宗教と0.024%
読売新聞などで報じられていましたが、旧統一教会が富山市を訴えたようです。
「旧統一教会と関係断つ 富山市議会決議、取り消し求め信者が「全国初」提訴」(https://www.yomiuri.co.jp/national/20221216-OYT1T50109/)
「旧統一教会との関係を断つ」という方針は、政党では自由民主党が決めており、自治体では富山市の他に大阪市でも決議されています。裁判になると多額の弁護士費用などが発生するわけで、富山市民の方には同情しますが、ボク個人としては富山市、そして大阪市などの取り決めは極めて妥当なものだと評価しています。
安倍晋三氏が射殺されてから今日までの間、旧統一教会の問題を取り上げている民放局のワイドショーなどでは、ことあるごとに「自民党が『関係を断つ』というのであれば、その理由を明確にする必要がある」と指摘してきました。この提言を「聞く力」を自認する岸田総理が無視し続けていることが、今回の裁判騒動の発端にあると思っています。
岸田首相、並びに自民党政権に関しては日を改めて論じるつもりなので、このまま話を進めますが、最初に旧統一教会を「不当(不法?)な手段で金銭収集を行う団体なので関係を断ちます」などと定めておけば、自民党が訴えられることはあっても(!)今回の訴えには至らなかったでしょう。
話は変わりますが、現在50歳代半ばのボクから見ると、今回の一連の騒動は、「安倍氏の射殺」も含めて「社会がキチンと対応していれば全て防げたはず」だと思っています。
少なくても2回のチャンスがありました。
まず、旧統一教会が「有名信者(芸能人など)の合同結婚式への参加」などでスキャンダラスに取り上げられた20年以上前のことです。ただ、この時は同時期に発生した「オウム真理教関連の事件」が全ての話題を持っていってしまい、オウム事件で教祖を含む実行犯が全て逮捕されてからも、旧統一教会の話題は全く出なくなりました。ただ、この時に少しでも旧統一教会に歯止めをかけることができていれば、今日の結果は違っていたでしょう。
第2のチャンスは「団体名変更」の時、つまり2015年です。穿った見方かもしれませんが、一部には、当時、首相を務めていた安倍晋三氏の子飼である下村博文氏が文部大臣を務めていたことから「教団からの名称変更届が受理された」との噂もあります。インターネットで調べると、2015年は沖縄県・辺野古地区での米軍基地の工事着工、 IS というイスラム教過激派組織による日本人殺害があった年だったそうです。これらのニュースを拾っていくのも大切だったと思いますが、与・野党を問わず政治家や各種メディアが「統一教会が名称変更する」ことを国会、あるいは媒体で取り上げてさえいれば、旧統一教会が引き起こした霊感商法・高額献金、2世信者(人権)の問題、養子あっせん、などの問題にいち早く気付けた、と思うのです。献金被害者などを支援している弁護士グループは内閣や政党に「名称変更反対の要望書」を送付していたのですから。
ところで……
先程、オウム真理教の話に触れましたが、あの時に日本の警察はあらゆる法律を駆使してオウム信者の逮捕を繰り返し、全容解明に努めていたことを記憶しています。たしか、ある信者が「マンションの敷地に入った」というだけで「不法侵入罪」を適用したことがあったはずです。このニュースを聞いてボクは「国家がやろうと思ったことは何でもできるんだ」と、恐ろしく感じたことを今でも覚えています。
その時に比べて(死者が具体的には安倍氏1人だから?)、政府の取り組み姿勢が今一つだと感じています。先日、成立した被害者救済法案も、「短期間でも成立させた=被害者のことを考えています」という与野党のアピールに過ぎない、というのは言い過ぎかもしれませんが、そう思えてしょうがないのです。
国会では「マインドコントロール」という文言を巡って議論が行われたようですが、この「宗教団体によるマインドコントロール」という問題が1ヶ月や2か月でカタが付く問題だとは思えません。
極論かもしれませんが、ボクは特定の宗教を信じている人の全員がマインドコントロール下にあると言っても過言ではない気がしています。
例えば、世界で最多の信者数を誇るキリスト教では、イエスは処女だったマリアから生まれたとされています。また両手首と両方の足の甲を直接十字架に打ち付けられて亡くなったイエスは3日後に復活した、とされています。
「処女から生まれる」
「死者が復活する」
ありえますか?
