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”北”朝鮮紀行

 ふしぎの国のバード(佐々大河)を大人買いした。19世紀、開国直後の日本を冒険したイザベラ・バードのUnbeaten Tracks in Japan(日本奥地紀行)を下敷きにしたコミックなのだが、なかなか読ませる。

 当時50代のはずのバードが、20代と思しき風貌になっているのは大人の事情として黙殺したい。

 バードのもうひとつの代表作がKorea and Her Neighbours「朝鮮紀行」なのだが、こちらはまだ未踏。

 北朝鮮とどう取り組むかということに、ここ最近悩んでいた。いわゆるテレビに出る政治学者、研究者とはぼくは違う。彼らのベースにあるのは労働新聞を毎日読み重ねること。これがなかなか出来ない。言いわけをするなら。

 北朝鮮という国は、ベールに包まれた存在ではあるが、初めて訪朝した2004年と、最後に訪朝した2016年では明らかに違う。主に訪問したのは平壌だが、いいことばを使うなら垢ぬけた。悪く言うなら、少し資本主義的な雰囲気をまとった。街に並ぶ建物は高く、明らかにきれいになり、人はスマホを使い、それは彼らの生活の利便を考えればいいことなのかも知れないが。

 なぜ、どうやって北朝鮮に関わるのか。という答えをこの漫画にぼくは見つけたのだ。

 記録をしなければならないのだ。誰かが。

 正直、北朝鮮の体制がどうなるかはわからない。コロナの影響は大きく、予想だにしない形でかの国を変えているのだろう。

 ひとつ誤解を解いておかないといけないのは、もし現体制が崩れたとしてそこで今あるすべての問題が解決するわけではない。便宜上、ネオ北朝鮮と呼ぶが、その存在は残るのだ。

 朝鮮総聯の機関紙「朝鮮新報」で「Strangers in Pyongyang」という連載を続けているのだが、外国人が在日コリアンの機関紙で書いたコラムは好評を得た。北朝鮮本国の案内員は渋い顔をする人もいるが、結果的にぼくはバードと同じ方向へ歩いていた。

 記録しておきたいのだ、ぼくは。二度と会えないかも知れない、北の人たちのことを。確実に変わりつつづける、よくわからない国のその瞬間を。

 そんなことにGW中の読書で気づいた。

 他の研究者やジャーナリストとは違う道かも知れないが、この道を行けばいいのかと気づいた。記録し伝えるのだ。延期された在日コリアンの友人の結婚式は、朝鮮総聯関係の組織の職員である新郎と朝鮮学校の先生である新婦の結婚式。新郎曰く「ゴリゴリの在日の結婚式」。ただ写真を撮るだけでも、模様を伝えるだけでも、それは貴重な記録になる。

 そう思うとふっと気が楽になった。ここでも地道に伝えて行ければと思っているし、本のかたちになれば素晴らしい(興味ある出版社さんいませんかー?)。

 北朝鮮について書かれるべきことはなんだろう。謎多き指導者についても、その体制についても、地政学的な視点からも、それらはいずれも貴重なものだが、ぼくはぼくで、在日コリアン社会に、ひょいっと入っていける今の立ち位置を固守しようと考えている。

 今書かれるべきは、21世紀の朝鮮紀行。すなわち”北”朝鮮紀行ではないだろうか。

■ 北のHow to その110
 朝鮮紀行も読まないといけない本と思いつつ本棚に死蔵されたまま。政治的、軍事的な分析は必要ですが、どうもそれだけに視点が言っている気がします。普通の日本人が見た北朝鮮というのは実に貴重な存在なのかも知れません。 

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サポートいただけたら、また現地に行って面白い小ネタを拾ってこようと思います。よろしくお願いいたします。