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世界最大の医療機器メーカーMedtronic 1Q決算

Intro
医療機器業界で世界最大手のメドトロニック社は、世界で初めて植込型心臓ペースメーカーを開発し、以降急速に発展してきました。
 そんな同社が8月20日に2025年度の第1四半期の決算を発表し、その堅調っぷりを示しました。NVIDAを初めとしたAI関連のテック企業が注目されがちですが、今回は医療機器という私たちの健康や命に関わる分野で活躍する同社に注目してみたいと思います。

 社史 (参考:https://www.medtronic.com/us-en/our-company/history.html)
電子工学専攻の大学院生だったEarl Bakken(アールバッケン)氏は、1949年に義理の兄のPalmer Hermundslie(パーマーハーマンズリー)氏と共にミネアポリス自宅のガレージで、医療用電子機器の修理ビジネスを始めました。彼らは自分たちの専門と起業家精神をもって人々を助けるというパーパスの元に順調にビジネスを拡張し、次第に自分たちのことを「ガレージ・ギャング」と呼ぶようになります。
(ビルゲイツやスティーブ・ジョブズもガレージで1970年代からガレージで起業しましたが、もっと前の世代の米国の起業家もガレージでビジネスを始めていたんですね)。
 それまで修理事業を行なっていた彼らの元に転機が訪れます。
1957年のハロウィンの日にミネアポリスで停電が発生。
当時のペースメーカーは大きな箱状の機械にコンセントを差し込んで使用するものであったため、小児患者さんが命を落とす事件が発生します。知り合いの医師から、電池式のペースメーカーの開発を依頼されたアールは、わずか4週間で電池式のペースメーカーを完成させ、義理の兄のパーマーが全米を飛び回り、この電池式ペースメーカーを患者のもとに届けます。
そしてさらにわずか1年後には体内植込式ペースメーカーの開発に成功し、1960年には商用化します。
以降、ペースメーカーを主製品として会社は発展し、1977年には新しいタイプの人工心臓弁を開発。1983年には神経刺激分野に参入。1996年に植込み型除細動器を開発。いくつかの企業買収を経て世界トップの医療機器メーカーとなりました。

1Q FY25ハイライト


  • 6ヶ月平均株価・・・$83.09

1QFY25(U.S. GAAP基準)
•売上高    $79億(前年同期+2.8%)
•営業利益       $12.8億(+0.8%)
•税引前純利益     $12.7億(+0.6%)
•営業CF  $9.9億
•現金及び現金同等物等 $13.1億
•自己資本比率  53.7%
•希薄化後eps. $0.80



売上/営利推移 堅調に推移

今期営業利益率16.1%(前年同期▲0.4ポイント)


売上構成

全体として売上、営業利益共に堅調に推移しています。
売上構成を見ると一番大きいウェイトを占めるのが循環器系の機器で次に神経科学分野となっています。
次にウェイトの重いこれらのセグメントのを見ていきます。

まずは循環器系

循環器系(Cardiovascular)の構成


Medtronic社資料
https://filecache.investorroom.com/mr5ir_medtronic/773/Earnings_Presentation-FY25Q1-FINAL.pdf

循環器系の構成のうちCRHF(Cardiac Rhythm & Heart failure:脈調整と心不全)が半分を占めています。この分野にはペースメーカーなどの製品があり、特に今期決算では世界初のリードレスペースメーカーMicraが収益に貢献しています。

以下Micra紹介


リードレスペースメーカーの概要は東京大学附属病院循環器内科のホームページから引用させていただきます。


従来のペースメーカーは胸の筋肉にポケットを作り、それを上画像の左のペースメーカーをそのポケットに入れ静脈からリード線を通して心臓に刺激を与えるものでしたが、Micraは直接心臓埋め込むというものです。



次に売上構成の中で2番目に大きい神経科学分野を見ます。


Medtronic社資料https://filecache.investorroom.com/mr5ir_medtronic/773/Earnings_Presentation-FY25Q1-FINAL.pdf

こちらも循環器系と同様にCST: Cranial& Spinal Technologies (頭蓋骨や脊髄に関する技術)が構成の半分を占めています。主力となっている製品は` AiBLE ecosystem`という製品で、複数の機器と高度なソフトウェアから構成され、頭や脊髄といった高度な外科手術を円滑進めるためのパッケージとなっており、この製品が収益に貢献しています。



終わりに

昨今、NVIDAやTESLAなど最先端のテック企業が注目されがちですが私達の健康といっった地味だけど大切なことを取り扱う企業に着目してみました。
古い会社ではありますが、その歴史を辿ると、現代のスタートアップと変わらないガレージの小さな会社から始まり巨大企業となっっていったことがわかりました。


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