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「排出量取引制度」に関する議論がスタート!2026年度に本格導入予定

政府は2026年度に本格的に導入する予定の「排出量取引制度」の制度設計に関する議論を正式に開始しました。この制度は、特定の大企業に対してCO2排出量の削減義務を課し、市場で排出枠を取引する仕組みです。排出量取引制度は、温暖化対策の重要な柱の一つとして期待されており、日本国内の脱炭素化に向けた大きなステップとなります。以下に、この制度の概要と議論のポイントについて詳しく説明します。


排出量取引制度とは?

排出量取引制度は、企業が二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを排出する際、一定の枠(排出枠)を持たなければならない仕組みです。この枠を超えた排出を行う企業は、他の企業から排出枠を購入し、逆に自社の排出枠を使い切らなかった企業は、余剰分を売ることができます。これにより、企業全体の排出量を抑制し、温暖化対策を促進することを目指しています。

政府の対応と議論の開始

2023年9月3日、政府は本格的な排出量取引制度の導入に向けた議論を開始しました。制度設計の議論を進めるため、内閣官房は「GX実現に向けたカーボンプライシング専門ワーキンググループ」を立ち上げ、その初回会合が行われました。東大の大橋弘教授を座長とする専門家9人で構成されるこのグループは、環境経済学やエネルギー問題に精通した専門家によるアドバイスを基に、具体的な制度設計を進めていきます。

炭素価格の上限と下限設定

政府が議論している排出量取引制度では、炭素価格に上限と下限を設けることが検討されています。炭素価格の上限を設けることで、企業への過度な負担を避ける一方、下限を設定することで、排出削減の効果が失われないようにします。この仕組みによって、炭素価格の過度な変動を防ぎ、企業が予見可能な価格で排出枠を取引できるようにする狙いがあります。

欧州連合(EU)では、すでに2005年から排出量取引制度を運用しており、過去にはリーマン・ショックの影響で炭素価格が大幅に下落し、温暖化対策としての効果が減少した経験があります。この教訓を踏まえ、日本政府は炭素価格の上昇や下降に一定の制約を設けることを検討しています。

業界からの懸念と意見

特に排出量の多い業界、例えば鉄鋼や石油業界などからは、炭素価格が極端に高騰すると輸出競争力が失われる懸念が示されています。鉄鋼業界を代表する日本鉄鋼連盟は、排出枠の購入が経営に圧迫を与え、排出削減のための投資が阻害される可能性についても懸念を表明しました。

また、政府が掲げる「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」という目標と整合する制度設計が求められています。専門家からは、中長期的な目標を見据えた制度設計が重要であるとの意見も出されました。特に、現時点で大幅な削減が難しい業界もあるため、脱炭素への円滑な移行を図るための柔軟なアプローチが必要とされています。

制度の導入スケジュール

政府は年内にも制度の大枠を固め、2025年の通常国会に関連法の改正案を提出する予定です。2026年度からはこの制度が本格的に稼働し、2033年度からは発電事業者に対して排出枠を政府から購入する「有償オークション」を導入する計画です。

また、排出量取引制度に参加しない企業にも排出削減を促すため、2028年度からは化石燃料の輸入事業者などに対し、CO2の排出量に応じた賦課金が導入される予定です。この賦課金は、排出削減に向けたさらなるインセンティブを与えるものです。

排出削減目標の客観性を確保するための取り組み

排出量取引制度を効果的に運用するためには、企業が設定する排出削減目標や実績が正確であり、客観性が保たれる必要があります。これを実現するために、政府は第三者機関が企業の目標を認証する制度を導入する方針です。これにより、企業間での公平性が確保され、制度への信頼性が向上することが期待されています。

国際的な背景と日本の対応

世界では、EUや韓国、中国などがすでに排出量取引制度を導入しており、これにより各国は温暖化ガスの削減を進めています。日本も国際的な温暖化対策の潮流に対応する形で、50年までに温暖化ガスの実質排出ゼロを達成するために、排出量取引制度を導入します。

ただし、国内の経済界からはこれまで排出量取引制度に対して慎重な姿勢が見られていました。これは、制度が企業に与える負担や国際競争力への影響が懸念されているためです。しかし、温暖化対策の観点からは、企業が排出削減に向けた努力を進めるための制度設計が不可欠です。企業がこの制度を活用し、効率的かつ公平に排出削減を進めるための支援策も議論されるでしょう。

温暖化対策としての排出量取引制度に注目

排出量取引制度は、温暖化ガス排出削減を進めるための重要な政策手段です。日本政府は2026年度の本格導入を目指し、制度の詳細を詰めている段階ですが、企業負担と温暖化対策の効果を両立させるためのバランスが重要です。また、EUなどの国際的な事例を参考にしながら、制度の実効性を高める工夫が求められています。

この制度の導入は、日本の脱炭素化に向けた大きな一歩となり、企業も積極的に参加し、環境保護と経済成長の両立を図ることが期待されます。今後の議論と制度設計の進展に注目が集まります。

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排出量取引、炭素価格に下限 政府方針 - 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO83224260T00C24A9EP0000/


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