今日も大岡山のマクドナルドにて_20220316

19時。
ついに「奴」が来た!

僕は仕事の性質上の来月に繁忙期が来る。
その準備でいつも以上にここでも長居してしまう。
ただ、日も少しずつ長くなって、暖かくなって
気持ち的にはそれほど苦ではなく明るいうちに戻ろうと思いつつ
こんな時間まで居てしまった。
もうそろそろと思った瞬間、奴が現れた。

奴。
それは僕がここで見かける度に目が離せない「定点観測対象おじさん」、だ。
歳の頃還暦位、小太り、飄々とした風体のおじさん。
いたって普通ないでたちで、散歩か買物の途中で一休みな雰囲気を醸し出している。

奴の定点観測たる理由を問われればそれは容易で
「いつも絶対に何も買わずにずっと居座っている」
からだ。

奴と出会ってから2年は経つが今まで一度も買った形跡はない。
買わずに大丈夫なの?と思っていたが、今ではもはや大丈夫になっている。
店員に声かけられそうなもんでしょ?

初めて遭遇した日。
僕の右隣に奴はいた。ホットコーヒーを一つ手元に置いてくつろいでいた。
ぼんやりしていたら気にも留めない普通のまったりしているおじさんだが
僕はそこに「違和感」を感じた。
おもむろにカバンの中からペットボトルのお茶を取り出してホットコーヒーのカップに注ぎだした。
まぁ、そういうことは他でもあるだろう。ただ、なんか雰囲気がおかしい。
すると今度は荷物を置いたままその場を立ち去った。
10分程して帰ってきたらスーパーで買ってきたと思しきお惣菜を鞄で隠しながらつまみ出した。
おい、、、ここはフードコートか。。。。と店員にいつ注意されるかハラハラしながらその日していた読書は全くはかどらなかった。
店員の巡回をかいくぐり、1時間後、おじさんは飲み干したコーヒーカップを店のナプキンで丁寧にふき取り乾燥材代わりにもう一枚ナプキンを丸めて詰めて鞄にしまった。
んん?と思ったが、それはそれから数日後にまたこの店内で奴を発見した時にすべてを理解した。

再び出会った奴は先日と同じくホットコーヒーのカップにペットボトルのお茶を注いでテディベアみたいにデンと座ってくつろいでいた。
その次あった時も、またその次あった時も同じだった。
奴はそれはもう、ビックリするくらいにいつも何も買わずにデンと座っていた。
店内防犯カメラもあるのでいつかは目を付けられるのではないかと僕がなぜかハラハラしだした。
奴も少しは気にしているのか、コーヒーカップを隠すように肩掛け鞄をテーブルに置いていた。

初めは奴のことが気になりだして、初めは気になって気になって気が高ぶっていたが、次第に僕も落ち着きを取り戻すともっと冷静に奴を観察することができるようになった。色々あるが3つほど共有しよう。
ひとつ。
奴はくつろいでいる感を醸し出す為か、演出アイテムとして「文庫本」を常備していた。読んでる途中ですよー、感。
あくまで「感」であることを理解したのは、1年過ぎてもその本が「読み終わらない」こと。
いつも同じ色の赤い背表紙の文庫本が鞄の後ろにあるのだ。ただ、絶妙な位置にあって未だにタイトルを確認できない。
ふたつ。
行動が不可解。このマクドナルド2階の客席フロアを移動する時には大外回りの時計回りをする。たまに2周したりしている。
そして、トイレに行くと20分位出てこない。毎回。個室に籠っている。なにをしているのかは、わからないし、わかりたくはない。
みっつ。
どう考えても店側からすると注意案件なのだからも目立たぬように地味な恰好すればいいのにいつもボーダーのTシャツを着用している。
マリンルックだか、囚人ルックだかに思えてわりと記憶に残る。
最近は寒かったので流石に襟付きのシャツを着ていて、通年じゃないんだな。と思ったら袖口からしっかりボーダーが確認できて、逆にほっとした。

まだまだ奴については未知だ。文庫本のタイトルも確認できていない。
これからもこの定点観測は続くだろう。
ただ、一つ僕が奴を偉そうに弾劾しづらいのは、僕自身もマクドナルドで毎回落とすお金はほぼ95%は100円、クーポンで安くなるコーヒーMサイズだけなんだ。

それ以外でもマクドナルドで店内を観察していると目線と意識を奪われる機会は年中。
気分転換と1人で仕事しているとついサボるので人目のあるマクドナルドに来るのだが、なかなか思い通りにはさせてくれない。
それでもこうして色んな人やコトを「哲学する」という時間を与えてもらえると思うと日々のルーティーンの中には必要なんだろう。

さて、「マクドナルドにて」を書いてみるのはとりあえず10回を目途としていたので、目標達成、一旦終わり。
まぁ、でも、この場での哲学の時間はこれからも続くので4月の繁忙期が終わったらシーズン2、かな。テレビドラマ方式ね。


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