ガンジュ再生への道のり④
第4話 金崎の決意、そして再生へ。
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ジン・ギスカン:
「おいミヤコ、金崎の土地はぬかりなく売却できたんだよな!!?」
ミヤコ・マイルド:
「え? ええまあ……大方問題ないと思いますが」
ジン・ギスカン:
「じゃあなんで向こうの担当者から俺に苦情が来てんだ? 俺は売却額の交渉とか手続きとか打ち合わせで忙しかったから、金崎からの買収はお前に全部任せてたんだ。向こうからはその金崎の土地のことで言われてんだよ」
ミヤコ・マイルド:
「ですから、報告した通りに一部の1%にも満たない土地を除いてすべて売却が済んだはずです」
(ジン・ギスカンの持つスマホに着信が入る)
ジン・ギスカン:
「……はい、こちらMKIグリーンの遠野です。…………はい、申し訳ありません! 今担当者に確認していたところで……はい…………えっ? は、はいわかりました……」
ジン・ギスカン:
「おい、向こうの担当だ。お前と直接話したいって」
ミヤコ・マイルド:
「はい、MKIグリーンの都です」
施工担当者:
《あんたが担当か!? あんたが元の持ち主に残したって土地、ちゃんと確認したのか!?》
ミヤコ・マイルド:
「ええ、メガソーラー建設現場の端っこですし、何か問題でも……」
施工担当者:
《ちゃんと現場を見て確認したかって聞いてるんだよ!! とにかくアンタも現場に来い! ヤクザみてえな連中もいて、全部の工程が滞ってんだよ!!》
ミヤコ・マイルド:
「は、はい……わかりました。…………失礼します」
ジン・ギスカン:
「とにかく行くぞ! 金崎にも連絡入れて、来るように言うんだ!」
ミヤコ・マイルド:
「わ、わかりました」
ジン・ギスカン:
「クソ……やっぱりだ。ミヤコ、てめえとんでもないミスやらかしちまったな。ここは、金崎に残した土地はメガソーラー建設現場の搬入路を見込んでいた場所じゃねえか」
ミヤコ・マイルド:
「む…………たしかに、林業用道路にも使われていたような場所ですが、こんな場所、現場の周りにいくつもあったはずでは……」
ジン・ギスカン:
「いや、それがそうでもない。ダンプの行き来しやすい道路、そして大型重機を搬入できる広さがあり、勾配のきつくない場所はここ以外にはない」
ミヤコ・マイルド:
「な……っ ただ、そんな道路、仮設工事を追加していくらでも作れるのでは……」
???:
「ところが、そうはいかないんですよ」
パーカー:
「メガソーラー建設予定地に近い平野はほぼ全て公共工事で農地整備され、『農地』以外に転用できないんですよ。少なくとも数十年はね。当然、農地の間にある車一台分程度の道路を広げるなんてとてもできません。ダンプが搬入できる道を遠回りでも見つけたとして、遠い現場までの伐採作業、崖に近い急こう配の場所に道をつくる土木工事を考えれば現実的ではないでしょう」
ミヤコ・マイルド:
「だっ、誰だアンタ」
パーカー:
「金崎さんの代理人を務めております、WRパーカーと申します。あなた方がここへ来る報せを聞いたので、交渉に参りました」
ジン・ギスカン:
「なっ……金崎の!? ってことはテメエが全部絵図描いてやがったのか」
パーカー:
「あなたは遠野さん……とおっしゃいましたね? なんだか闇を感じる人相ですが、あなたは事の重大さをはっきりわかっているようですね」
ミヤコ・マイルド:
「どういうことなんだジン……遠野さん」
ジン・ギスカン:
「このガイジンの言う通りだ。この場所以外にメガソーラー建設現場への道はない。その土地を金崎がたった80坪占有している。このたった80坪で、メガソーラー建設工事が実行不可能になるんだよ!!」
パーカー:
「まあ……元々聞いていた話では果樹園を開くはずでしたよね? 金崎さんは土地を買って果樹園をつくるあなたたちのために休憩小屋をここに建てるつもりだと話していましたよ」
ジン・ギスカン:
「バカにしてんじゃねえ!! ミヤコ、施工担当者が言っていたのはこのことなんだよ。この土地をどうにかできないとメガソーラー建設計画は中止、それを見越して土地を集めていた俺たちは大損しちまうんだよ!!」
ミヤコ・マイルド:
「な…………わ、私が甘い見通しをしていたということですか……?」
パーカー:
「さて、そろそろ交渉といきましょうか……。金崎さんはこの80坪の土地、あなた方の誠意次第では譲っても良いとおっしゃっています。まあ、当然適正価格とはいきませんけどね……!」
カシラと呼ばれた男:
「……金崎さん、先ほどパーカーから電話がありました。例の80坪は先に売却した土地よりはるかに高い金額でまとまったようです」
金崎 豊一:
「そ、そんなの大丈夫だったんですか? あのたった小さい土地に……」
カシラと呼ばれた男:
「もともと金崎さんの土地は相当の金額で施工元に売却できるんです。ヤツらが損しない、トントンになる程度の金額もすでに把握済みですから」
金崎:
「…………」
カシラと呼ばれた男:
「それで金崎さん、決意は固まりましたか」
金崎:
「……ここまであんたに世話になって、それで終わりじゃ仁義に反するだろう。俺はあなたがたの盃を受けるよ」
カシラと呼ばれた男:
「そうか…………。それじゃあ、親子盃の儀が終わったら、俺はアンタのアニキだな」
金崎:
「ん? あんたの盃じゃないのか」
カシラと呼ばれた男:
「盃は俺のオヤジのを呑んでもらう。まあ、その話はあとだ。盃受けるってんなら、今回お前が受け取るカネは俺の目論見に使っていいってことだよな」
金崎:
「ああ、俺にとっては初めからなかったような金だ。バアちゃんの為の金はすでにもらってるわけだし」
カシラと呼ばれた男:
「よし……これですすめられるぞ。俺のビッグサクセスロード……」
金崎:
「ん?」
カシラと呼ばれた男:
「ああ、気にするな……。さて、そろそろ来る時間のはずだな」
宮沢社長:
「やれやれこの忙しい時に……金崎、話ってなんだ。復帰戦の話か?」
金崎:
「どうも、社長。おれのことより、ちょっと話してほしい人がいて」
宮沢社長:
「ん? どなたですこの怖い人」
カシラと呼ばれた男:
「…………やはり、もう忘れているか。俺の印象なんてその程度なんだな」
宮沢社長:
「はて、私は清い交際しか仕事上付き合いがありませんが、どこかでお会いしましたかな。私あまり暇ではないのですが……」
カシラと呼ばれた男:
「まあ社長、私の提案を聞いてください。あなたの今の状況を変えられる、よいお話になるはずです。」
宮沢社長:
「…………まあ話くらいなら聞いてやらんこともない。金崎に免じてな」
カシラと呼ばれた男:
「ええ、是非聞いてください。あなたの……そして俺の再生のための話だ」