高橋新吉と
45年ほど前、彼の話を聞きに行った。
名画「叫び」の男にそっくりだ。
詩人高橋新吉さん、どうぞ。
風呂敷包みを脇に抱え、ゆっくりと座り、静かに話し出した。
「留守」という自作を読んだ、詩人としての目いっぱいの自負。
留守と言え
ここには誰も居らぬと言え
五億年経ったら帰って来る
くたくたの背広にダダを綺羅ばせて、一張羅の革靴が眩しく、ああ、この人だ。恋焦がれて待っていた。
指や読む声のしなやかさは、ひとに真似できない、詩人だけの舞台。
だれかが質問した。
いまも禅と共に生きる考えでしょうか。
何ものとも生きない。
風呂敷を丁寧に包み
スタスタと消えた。
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