・歌詞考察】花/藤井風-花と人、生死をかけた美しさ
藤井風さんの「花」が2023年10月にリリース
今回の歌詞考察は藤井風さんの「花」。
フジテレビ系木曜ドラマ「いちばんすきな花」(多部未華子さん主演)の主題歌でもあり、私がこの曲を知ることになったきっかけもそれ。
藤井風さんの作る楽曲はどれも魅力的だが、今回も圧倒された。
特に、そのMVを見てから。
MVであまりに衝撃を受けたため、今回はMV考察と歌詞考察を同時に行う
まだ聞いたことないよって方は、YouTubeや各サブスクリプションで配信中なので是非!
「枯れてゆく」という出だしの衝撃
音が下がっていく、ピアノの印象的なフレーズから始まる。
そして荒野を歩く喪服姿のような風さんと、棺桶に入り花でカラフルに埋め尽くされ引き摺られる風さんが映る。
枯れていく
今この瞬間も
咲いている
全ては溶けていく
「花」というタイトルから想像のつかない、まさかの「枯れていく」という出だし。
これだけでグッと世界観に引き込まれる。
棺桶に入り花に囲まれているカラフルな風さんは「枯れて」いて、
真っ黒な喪服姿のような風さんは「咲いている」。
たった10秒でこのMVが生死を表していると理解できる。
何が出来るのだろうか
誰を生きようかな
みんな儚い
みんな尊い
自分を取り巻く環境が日々変わっていく中で、
自分に何が出来てどのように生きていくのか。
そんなことをぼんやりと考えながら毎日を生きて過ごしていくことは、儚く尊い。
「咲いている」喪服風さんが歌っていることで、
残された者のその後を描いているように感じる。
「しわしわに萎れた花束」とは?
しわしわに萎れた花束 小わきに抱えて
永遠に変わらぬ輝き 探してた
僕らを信じてみた
僕らを感じてた
咲かせにいくよ
内なる花を
サビでは喪服風さんが、棺桶を載せ車を走らせている。
これは残された者=今を生きている者が、「永遠に変わらぬ輝き」を探している様子と重なる。
「しわしわに萎れた花束」とは何か?
様々な解釈が出来るが、自分を着飾った状態を指しているのではないか。
本来の自分自身ではなく、他人の目や世間体を気にした偽りの自分。
そんな見せかけの対外的な自分を装うと疲れてしまうが、それを「しわしわに萎れた」状態として例えているのではないか。
(ドラマの主人公たちにも通じる部分があるかもしれない。)
一方、「永遠に変わらぬ輝き」とは生き方そのものや信念・情熱のことではないか。
それが「内なる花」となり、美しく輝き続ける。
人生はどんな自分になりたいかを探す旅
さりげなく 思いを込めてみる
やむを得ず 祈りを込めていく
いつまで迷うんだろうか
いつかは分かるよな
誰もが一人
全ては1つ
2番では棺桶カラフル風さんが動き出す。
「さりげなく 思い」を込める=「生」で、
「やむを得ず 祈り」を込める=「死」
を表しているように感じた。
同時に、「思い」を込めるのは「死」にゆく者であり
「祈り」を込めるのは「生」きる者である。
死について生きている私たちが体験することはできないが、その情景が目に浮かぶ。お互いを思いやる、愛。
(さりげなくとやむを得ず、の韻が聞いていて心地良い!)
色々な姿や形に 惑わされるけど
いつの日か 全てがかわいく思えるさ
わたしは何になろうか
どんな色がいいかな
探しに行くよ
内なる花を
お線香を口に咥えてからお供えする風さん。
(最高にかっこいい。)
SNSの普及により、日常の中で「色々な姿や形に 惑わされる」ことがとても多くなった。
2番の歌詞は「いつまで迷うんだろうか」「惑わされる」といった、「内なる花」を探すためにもがいている様子が伺える。
歌詞での迷いとは裏腹に、MVの中では自由な自己表現が行われているのが印象的だ。
MVの中でお線香を供えていることから、故人の弔いであることが分かる。
間奏では日が沈み、盛大に死者を送り出す様子が描かれる。
しわしわに萎れた花束 小わきに抱えて
永遠に変わらぬ輝き 探してた
僕らを信じてみた
僕らを感じてた
咲かせにいくよ
内なる花を
探しにいくよ
内なる花を
落ちサビでは、火を囲み自由に踊る様子が描かれる。
花は美しく咲き、散って枯れていく。
人も花と同じで、年月は花より長いが枯れて土に還るのだ。
「美しく咲く」ために懸命に生きることこそが、枯れていく者の弔いになるのではないか。
土に還る、衝撃的なラスト
なんといっても衝撃なのが、1番最後。
踊っていた5人とも、土となり消えるのだ。
一見悲しい終わり方だが、彼らの表情から悔いる感情は見えない。
それだけ懸命に「咲いた」、ということだろう。
美しく咲く人になりたい
このMVの解釈は様々だろうが、以上が私の見解だ。
あっという間に枯れてしまうから、その前に懸命に「変わらぬ輝き」を見つける旅に出たい。
終わりがあるから美しく咲こうとするのだろうか。
日常で忘れてしまった、そんな力強い輝きを思い出させてくれる曲。とても好きだ。