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Scope3排出量削減、企業が取り組むべき対策と注意点

~J-クレジットの活用も含めて徹底解説~

脱炭素社会の実現に向けて、企業にはバリューチェーン全体での温室効果ガス(GHG)排出量削減が求められています。中でも、排出量の大部分を占めるScope3排出量の削減は、多くの企業にとって大きな課題です。
ここでは、Scope3排出量削減に取り組む上での対策、注意点に加え、J-クレジットの活用方法についても詳しく解説します。

Scope3排出量とは?改めて確認

Scope3排出量は、自社以外の事業活動に関連する間接排出量です。具体的には、以下のようなカテゴリーが含まれます。

  • 購入した製品・サービス 原材料、部品、オフィス用品など

  • 資本財 建物、機械設備など

  • 輸送、配送(上流・下流) 原材料の輸送、製品の配送など

  • 廃棄物 事業活動から発生する廃棄物処理

  • 出張 従業員の出張に伴う移動

  • 雇用者の通勤 従業員の通勤に伴う移動

  • リース資産(上流・下流) 自社がリースしている、または他社にリースしている資産

  • フランチャイズ フランチャイズ事業における排出

  • 投資 投資先企業の排出

Scope3排出量削減のための対策 具体的な方法

Scope3排出量削減には、サプライチェーン全体での取り組みが不可欠です。主な対策を具体例とともにご紹介します。

  1. サプライヤーとの連携強化(サプライヤーエンゲージメント)

    • サプライヤーへのGHG排出量算定・報告の要請
      サプライヤーにCO2排出量の算定方法や報告様式を伝え、協力を要請します。

    • サプライヤーへの削減目標設定支援
      サプライヤーの状況に合わせて、無理のない範囲で削減目標を設定できるよう支援します。

    • 共同での削減プロジェクト実施
      省エネ設備の共同導入や再生可能エネルギーへの転換などを共同で実施することで、削減効果を高めます。

    • 環境負荷の低いサプライヤーの優先選定
      環境認証を取得している企業や、積極的な環境対策を実施している企業を優先的に選定する基準を設けます。

  2. 調達の見直し

    • 再生材やリサイクル材の使用
      製品の原材料を再生材やリサイクル材に切り替えることで、資源消費と排出量を削減します。

    • 輸送距離の短い地域からの調達(地産地消)
      地元産の原材料を積極的に使用することで、輸送に伴う排出量を削減します。

  3. 物流の見直し

    • 輸送方法の効率化(モーダルシフト)
      トラック輸送から鉄道や船舶輸送への転換を進めます。

    • 配送ルートの最適化
      AIなどを活用した最適な配送ルートを選定することで、走行距離と排出量を削減します。

    • 積載効率の向上
      荷物の積み方を工夫し、一度に運べる量を増やすことで、輸送回数を減らし、排出量を削減します。

  4. 製品・サービスにおける取り組み

    • 省エネ性能の高い製品開発
      省エネ家電や燃費の良い自動車など、使用時のエネルギー消費を抑える製品を開発します。

    • 製品の長寿命化・リサイクル性を考慮した設計(サーキュラーエコノミー)
      製品の耐久性を高め、部品の交換や修理を容易にすることで、製品寿命を延ばし、廃棄物を削減します。また、リサイクルしやすい素材を選定し、資源の循環利用を促進します。

    • オンラインサービスの活用による移動削減
      会議や研修などをオンラインで行うことで、移動に伴う排出量を削減します。

    • ペーパーレス化
      書類や資料を電子化することで、紙の使用量を削減し、資源消費と廃棄物を削減します。

  5. 社内活動の推進

    • 従業員の意識向上
      環境に関する研修やイベントなどを実施し、従業員の環境意識を高めます。

    • 環境配慮行動を促進する社内制度の整備
      省エネ行動に対するインセンティブ制度や、環境配慮製品の優先購入制度などを導入します。

  6. 算定方法の精緻化

    • 活動量と排出原単位の精緻な把握
      より詳細なデータに基づいた算定を行うことで、排出量の把握精度を高めます。

  7. 新たな技術・イノベーションの活用:

    • 脱炭素技術(水素エネルギー、CCUSなど)の導入
      水素エネルギーの活用や、CO2を回収・貯留する技術(CCUS)の導入を検討します。

    • デジタル技術(IoT、AIなど)の活用
      IoTセンサーを用いたエネルギー使用量の可視化や、AIによるエネルギー最適制御などを導入します。

Scope3排出量対策における注意点 見落としがちなポイント

  • データの信頼性
    サプライヤーから提供されるデータの品質管理が重要です。データの算出根拠や方法を確認し、必要に応じて第三者機関による検証を依頼することも検討します。

  • 網羅性と重要性
    全てのカテゴリーを網羅的に把握することは理想ですが、まずは排出量の多いカテゴリーや、自社にとって重要なカテゴリーに焦点を当て、優先順位をつけて取り組むことが現実的です。

  • 排出原単位の選定: 適切な排出原単位を選定することは、算定精度を高める上で非常に重要です。最新の排出原単位データを使用し、必要に応じて自社独自の排出原単位を算出することも検討します。

  • 情報開示の透明性
    取り組み状況や成果を適切に開示することで、ステークホルダーからの信頼を得られます。具体的な目標値や進捗状況、課題などを明確に開示することが重要です。

J-クレジットの活用 排出削減努力を加速する手段

J-クレジットは、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用などによるCO2排出削減量や、森林管理によるCO2吸収量を国が認証する制度です。Scope3排出量削減において、J-クレジットは以下のような役割を果たします。

  • 目標達成の補完
    自社の努力だけでは目標達成が難しい場合に、J-クレジットを購入することで、排出量を相殺し、目標達成に近づけます。

  • サプライチェーン全体の削減促進
    サプライヤーが創出したJ-クレジットを購入することで、サプライチェーン全体の排出削減を間接的に支援します。

  • カーボンオフセット商品の提供
    J-クレジットを活用したカーボンオフセット商品やサービスを提供することで、顧客の環境意識に応え、新たなビジネスチャンスを創出します。

J-クレジット活用の注意点 適切な活用のために

  • 排出削減努力が大前提
    J-クレジットは、あくまで自社の排出削減努力を補完する手段です。クレジット購入に偏ることなく、自社の排出削減努力を最大限に行うことが最も重要です。

  • クレジットの品質を見極める
    J-クレジットには様々な種類があり、プロジェクトの内容や認証機関によって品質が異なります。信頼性の高いクレジットを選ぶことが重要です。

  • グリーンウォッシュに注意
     
    J-クレジット購入のみを強調し、自社の排出削減努力を十分に説明しない場合、グリーンウォッシュとみなされる可能性があります。自社の取り組みとクレジット活用をバランス良く情報開示することが重要です。

  • 長期的な視点を持つ
    J-クレジットは一時的な対策ではなく、長期的な脱炭素戦略の中で位置づけるべきです。将来的なクレジット価格の変動リスクなども考慮し、戦略的に活用していくことが求められます。

持続可能な未来のために

Scope3排出量削減は、企業にとって重要な経営課題です。サプライチェーン全体での連携を強化し、継続的な取り組みを進めることで、脱炭素社会への貢献と企業の持続的な成長の両立を目指しましょう。J-クレジットは、適切な活用によって排出削減努力を加速する有効な手段となりますが、自社の排出削減努力を最大限に行うことが最も重要であることを忘れてはなりません。

J-クレジットの導入や活用方法について具体的な情報をお求めの方は、お気軽にお問い合わせください。

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