そのキリスト教を批判して誕生したイスラム教も、最後の預言者・ムハンマドの最初の妻は15歳年上・40歳のハディージャという女性だったそうです。このハディージャとの間に2男4女の子どもを設けたということですが、全て年子だとして、最後の子どもが生まれた時、ハディージャは47歳になります。医療が進歩した現代でも超高齢出産という扱いです。6世紀に、あり得ることなのでしょうか?
でも、これらのことを信者は「神(神の使い)だからそうなった」と考えるのです。そして、そんな人たちを取り締まる法律を制定しようというのです。「1ヶ月や2ヶ月では到底足りない」と感じるのが普通だと思うんですが...… むしろ「献金問題」は経済問題として個別に対応して、「マインドコントロール」などは宗教全体からゆっくりと時間をかけて考えた方が良いと思います。
今日は「献金問題」についてだけ、ボクの考えを述べたいと思います。
旧統一教会に限らず宗教団体への献金、あるいは寄付というのは「信者」が行うものです。つまり家族ではあっても信者ではない人のお金/財産までは寄付する必要がない、と言うことです。
仮に、稼ぎ頭のお父さんが信者、主婦のお母さんと未成年の2人の子どもは非信者、という4人家族があったとしましょう。ある時、お父さんが宗教団体に1億円を寄付しました。お母さんはその事実を後から知ります。この場合、1億円という財産(現金)が一家の財産であるなら、奥さんと2人の子どもたちも当然、その1億円の所有権はあるはずなので、政府がその気ならばお子さんの分も含めて1億円の3/4 の 7500万円は取り返せるはず(2500万円は寄付として認められるでしょう)です。そして、国会では宗教団体などに対する寄付行為に対する時効期間だけを議論すれば良い、ということになるでしょう。国会議員から「そんな簡単に行くかよ」という怒声が聞こえてきそうですが……
では何故、国会議員は、ここまでこの問題をややこしくしているのでしょうか?
ボクが思うに、1つは「やった感」を出すため。
2つ目には「宗教問題への無理解」、
そして3点目には「自民党/安倍派への配慮」だと思っています。
現在の旧統一教会の信者数は10万人だと言われています。日本の人口が1億2500万人だとすると0.08%です。
また現在の日本の独身率は男性28.3%、女性17.8%になっているそうです。旧統一教会の信者数が男女半々と仮定して、それぞれにこの数字を掛け合わせてみると、男性独身信者=1万4150人、女性独身信者=8900人、合計で約2万3100人の独身者がいるという数値がでます。それ以外の約7万7000人が家族持ちと仮定できるのです。そして、それが3人家族だとした場合、旧統一教会は約2万5700世帯、つまり2世信者も約2万5700人ということになります。実際には5人家族などもあるでしょうから、ここでは計算上の数値ということで「2世信者は約3万人」を仮定値として話を進めていきます。
この「3万人」をショービジネスの世界でみると「埼玉スーパーアリーナ以上/東京ドーム以下」となります。野球で使用する神宮球場よりも多い数字ですが、日本人全体でみるとわずか0.024%です。
話は変わって……
第2次安倍晋三内閣では「北朝鮮による拉致被害者の救出」を実行リストのトップに据えていました。
その北朝鮮の金正日総書記と、旧統一教会の教祖・文鮮明氏(故人)は直接会談しているだけではなく、金銭のやり取りもあった、と噂されるほど近い存在だったと言われて(真偽のほどはボクにはわかりかねます)います。金正日氏と文氏の死亡後には、文氏の妻で教会の現在のトップである韓鶴子氏も、とあるイベントで金正恩総書記からの祝電を披露するなど関係は保ったままにあります。
さらに安倍氏には、尊敬する祖父の岸信介氏が文氏と親しかったという事情もあります。
北朝鮮とのパイプと岸信介氏との縁。
オウム真理教事件の前に起きた醜聞を考えると、党として旧統一教会と全面的な付き合いこそできないけれども、安倍氏個人(&安倍派)としてできる限り付き合う代わりに北朝鮮とのパイプを使わせて欲しい。と願うのも無理ないのではないでしょうか?
