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東京日朝焼肉大戦争血風録(8)

  フィナーレ前に少し寄り道をすることになった。在日コリアンの友人から忘年会のお誘いが来たのだ。

 赤羽駅に18時45分集合。決まっているのはここまで。

 駅に行くと「じゃ、こちらへ」と早足で連れていかれる。いつもこうだ。店の名前はギリギリまで教えない。

 歓楽街の一角にある焼肉屋。

 まずはキムチとナムル。レモンサワーとマンゴージュースで乾杯をする。在日コリアンと焼肉屋に来たら入店と同時に色々諦める。何を諦めるか。つまるところ、自主性を諦めるのである。

「何、頼みますか?」と在日コリアンの友人に聞かれる。「任せるよ」と答えるしかない。すると相手が自主性を放棄し店員さんを呼ぶ。「何が美味しいのですか」という質問。「これっすね」。メニューをいくつか指さす。その通り頼めば間違いはないのだ。

 冒頭の写真は上タン塩。恐ろしい厚み。生なので冷凍特有のシャリシャリ感がない。恐ろしい…。

 トングは握らない。これも鉄則である。彼らに焼かせた方が100倍旨い。特に女性。「サラダを取り分ける気の利いたわたし」なんてのは在日コリアンと行く焼肉屋では幻想に過ぎない。「女性に焼肉を焼かせる男なんてサイテー!」。黙れフェミニスト!日本人より在日コリアンが焼いた焼肉の方がうまいんや。

 焼肉第一主義。

 食べるタイミングも任せる。彼らが皿に載せてくれたら速やかに食べる。それだけでよい。

 楽である。ともかく楽である。皿には食べごろの肉が適時置かれ、それを食べながら、話したい話をし、適時水分補給を心がければよい。

 そしていい焼肉屋の条件がひとつある。

 脇を固めるメニューが美味しいか。これも大事。この店はコムタンが絶品だった。コムタン、テールスープである。ひたすらぐつぐつ煮込んだスープの中では、牛肉が溶けている。なかなか美味しいコムタンを出す店はない。コムタン自体がない店も多い。スープは透明。あくを細かく取っていることがわかる。手間がかかっていることが分かる。

 これにご飯を頼む。スプーンでスープをすくい、ご飯を乗せ食べる。
 

「汁飯なんて下品!」

「黙れ小童!」

 そして、話題。これも大事。在日コリアン社会と北朝鮮の話をひたすら聞くのである。

 これがぼくの忘年会だった。いや、これほど実りある時間はなかった。そして、この素晴らしい忘年会を演出した在日コリアンの青年は年下だった。

 最後、勘定はぼくが持った。驚くほど安かった。

 まとめよう。

店は任せる。メニューは任せる。焼方も任せる。ただし、勘定は任せろ。

 我々日本人はこの姿勢を忘れてはならない。

 ちなみに行ったのはこの店。 

 東京苑

  赤羽で50年以上続く老舗である。

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サポートいただけたら、また現地に行って面白い小ネタを拾ってこようと思います。よろしくお願いいたします。