【詳細解説】2023年度の太陽光発電市場の変化とPPAモデルの成長
太陽光発電市場は近年大きな変化を遂げており、特に2023年度はその転換期ともいえる年となりました。国内における太陽光発電の導入量が減少する一方、PPA(Power Purchase Agreement)モデルが大きく成長しています。本記事では、2023年度の太陽光発電市場の動向やPPAモデルの特徴、さらに今後の展望や課題について詳しく解説します。
2023年度の太陽光発電導入量は、大幅な減少
矢野経済研究所の調査によると、2023年度の国内太陽光発電導入容量は5040MW(ACベース)と、前年度の5823MWから大幅に減少しました。これは、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)による導入が縮小したためです。特に事業用太陽光発電設備の減少が顕著で、入札制度や売電価格の低下が影響しています。
また、低圧区分では、2020年度以降、自家消費型の要件が導入されたことにより、発電量の少なくとも30%を自家消費しなければならないという条件が課され、認定容量が減少しています。これにより、FIT制度による太陽光発電設備の導入は引き続き縮小していくと予測されています。
FIT制度に依存しない新しい選択肢は、PPAモデルの拡大
FIT制度に依存しない太陽光発電の導入手段として注目されているのがPPAモデルです。PPAモデルとは、発電事業者が需要家(電力を利用する企業など)と長期契約を結び、発電した電力を直接供給する仕組みです。特に「オンサイトPPA」と「オフサイトPPA」が普及しており、2023年度にはこれらのモデルが大きな成長を見せています。
オンサイトPPAの成長
オンサイトPPAは、発電施設を需要家の敷地内に設置し、そこで発電された電力を直接供給するモデルです。このモデルは、脱炭素化の潮流や電力価格の高騰を背景に導入が進んでいます。2023年度の非住宅分野におけるオンサイトPPAの導入容量は870MWに達し、全体の17.3%を占めるまでに拡大しています。
オフサイトPPAの成長
オフサイトPPAは、需要家の敷地外で発電された電力を供給するモデルで、特に発電施設を自社で所有できない企業や組織に適しています。2023年度には、オフサイトPPAの導入容量が445MW(非住宅分野全体の8.8%)に達すると見込まれています。これは、環境価値を重視する企業が増え、再生可能エネルギーの活用に積極的になっていることが要因です。
2030年度に向けた太陽光発電市場の展望
国内の太陽光発電市場は、今後もPPAモデルを中心に成長すると予測されています。矢野経済研究所の調査によると、2030年度の太陽光発電導入容量は6049MW(ACベース)に達すると見込まれています。特にオフサイトPPAの導入が急速に進むとされ、2026年度にはオンサイトPPAの導入量を上回ると予測されています。
一方で、FIT制度による導入容量は今後も縮小し、2030年度には850MW(全体の14.1%)にとどまると見られています。これは、再生可能エネルギー政策がPPAモデルなどの市場主導型の形態にシフトしていることを反映しています。
オフサイトPPAの収益性と課題
太陽光発電協会(JPEA)とEPIコンサルティングの共同調査によると、オフサイトPPAは発電事業者、小売事業者、需要家にそれぞれメリットをもたらす収益性の高いモデルであることが明らかになっています。
収益性の分析
2023年1月に運開されたオフサイトPPA案件では、高圧需要家向けの太陽光発電コストは10.5円/kWhですが、補助金適用後の発電コストは7.0円/kWhに低下します。発電事業者から小売事業者への売電単価は10.9円/kWhで、発電事業者は2.9円/kWhのマージンを確保しています。また、小売事業者から需要家への小売単価は21.6円/kWhで、需要家は旧電力会社の標準電気料金(25.5円/kWh)と比較して3.9円/kWhのコストメリットを得ています。
しかし、2023年10月に運開された案件では、電気料金の低下により、補助金なしではコストメリットが小さくなるケースも見られています。このため、今後は環境価値の重要性が増すと考えられています。
課題と提言
オフサイトPPAの普及に向けて、JPEAとEPIコンサルティングは以下の課題を指摘しています。
需要家のマッチングの困難さ 複数の需要家をマッチングするためのプラットフォーム構築が必要です。
再エネ供給の制約 太陽光発電のみではすべての時間帯に再エネ供給ができないため、蓄電池や風力発電の併用が求められています。
テナントの課題 テナントが小売事業者を自由に変更できない場合、オフサイトPPAの採用が難しくなることがあります。
これらの課題を克服することで、オフサイトPPAの普及がさらに加速すると見込まれています。
需要家がオフサイトPPAに参画する理由
需要家がオフサイトPPAに参画する理由としては、再エネ発電設備を自社敷地内に設置するスペースがない場合や、電気料金の安定化を求める声が挙げられています。特に、電力価格の変動リスクを回避できる点が大きな魅力となっています。
さらに、需要家は環境価値の高い再生可能エネルギーを採用することで、企業の持続可能性や脱炭素目標の達成を目指す傾向が強まっています。アンケート調査によると、自己所有の再エネ設備に次いで、PPAモデルを活用した再エネ調達の優先度が高く評価されています。
今後の太陽光発電市場の動向とPPAモデルの普及見込み
PPAモデル、とりわけオフサイトPPAは、再生可能エネルギーの導入手段として今後さらに成長が期待されています。政府が掲げる太陽光発電コスト目標(2030年に7.0円/kWh)を達成すれば、燃料価格の低下が起こらない限り、補助金なしでもオフサイトPPAが普及する可能性が高いとされています。
ただし、課題を解決するためには、需要家のマッチングを容易にするプラットフォームの構築や、蓄電池や風力発電との併用など、さらなる技術的・制度的な取り組みが必要です。これにより、再エネの安定供給が実現し、太陽光発電のさらなる普及が期待されています。
太陽光発電はこれからも持続可能なエネルギーとして注目され続けるでしょうが、PPAモデルの進展がその成長を大きく左右することになりそうです。今後も、再生可能エネルギー市場の動向を注視していきましょう。
国内の太陽光のPPAモデル市場、2040年度までに10倍以上に成長の見通し
スマートジャパン
https://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/2404/10/news036.html
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