また、こう考えると「記憶にない」の答弁を繰り返して国民の怒りを買った山際大志郎議員が経済再生担当大臣を更迭された直後に自民党の新型コロナウイルス等感染症対策本部長に就任したこともわかると思うのです。
つまり、安倍晋三氏が麻生太郎氏に統一教会を北朝鮮問題解決に使うことを報告/協力を求め、麻生氏が了承。麻生派の窓口として山際氏を当てた。山際氏は忠実に「派閥のお仕事」をこなしていたが、この裏事情をしらないマスコミは「旧統一教会と山際氏が親しい」と騒ぎ立てた。ここで山際氏を干せば麻生派として党内外への示しががつかないことから、山際氏から大臣職を奪う代わりに自民党内の重要な役職を与えた、という推測です。ウィキペディアには「コロナ対策本部を管轄する政務調査会の萩生田光一会長(安倍派)は、自身の判断で山際を本部長に就任させた」とまで書かれています。
また、この「邪推」を裏付けることになるかどうかは不明ですが、安倍政権の時代に北朝鮮から「日本が到底承服しかねる結果が来たことがあり、政府がその回答を付き返した」と、水面下で交渉が行われていたことを示したインテリジェンス関係の本も幾つか出版されています。
ここで先ほど算出した旧統一教会の信者数と、推定ではありますが2世信者数を思い出して下さい。
信者数=10万人(0.08%)
2世信者数=推計で3万人(0.024%)
前にも書きましたが、この3万人というのは神宮球場での野球の試合の観客数よりも多い人数ではありますが、日本全国民からみると0.024%にすぎません。
一方で政府は、北朝鮮による拉致被害者が17人、「北朝鮮による拉致の可能性を排除できない者」が873人いると発表しています。合計すると890人。
この890人と3万人を「天秤にかけた」末に、安倍氏は890人を取り、このことが旧統一教会のイベントでの「挨拶ビデオ」に繋がり、奈良県での射殺にまでつながったと思うのです。
話は少し変わりますが、テレビで安倍氏射殺のことを取り上げる時、キャスターは口を揃えて「絶対に許せない犯罪」と語ります。
でも、安倍氏を射殺した人にとっては、「旧統一教会を後押ししていた」安倍氏こそが許せない存在だったことでしょう。繰り返しになりますが、旧統一教会の名称変更の時、献金被害者を支援している弁護士グループは政府や自民党などに書類で「名称変更を認めないで」と要望書を出しているのですから。
そういえば、この問題が発覚してから、多くの自民党議員が「旧統一教会の活動内容を知らなかった」という議員が多くいます。
この議員たちは要望書を見ていないのでしょうか?
2015年以前に議員になった人だったら、少なくても自民党議員は要望書の存在を知っていなきゃダメだと思います。
同時に、この問題における各種メディアの責任は決して軽くないとも思います。メディアも「信者数は国民全体の0.08%だから取り上げなくて良い」と考えたのではないと思いたいのです。ただ、前回取り上げられてから現在までの20年以上、旧統一教会のことに全く触れてこなかったのは事実ですから、そこから「邪推」すると……
あるアナウンサーが言った「憎むべき犯罪」というセリフは、一度、全メディアがかみしめるべきではないでしょうか?