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太陽光パネルのリサイクル技術①
太陽光パネルのリサイクルは、アルミフレームやガラスの分離・選別工程を経て、有用資源が回収されます。
2022年末時点で既に30社以上が太陽光パネルのリサイクルを事業化していますが、各社がそれぞれの技術(リサイクル装置)を導入することで、適切なリサイクルが行われています。
今回は『太陽光パネルのリサイクル技術』について、分離技術の分類とそれぞれの特徴を2回に分けて紹介していきます。
ガラスの剥離方法による分類
太陽光パネルは、発電層とガラスが樹脂で封着された構造であり(関連記事)、ガラス分離方法(剥離方法)で技術の分類ができます。
化学的処理法(Chemical treatment)
熱処理法(Thermal separation)
機械的剥離法(Mechanical separation)
化学的処理法とは、封着に用いられる樹脂(EVAなど)を剥離剤や強酸などの溶液中に浸漬させ、化学的に分離・除去する方法です。
樹脂などの有機物を選択的に除去できるものの、処理に使用する薬品を安全に取り扱うなどの難しさがあります。
熱処理法では、熱分解炉等で太陽光パネルを加熱することで、樹脂をガス化・燃焼させるなどし、ガラスを剥離する方法です。
ガス化した樹脂によるサーマルリサイクルが一部可能なシステムがあるものの、パネル全体の加熱にエネルギーを要します。
機械的剥離法は、物理的な外力(切削、衝撃、せん断、圧力など)を加えることで、ガラスまたはバックシート・セルを除去・分離する方法です。
外力の加え方により多くの方法があり、現時点で製品化されているものの殆どは機械的剥離方法によるものとなります。
なお本方式では、剥離を促進させるためにEVAの加熱軟化を併用する場合もあります。
※分類や用語に関しては定義がある訳ではなく、一般的な用語にて便宜的に記載しています。
環境省報告書による処理技術の分類
環境省の報告書『使用済太陽電池モジュールのリサイクル等の推進に係る調査業務』には、下表の分類で調査がされています。
![](https://assets.st-note.com/img/1671941047745-dLfLY5Yk2W.png?width=1200)
化学的処理法
化学的処理法は、封着材(EVAなど)やバックシートが樹脂であることから、工業用途で一般に使用されている剥離剤や強酸などの溶液中に浸漬させ、樹脂を化学的に除去する方法です。
樹脂などの有機物を選択的に除去できることから、ガラスを破砕することなく分離することができる一方で、処理にともなう溶剤の希釈や薬品を扱う難しさなどが特徴として挙げられます。
本方式はNEDOによる技術開発やパネルメーカーなどで研究開発が古くからが進められていますが、実際にリサイクル設備としては導入されていない様です。
材料を高純度で回収できる可能性があることから、国内の大手商社がフランスの企業と提携し、国内でリサイクルを事業化する計画も予定されています。
熱処理法
熱処理法では、燃焼ガスや電気加熱等により、EVAやバックシートなどの樹脂を高温で熱分解・燃焼させます。
気化したガスは回収することで再度熱源として利用する方法もありますが、いずれにしてもパネルを加熱するためエネルギーが必要になります。
NEDOによる技術開発も進められており、一部は既に事業化されているものもあります。
樹脂を高温で熱分解・油化する技術は既に廃プラのリサイクルでも行われており、太陽光パネルのリサイクルへの応用として研究開発段階の事例もあります。
機械的剥離法
機械的剥離法は、現在もっとも普及が進んでいるガラス剥離技術になります。
産業廃棄物のリサイクルとして従来技術の応用や、太陽光パネルに特化した技術など装置メーカーにより様々な技術があります。
また装置・システムの導入費用や、運転・操作性の容易さなど、異業種からの参入も比較的しやすいことも特徴といえます。
湿式比重選別法
湿式比重選別法は、太陽光パネルをシュレッダー等で破砕し、ふるい機等で処理後に、比重差を利用して選別が行われます。
![](https://assets.st-note.com/img/1671943308292-sQwPT25nJB.png?width=1200)
既存の設備や技術が利用でき大量の処理にも対応できると考えられる一方で、太陽光パネルのリサイクル専用機としては導入規模が大きくなり、現在導入を進めている企業は多くないようです。
ブラシ剥離法
ブラシ剥離法は、太陽光パネルのカバーガラスからバックシートや発電セルを特殊なブラシで剥離します。
パネルセパレーター
CIS系太陽光パネルの構造的な特徴としてカバーガラスと基板ガラスに挟まれた合わせガラス構造になっており、合わせガラス構造の太陽光パネルを対象としたリサイクル技術開発がNEDOにより行われています。
![](https://assets.st-note.com/img/1671944331074-7nOVSz4yOL.png)
なお、これらの機械的剥離方法については、自社で処理をするためにリサイクル技術として導入または技術開発されているものであり、装置・システムとしては販売されていない様です。(2022年12月時点、PVリサイクル.com調べ)
まとめ
太陽光パネルのリサイクルは、主にガラスを剥離する方法で『化学的・熱的・機械的』の3種類に大別できます。
太陽光パネルのリサイクル技術に関しては古くから技術開発が進められてきましたが、装置の導入コスト、施設運用・装置運転の容易さなどから現在では主に機械的剥離法の普及が進んでいます。
次回は実際に普及が進んでいる機械的剥離法による装置とアルミ枠の分離装置を紹介します。
その他の太陽光パネルのリサイクルに関する各種情報やニュースが、こちらからご覧いただけます。
![](https://assets.st-note.com/img/1671940329856-bd7EwWnVfh.png?width=1200)
参考資料
メーカー各社資料
PVリサイクル.com:リサイクル技術の分類①
PVリサイクル.com:リサイクル技術の分類②
PVリサイクル.com:国内特許出願から見る太陽光パネルのリサイクル技術の動向