見出し画像

危機に強い経済の構築は、エネルギーと食料の自給率向上が鍵

現代社会において、国家の安全保障は単に軍事力や外交政策に依存するものではありません。私たちが直面している数々の世界的な危機、例えば気候変動、パンデミック、紛争、さらにはサプライチェーンの混乱などに対応するためには、より強固で柔軟な経済基盤を持つことが求められます。特に、エネルギーと食料の自給率を向上させることは、国家の安定と持続可能な発展を確保するための最大の安全保障手段です。

エネルギー・食料の自給率を上げることの重要性や、その具体的な方策について考察し、「危機に強い経済」を構築するために必要な視点と戦略を提案します。


1. エネルギー自給率向上の重要性

エネルギーは、現代の生活や産業において不可欠な基盤です。しかし、日本はエネルギー資源に乏しい国であり、多くのエネルギーを輸入に依存しています。輸入エネルギーの価格が変動したり、国際的な紛争や供給ルートの遮断が発生すれば、日本国内の経済や日常生活に大きな影響を及ぼすことは明らかです。

エネルギー自給率の向上は、次のような側面から特に重要です。

1.1 エネルギー安全保障の確立

日本は電力の多くを化石燃料、特に石油や天然ガスに依存していますが、これらの資源は主に中東やロシアなどの不安定な地域から輸入されています。こうした輸入依存を減らし、再生可能エネルギーや原子力を効果的に活用することで、エネルギー供給の安定性を高め、予期せぬ価格変動や供給途絶に対して強い国を作り上げることができます。

1.2 再生可能エネルギーの拡大

エネルギー自給率を上げるための鍵となるのが、再生可能エネルギーの活用です。太陽光、風力、地熱、バイオマスなど、自然の力を利用した発電は、無尽蔵でクリーンなエネルギー源となります。これらのエネルギー資源を効果的に開発し、全国でのインフラ整備を進めることで、エネルギー自給率は飛躍的に向上します。

1.3 次世代原子力技術の推進

エネルギー安全保障をさらに強化するためには、原子力発電の安全性を高めつつ、その活用を進めることが不可欠です。特に、次世代型の革新炉や核融合技術の研究開発を進めることは、長期的に安定したエネルギー供給を実現するための重要な方策です。現時点では技術的な課題が残るものの、持続可能で安定したエネルギー供給源としての期待が高まっています。

2. 食料自給率向上の意義

エネルギーと並んで、食料の自給率もまた、国家の安定に不可欠な要素です。食料自給率が低い国は、食糧供給の問題が生じた際に、食糧危機に直面するリスクが高くなります。日本の食料自給率は現在約37%(カロリーベース)であり、先進国の中でも極めて低い水準にあります。この数字を上げるためには、農業政策の見直しや技術革新が求められます。

2.1 国内農業の振興

食料自給率を高めるためには、まず国内農業の振興が重要です。農業生産者に対する支援策や、農地の有効利用、農業従事者の育成など、持続可能な農業を発展させるための取り組みが不可欠です。また、都市部でも小規模な農業や家庭菜園の普及を進めることで、地域ごとの食料自給力を向上させることができます。

2.2 持続可能な農業技術の導入

食料自給率を向上させるためには、持続可能な農業技術の導入が必要です。たとえば、スマート農業と呼ばれる、ドローンやAI、IoTなどの先進技術を活用した効率的な農業生産システムを導入することで、少ない資源で多くの作物を生産できるようになります。これにより、国内生産の増加と食料の安定供給が実現します。

2.3 食文化の見直し

日本では、食の多様化により輸入食材が多く消費されていますが、これは食料自給率の低下に繋がっています。地元で生産された農作物や魚介類を積極的に消費する「地産地消」の考え方を推進することも、食料自給率を向上させるための重要な取り組みです。これにより、輸入に依存しない、持続可能な食生活を実現できます。

3. 危機に強い経済をつくるための政策提言

危機に強い経済を構築するためには、エネルギーと食料の自給率向上が中心的な課題となりますが、それに加えていくつかの具体的な政策が必要です。

3.1 産業の多様化とイノベーションの推進

経済の多様性を高めることは、外部ショックに対する耐性を強化するために重要です。特定の産業に過度に依存する経済は、危機に直面した際に大きなリスクを伴います。特に、デジタル技術やグリーンエネルギーに関連する新しい産業分野を育成し、持続可能な経済成長を実現することが必要です。

3.2 労働力の柔軟な移動と人材育成

経済の強靭性を高めるためには、労働市場の柔軟性を確保し、人材育成を進めることも重要です。特に、AIやロボット技術の発展に伴い、新しいスキルが求められる時代において、再教育や技能訓練の機会を提供することで、労働者が常に時代の変化に対応できるような体制を整備する必要があります。

3.3 インフラの強化

災害に強いインフラの整備もまた、危機に強い経済を築くための基盤です。気候変動による自然災害のリスクが高まる中、交通、通信、エネルギー供給網などのインフラを強化し、災害時にも機能を維持できる体制を整えることが求められます。

まとめ

「危機に強い経済」を構築するためには、エネルギー・食料の自給率を向上させることが最大の安全保障であることは明白です。これに加え、多様な産業の育成や人材育成、インフラの強化など、総合的な政策が必要です。これらの取り組みを進めることで、国際的なリスクに対する耐性を高め、持続可能な成長を実現することができるでしょう。

日本が直面する課題は多岐にわたりますが、一つ一つの取り組みが未来の安全と繁栄に繋がります。今こそ、危機に強い経済を築き、未来に向けた確かな一歩を踏み出す時です。

経団連「石破氏の豊富な経験に期待」 -
日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO83753170X20C24A9EA4000/

#エネルギー自給率 #食料自給率 #経済安全保障 #持続可能な経済 #危機管理


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?