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ノアの暴露 前編 「ノア流:糞客への対応方法」
メンズエステのセラピストたちが皆女の子っぽいわけでもない。
客の前では可愛い女性のフリをしているセラピストは多々いる。
そして時には、客とも激しい喧嘩をする。
新宿で働いている美人ではないがエキゾチックな顔立ちで男受けする、ノアという24歳のセラピストは店で1位2位を争う人気セラピストであったが、気性が激しく、少しでも気に食わないことがあると相手にそのことを強い口調で指摘する。
いくら初めて会った客であろうとも、「抜いてくれ」などと彼女に失礼なことを言うものなら、彼女は即説教を始める。
時に殴ることも辞さない。
それでも彼女の人気が落ちなかったのは、Sっ気のあるさっぱりとした性格ゆえであろう。
メンズエステの客はM気質なひとが多いから、彼女のようなタイプは好かれるのかもしれない。
メンズエステでは男性をじらして、Sっぽく振舞っているが、実際にSなセラピストは正直少ない。
Sのフリをしてないと客が調子に乗り出すので、自分主体で施術を進めるために演じている者も多い。
だがノアは正真正銘のSであった。
以前にSMクラブで働いていたこともあったが、あまりにも本格的すぎるSMの世界で、彼女に首絞め等のハードプレイを要求する客が後を経たず、距離をおきたくなったのでメンズエステにやって来たという経緯がある。
メンズエステで働くノアの元には貞操帯をつけてくる男もいる。
この男が初めてやって来たとき、会計を終えるなり、勝手に目の前でズボンを脱ぎ始めた。
股間に目をやると、貞操帯を付けている。
「彼女に付けられてるの?」
ノアは訝し気にきいたが、
「自分の意思です」
と、男は答えた。
そして、この男は貞操帯を外したくないらしい。
「仕方ないわね。じゃあ、付けたまま施術を受けなさい」
と、ノアはSMの女王さまさながらに見下したように男に言った。
貞操帯をつけたままの施術はかなりやりずらいが、ヌキを要求することなく、ただ見下して言葉をかけるだけで満足して帰るので楽だった。
ちなみにその客は週に一度は来ている。
ノアにはそのようなMな客が多い。
わざわざSなセラピストがいるかも分からないメンズエステでなくとも、SMクラブに行けば確実に欲求を満たせるのに、なぜここなのだろうと思っている。
なぜそうしないのかは常に謎のままだ。
ある時、フリーでやって来たラガーマンのようながっちりとした体格の客が、施術中にふざけてノアの体を押した。
よろめき尻餅をついたノアはカッとなって、その男の顔を殴った。
すると客も思い切りではないだろうが
「なにするんだ!」
と殴り返してきた。
ノアは引かずに、
「あんたがやり始めたんでしょ!謝れ!」
と言いながら客に跨り何度も殴ったり蹴ったりすると、
「接客業の女が客を殴っていいと思ってるのか!店に言ってやるからな!」
と怒って帰って行った。
客から電話で事情を聞いたらしい店のスタッフが、後で客の所に出向き土下座して謝ったそうだが、ノアは自分は全く悪いと思っていなかった。
「ノアさん、なんで客殴ったんですか。ヤバいっスよ流石に」
スタッフに後日問い詰められたが、ノアはこう言い放った。
「客だからって、冗談のつもりだったからなんて言葉ひとつで女を突き飛ばして言いわけないじゃないですか。そんな男は客じゃないです。暴力を振るってきたのに黙ってニコニコしてるなんて私は無理です!やられたらそっくりそのままやり返すのが私のやり方ですから」
まるでドラマのセリフを言うように捲し立ててスタッフをジッとみる。
「…。わかりました。でも今度は何かされる前に躱してください」
と、半分諦めた様子でスタッフは言った。
そして、もうひとりノアが殴ったことのある客がいる。
続く....