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自然エネルギー財団が「ペロブスカイト太陽電池に高まる期待」という報告書を発表

2024年9月、公益財団法人 自然エネルギー財団が発表した「ペロブスカイト太陽電池に高まる期待:軽量化が進展、窓・壁面一体型も」という報告書が注目を集めています。
これは、次世代型太陽電池であるペロブスカイトに関する技術的進展と、その応用可能性に焦点を当てた報告です。以下が報告書概要です。


1. ペロブスカイト太陽電池の技術的特徴

ペロブスカイト太陽電池は、非常に小さな結晶構造を持つ材料で、軽量かつ薄型であることが最大の特徴です。この特性により、これまでシリコン系太陽電池では設置が困難だった場所、特に耐荷重が低い建物の屋根や壁面への導入が可能となります。ペロブスカイト太陽電池は、変換効率の向上も著しく、2012年には10%台だったものが、2024年には26%にまで向上しています。このスピードは、シリコン系太陽電池が同程度の効率に達するまでに50年を要したことを考えると、非常に早い進展です。

また、フィルム状に製造することで軽く、曲面や壁面にも容易に設置できるため、従来の太陽電池の限界を超えた新しい用途が期待されています。

2. シリコンパネルとの比較

ペロブスカイト太陽電池は、シリコンパネルに比べて重量や厚さ、材料使用量で圧倒的な優位性があります。ペロブスカイトは1㎡あたりの重量が1〜2kgと軽く、設置の自由度が非常に高いため、従来のシリコンパネルが設置できなかった建物にも導入が可能です。また、発電効率もシリコンパネルに匹敵するレベルに達しており、低照度下でも発電できるため、室内の光で発電する技術の可能性も広がっています。

ただし、耐久性やコスト面では課題が残っており、特に耐久年数が現時点では10年程度に留まるため、今後の技術革新が必要とされています。

3. 軽量化と多用途化する太陽光発電

ペロブスカイト太陽電池の軽量化により、曲面や耐荷重の低い屋根、壁面への導入が進んでいます。さらに、BIPV(建材一体型太陽光発電)として、建物の窓や壁と一体化する形で設置することも可能です。これにより、屋上スペースが限られる商業ビルや集合住宅などにも、太陽光発電を導入する道が広がりました。

また、欧米や中国では、ペロブスカイトとシリコンを組み合わせたタンデム型の開発が進んでおり、発電効率30%を超える製品が期待されています。この技術は、既存のメガソーラー施設の効率向上にも寄与する可能性があります。

4. 国内外の導入事例

日本国内でも、ペロブスカイト太陽電池を導入する事例が増えてきています。耐荷重が低い折板屋根や工場の壁面、タンクのような曲面、さらには学校のプールに浮かべる水上設置など、多様な場所での実証実験が進んでいます。また、インフラ施設への導入も進んでおり、災害時に通信を確保するための基地局に巻き付ける形での設置も行われています。

一方、BIPVに関しては、商業ビルや公共施設などへの導入が進められており、建材一体型の太陽光発電システムが建築物のZEB(ゼロ・エネルギー・ビルディング)化に貢献しています。

5. 課題と今後の展望

ペロブスカイト太陽電池には大きな可能性があるものの、耐久性や発電コストの面での課題は依然として残されています。特に2030年代に向けての本格的な普及には、技術革新とともに、経済的支援や設置義務化などの政策的な支援が不可欠です。

報告書では、韓国やフランスの事例を紹介し、日本でもBIPVやペロブスカイトの普及を進めるために、政府や自治体、大手企業による支援が求められています。東京都や川崎市では、屋根上太陽光の設置義務化が進められており、補助金制度によって設置コストの軽減が図られています。今後、日本全体でこのような取り組みが拡大していくことが期待されています。

結論

ペロブスカイト太陽電池は、次世代型の太陽光発電技術として多くの可能性を秘めていますが、技術的な課題を克服するためには、引き続き技術革新と政策的な支援が必要です。政府や自治体、企業が協力し、新しい太陽光発電技術を積極的に導入していくことで、日本のエネルギー政策や温暖化対策に大きな貢献を果たすことが期待されます。

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自然エネルギー財団
「ペロブスカイト太陽電池に高まる期待軽量化が進展、 窓・壁面一体型も」
https://www.renewable-ei.org/activities/reports/20240904_perovskite.php

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