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政府が示す「太陽光発電の新政策」 投資回収短縮で再生可能エネルギー拡大へ


2024年11月10日、経済産業省は太陽光発電の事業者向け固定価格買い取り制度(FIT)の改正を検討していると報じられました。この改正内容は、事業者向けの屋根置き太陽光発電について買い取り価格を大幅に引き上げ、給付期間を短縮するというものです。再生可能エネルギーの急速な導入が求められる中で、この新政策をチャンスと捉えるべきかどうか、深掘りしてみましょう。

政策改正の概要:買い取り価格の3倍増と給付期間の短縮

今回、経産省が発表した改正案では、事業者が建物の屋根に設置する太陽光発電の買い取り価格を現行の1キロワット時あたり12円から約3倍に引き上げるとしています。同時に、給付期間を現行の20年から5年程度に短縮し、短期的に投資回収が可能な仕組みに転換する計画です。

現状では、太陽光発電の投資回収には15年前後かかるとされ、金融機関も10年以上の回収計画に対する融資を厳しく見ています。こうした現状に対し、給付期間の短縮による迅速な投資回収を実現することで、事業者が参入しやすくなることが期待されています。

屋根置き太陽光発電を限定した意図

今回の制度改正は、建物の屋根に設置する太陽光発電に限られています。日本では山間部での太陽光発電開発により、防災上や景観上の問題が発生していることから、建物の屋根を活用した設置が再生可能エネルギー普及の鍵とされています。また、都市部では空き地が少なく、屋根置き設置が推奨される背景があります。これにより、景観や土地利用の制約を回避しながら、太陽光発電の拡大が可能となります。

再エネ賦課金への影響と配慮

FIT制度の財源である「再エネ賦課金」は、一般家庭や事業者の電気料金に上乗せされています。今回の買い取り価格引き上げが賦課金に及ぼす影響を抑えるため、賦課金の負担が増えない範囲での調整が目指されています。短期的な投資回収により金利負担が軽減されることもあり、追加負担を極力抑えつつ、再生可能エネルギーの導入を促進する狙いが見られます。

日本の再生可能エネルギー普及と課題

日本の再生可能エネルギー導入は順調に進み、太陽光発電の発電量は2022年度に国内全体の9.2%を占めるまでに成長しています。政府の目標は2030年度までに再生エネルギーの比率を36~38%にすることですが、まだ達成には課題が残ります。さらに、2050年の脱炭素目標に向け、再生可能エネルギーの拡大と持続可能な電源構成の実現が必要です。

特に太陽光発電は天候依存型であるため、エネルギー供給の安定性が課題となります。また、設置場所の制約やコスト、土地利用の課題もあるため、太陽光だけでなく、風力やバイオマスなど多様な再生可能エネルギーを導入する必要があります。

政策改正がもたらすメリットとリスク

メリット

  1. 短期間での投資回収:給付期間の短縮により、5年程度での回収が可能となり、金融機関の融資が得やすくなります。

  2. 事業者の参入が容易に:買い取り価格の引き上げにより、屋根置き太陽光発電事業がより魅力的になり、事業者の参入意欲が向上することが期待されます。

  3. 太陽光発電の拡大促進:屋根置きによる設置が増加し、再生可能エネルギー全体の比率を引き上げることで、脱炭素社会の実現に向けた一歩となります。

  4. 蓄電池の拡大:蓄電池は、調整役として必要になります。

リスク

  1. 賦課金負担の増加リスク:高額の買い取り価格が賦課金に影響を及ぼし、負担が増加する可能性があります。

  2. 限定的な適用範囲:屋根置き限定の改正により、山間部や平地での開発が制限され、拡大に限界がある恐れもあります。

  3. エネルギー供給の不安定性:太陽光発電の天候依存による不安定性が解決されないと、安定供給の課題が残ります。

再生可能エネルギーの未来に向けた課題と展望

2050年の脱炭素目標に向け、日本では再生可能エネルギーの導入と供給の安定性を両立することが求められます。そのためには、再生可能エネルギーの中でも多様な電源構成が重要です。風力発電やバイオマス発電との組み合わせにより、安定したエネルギー供給を目指すことが不可欠です。

また、再生可能エネルギーの地域分散と、送電網の強化も検討すべき課題です。各地域の気候や地理に適したエネルギー源を活用することで、安定したエネルギー供給体制を構築できると期待されます。さらに、政府の主導によるインフラ整備や制度支援が必要です。

2050年脱炭素に向けた持続可能なエネルギー社会の実現を目指して

今回の経済産業省の太陽光発電の新政策は、事業者が再生可能エネルギーの導入に踏み切りやすくなる一歩ですが、太陽光発電の拡大だけでは目標達成には不十分です。2050年の脱炭素社会に向けては、再生可能エネルギーの多様化やエネルギーミックスの最適化、そして地域ごとに適したインフラ整備が欠かせません。

脱炭素社会を実現するためには、政策の柔軟な改正と国民全体の理解・協力が不可欠です。政府の施策をチャンスと捉え、私たち一人ひとりが再生可能エネルギーの未来に向けてどう貢献できるかを考えていくことが求められます。

太陽光発電、事業者向け買い取り価格3倍 経産省
日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO84699170Q4A111C2MM8000/

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