ゆうきの暴露 「馬鹿でも小金持ち」
ある夕方のこと。
メンズエステの出張マッサージ店に勤める、清楚系が売りのゆうきが派遣されたのは白金の高級住宅街の一角にある三階建ての一軒家だった。
殺風景な庭も含めて80坪ほどある比較的新しい家だ。
呼んだのは、この家にひとりで住む四十代後半の男だった。
彼はハイブランドの服装を纏っているわけではなかったが、身なりを綺麗にしていた。
言葉遣いも丁寧で、あまり偉ぶる様子もない。
「さあ、入って」
男に誘われ、玄関で靴を脱ぎ、奥の部屋に通されると、ベッド脇のサイドテーブルには100万円の札束がぽんと置かれていた。
ゆうきが札束に目を奪われていると、
「あれは泥棒対策に置いてあるんだよ」
男は気取りもせずに言った。
シャワーを浴び終えて、これから施術という時に、男は札束を枕元に置いた。
「近くに置いておきたいだけだから、気にしないで」
男はそう言った。
施術が始まり、詳しく札束のことを聞いてみると、もし泥棒に入られた時に、もっと高価で大事な品物を取られないために、わざと100万円をわかりやすいところに置いてあるとのこと。
そうすれば、泥棒はそれだけ取って満足して、他は荒らさずに出て行くからだと語っていた。
だが、そう言いつつもこの男、施術中に札束を一枚ずつ手に取り、おひねりのようにゆうきの胸元に突っ込んで来る。
全部でゆうきの胸元には一万円札五枚を差し込まれた。
そして、施術の終盤になると、
「そろそろヤらせてよ」
男は今まで触ってこなかったにも関わらず、ぽつりと漏らした。
「無理です」
ゆうきはきっぱり断ったが、
「50万ならどう!」
と、言われた。
「……」
ゆうきは一瞬戸惑ったが、無言で首を横に振った。
「じゃあ、100万!」
男は上乗せした。
ゆうきは少し気が動きそうになったが、
「出来ません」
と、断った。
男はそれ以上何かしてくるわけでも、言ってくるわけでもなかった。
この男は本気でそんな大金を払ってでもしたいのか。
それとも、おひねりといい、交渉の金額といい、断られることを前提で、ただ金を持っていることをアピールしたいだけなのか。
結局ゆうきにはわからなかった。
ゆうきの暴露 〜完〜