大阪ガスと三菱重工、環境価値を証書で取引する新システム「CO2NNEX」を万博で実用化
2024年9月25日、大阪ガス株式会社と三菱重工業株式会社は、二酸化炭素(CO2)の排出をゼロに近づける画期的なシステムを、2025年開催予定の大阪・関西万博で実用化することを発表しました。
このシステムは、都市ガス業界初のデジタルプラットフォーム「CO2NNEX(コネックス)」を活用し、e-メタンやバイオガスなどの環境価値を証書化して取引するものです。この取り組みは、クリーンなガスの普及を加速させ、カーボンニュートラル社会の実現に向けた大きな一歩となります。
CO2NNEXとは?
CO2NNEXは、大阪ガスと三菱重工が共同で開発したデジタルプラットフォームで、二酸化炭素の流通を可視化し、環境価値の管理や取引を行うシステムです。特に、e-メタンと呼ばれる再生可能エネルギー由来の合成メタンの管理や、バイオガスなどのクリーンガスの環境価値を証書化し、それを取引・移転する機能を持っています。このシステムを活用することで、環境価値が確保されたガスの利用が促進され、カーボンニュートラルに向けた社会的な取り組みが進むと期待されています。
e-メタンとは?
e-メタンとは、再生可能エネルギーを利用して作られる合成メタンのことです。製造過程で使用される二酸化炭素をリサイクルするため、e-メタンを使用しても実質的にCO2の排出は増加しません。このため、e-メタンは「CO2ゼロ」または「カーボンニュートラル」な燃料と見なされ、脱炭素化を進める上で非常に重要な役割を果たしています。
クリーンガス証書とその取引の仕組み
2024年4月から、e-メタンやバイオガスなどの環境価値を証書化する「クリーンガス証書」の運用が開始されました。この証書は、CO2の排出を抑えたガスの環境価値を証明するもので、電力業界での非化石証書に似た仕組みをガス業界にも導入したものです。この証書をデジタルプラットフォーム「CO2NNEX」で管理・取引することで、環境価値を適切に移転し、CO2排出の削減を実現します。
大阪・関西万博での実用化
大阪・関西万博の会場内では、e-メタンやバイオガスなど、環境に優しいクリーンガスが供給される予定です。例えば、会場内で製造されるe-メタンや、環境価値が証書化された天然ガスが、迎賓館などの施設で使用されます。このシステムを活用することで、万博の会場全体でCO2排出をゼロにすることを目指します。さらに、日本全国の都市ガス事業者が製造したe-メタンやバイオガスの環境価値を、万博会場に供給される天然ガスに割り当てることで、持続可能なエネルギー供給の実証を行います。
2030年に向けた展望
大阪ガスは、2030年までに都市ガスの1%をe-メタンに置き換える目標を掲げています。この目標を達成するためには、e-メタンやその環境価値の取引量が大幅に増加すると予測されており、「CO2NNEX」のようなプラットフォームが重要な役割を果たします。さらに、今後はe-メタン以外にも、e-fuel(合成燃料)やSAF(持続可能な航空燃料)、**グリーンLPG(液化石油ガス)**などのカーボンリサイクル燃料にもこのシステムを適用していく計画です。
このような取り組みは、日本国内だけでなく、アジア諸国など他の地域にも拡大し、e-メタンやSAFの導入を促進することが期待されています。
CO2NNEXの技術的な意義と将来性
「CO2NNEX」は、e-メタンなどのカーボンリサイクル燃料の普及を支えるだけでなく、二酸化炭素の回収・再利用(CCU)や貯留(CCS)の技術とも連携し、CO2の流通管理をデジタルで行うことができるシステムです。この技術は、カーボンニュートラル社会を実現するための重要な要素であり、将来的にはさらに多くの産業や国々に導入されることが期待されています。
具体的には、製造されるe-メタンの属性データ(製造量、使用されたCO2や水素の量など)を管理し、そのデータを基に環境価値を取引・移転できる仕組みを提供します。これにより、CO2の排出削減や環境価値の透明性が高まり、企業や国がより効率的にカーボンニュートラルを達成できるようになります。
e-メタンの製造と社会実装に向けた実証実験
現在、大阪ガスや三菱重工、日本IBMなどの企業が協力し、e-メタンの製造と利用を実証するためのプロジェクトが進行中です。このプロジェクトでは、再生可能エネルギー由来の水素と生ゴミ由来のバイオガスを活用してe-メタンを製造し、都市部での水素供給モデルを構築しています。この取り組みは、環境省の補助を受けて進められており、将来的には大規模な社会実装を目指しています。
万博を通じて広がるカーボンニュートラル社会への道
2025年の大阪・関西万博で実用化される「CO2NNEX」は、カーボンニュートラル社会の実現に向けた革新的なステップです。このシステムを活用することで、e-メタンやバイオガスなどの環境価値を適切に取引・移転し、CO2排出を実質ゼロにすることが可能になります。
また、2030年に向けた都市ガスのe-メタン導入目標により、日本だけでなく世界全体での持続可能なエネルギー利用が促進されるでしょう。大阪ガスと三菱重工は、「CO2NNEX」の商用化を通じて、未来のカーボンニュートラル社会に大きく貢献していくことを目指しています。
大ガス、環境価値を証書で取引
日本経済新聞 https://www.nikkei.com/nkd/company/article/?DisplayType=1&ng=DGKKZO83678590V20C24A9LKB000&scode=9532
#日経会社情報 #CO2NNEX #カーボンニュートラル #eメタン #大阪関西万博 #クリーンガス証書
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?