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ガンジュ再生への道のり②

第2話 金崎豊一、山を売る。山林開発とマネーの匂い


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本隊所属、金崎豊一は巡業を休み、奥州市の祖母の家にいた。

金崎:
「いやあ~久々に帰ったけど、バアちゃん家はやっぱり眺めも良くて空気も澄んでて気持ちのいいところだなあ」

祖母:
「トヨちゃん、忙しいのにわざわざ来てくれてありがとうねぇ。身体はだいじょうぶかい?」

金崎:
「全然。元気だよ! 最近はあんまりカードも組まれないし」

祖母:
「よくわかんないけど、トヨちゃんが元気なら、ばあちゃん嬉しいよ。せんべい、おあげんせ」

金崎:
「ところで前に電話で、じいちゃんの山を売ってほしいって人からしきりに連絡が来るって言ってたけど、どうなったの?」

祖母:
「ああ、トヨちゃんには心配かけさせたくないんだけどねえ。じいさんが持ってた向こうの山、最近欲しい欲しいっていう人がいてねえ。釜石自動車道が近くに通ってるからだと思うけど……。前はあの山、じいさんの知り合いの林業屋さんに木を切ってもらったりしてたんだけど、じいさんも亡くなって、その林業屋さんもやめちゃってねえ。どうしたもんか悩んでたけんど、じいさんが残した山、渡しちまうのもどうかと思ってねえ……」

金崎:
「ふーん。でも木ほとんど切っちゃって、もう価値がないんだから売っちゃっていいんじゃないの? 持ってるだけでも税金かかるんでしょ」

祖母:
「まあそうなんだけんども……」

???:
「ごめんくださーい!!」


???:
「やあやあ金崎さん。どうも、MKIグリーン株式会社の都正則と申します。突然すみませんね。お宅の山林の件で参りました」

金崎:
「……あんたら、バアちゃんに電話してた人? どこかで見たことがあるような気がするんだけど」

都:
「(えっ、金崎だと……?) ゴ、ゴホン! ええ、そのとおりです。息子さん……いや、お孫さんですかな。りっぱそうなお方ですね。よろしければご一緒にお話を聞いていただいてもいいでしょうか」

金崎:
「ああ、どうぞどうぞ」

祖母:
「せんべい、おあげんせ」


都:
「我々、全国の使われていない山林を有効活用するべく、土地の買取をさせていただいております。今回、我々の事業についてご理解をいただくために直接お話をさせてもらうために参りました。
 金崎さんのお持ちの土地は実にすばらしい! 豊かな土壌と安定した地盤。雪は降りますが、平野に面する斜面は南に面しており日当たりもよい」

金崎:
「日当たり? 日当たりがいいとなにがいいんですか」

都:
「我々は山林の再開発をすすめておりまして。一帯の持ち主がばらばらな土地を買い取り、何十ヘクタールにもなるまとまった土地にすることによって高所栽培や果樹園に転用して効率の良い農作物の生産を行うことができるのです」

金崎:
「ふーん、圃場整備みたいなもんか」

※圃場整備とは:農地の区画整理を行い、水の管理や大型機械の搬入をしやすくすることで生産効率の大幅な向上が期待できる。

都:
「こちらの方は農業生産に詳しい遠野俊雄さんとおっしゃいまして、現地にご同行いただき土地の評価をしていただいてます」


遠野:
「どうも、遠野です。都さんに聞いていた通り、すばらしい土地ですね。日当たりや立地条件は最高ですよ」

金崎:
「なんかあんたもどこかで見たような……」

遠野:
「ただ、ご心配されているように伐採後の山ですから、本来は植林を行わなければならなかったでしょう。ただ、植林されている様子がありませんね」

金崎:
「えっ、そうなのバアちゃん」

祖母:
「ちょっとそのあたりがわからなくてねぇ……」

遠野:
「今はまだ何も連絡がないようですが、いずれ植林をするように行政から指導があると思いますよ。そして植林をしたところで、また木材をとれるまでに10年単位で時間がかかりますし、維持にはずっとお金がかかってしまうんです」

都:
「我々にお譲りいただけるのであれば、もうその心配をする必要はありません。おじいさんもそのほうが喜ぶのではないですか?」


金崎:
「うーん……いいお話に聞こえるけど、その果樹園? も上手くいくんですかねえ。あまりあなた方にメリットがないような気がするんですけど。何かウラがありません?」

都:
「いいえ、とんでもないです。そりゃあ我々が直接農業に携わるわけではないですから、ウラがあるといえばありますね。ただ、先ほどもお話ししたように、まとまった土地でなければできないことがあります。ばらばらの土地をひとまとめにできるのは我々のような会社だけです。金崎さんには我々の事業に投資してほしいというわけではないんです。持て余して困っている土地を有効活用したい、その一心なんです。そのために、土地をお譲りいただきたいということなんですよ」

金崎:
「バアちゃん、どうする?」

祖母:
「じいさんの山はいずれトヨちゃんに相続されるものだけど……それまでお金がかかってもトヨちゃんに迷惑をかけそうだし、手放しましょうかねえ」

金崎:
「バアちゃんがいいなら、いいけど……」

都:
「それでは早速、土地の権利書をご用意いただけますか?」

祖母:
「それはまた来週あたりでもいいですかねぇ。お仏壇でじいさんに報告もしたいしねぇ」

遠野:
「次の事業の為にも、早めにお願いしたいんですが……」

都:
「まあまあ……それでは来週またお伺いいたします。必要な書類はお孫さんにあとでメールを送らせていただきますよ。それでは、失礼致します」




金崎:
「バアちゃん、ほんとによかったの?」

祖母:
「突然やってきて急な話だったけどねえ……。でも、たまたまトヨちゃんがいるときだったからよかったよぉ。ばあちゃんすっきりしたよ」

金崎:
「……それでいいなら、いいか。じゃあ山を買い取ってもらったお金で、バアちゃん家の改装しようよ」

祖母:
「うふふ、それもいいわねぇ……」



遠くから一部始終を見ていた謎の男が……?

???:
「魔界軍の連中、狡い動きしてるじゃねえの……。これは早々に手を打たなきゃなあ」

                            ~つづく~

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