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隣へ電気を送るだけ?実はこんなに難しい! 〜中部電力の太陽光電力融通の挑戦〜
再生可能エネルギーの活用が注目される中、中部電力ミライズが企業間で太陽光の余剰電力を融通する新たな試みをスタートしました。「隣の企業へ余った電気を送るだけ」と思うかもしれませんが、実はこの仕組みを実現するには多くの技術的な課題をクリアしなければなりません。
ここでは、電力の融通がなぜ難しいのか、その背景と解決策を詳しく解説します。
1. 送電の壁 〜発電所の電気とは違う?〜
通常、電力は「発電所 → 送電網 → 需要家(工場や家庭)」という流れで供給されます。しかし、企業が発電した電力を他の企業に直接送るには、電力会社の送電ネットワーク(系統)を使う必要があります。この時、以下の問題が生じます。
課題
送電網は大規模な発電所向けに設計されており、小規模な発電のやり取りには適していない。
送電のルールや管理の仕組みが必要。
電力の流れを適切にコントロールしないと、系統が不安定になる。
解決策
中部電力ミライズは、「オフサイトPPA(電力網を介した電力供給)」の仕組みを活用し、企業間での電力融通を可能にしました。これにより、太陽光で発電した電力を、リアルタイムで管理しながら、必要な企業へ送ることができます。
2. 需給バランスの管理 〜電気は貯められない〜
電力は発電と消費のバランスが常に一致している必要があるという特性があります。つまり、太陽光で発電した電気を他の企業に送る場合も、「受け取る企業がその瞬間に電気を使っていること」が求められます。
課題
送る側と受け取る側の電力消費タイミングを合わせるのが難しい。
電力の流れを適切に制御しないと、電圧や周波数が不安定になり、停電や設備故障の原因になる。
解決策
スマートグリッド技術の導入
AIを活用し、企業ごとの電力消費をリアルタイムで予測し、最適な電力配分を行う。
エネルギーマネジメントシステム(EMS)の活用
企業ごとのエネルギー使用データを統合し、需給バランスを調整。
3. 余剰電力の貯蔵 〜天気と休日に左右される発電〜
太陽光発電は、天候に影響を受けるため発電量が不安定です。また、企業の稼働日や休日により、電力の消費タイミングも変動します。そこで、「余った電気をどうするか」が重要になります。
課題
発電した電力をすぐに使わないと、無駄になってしまう。
企業の休日には電気が余りやすく、融通先がないと消費できない。
解決策
蓄電池の導入
余剰電力を一時的に貯め、必要な時に供給できるようにする。
水素変換技術(P2G)
余剰電力を水素に変換し、後でエネルギーとして利用。
4. 電力のトラッキング 〜どの電気がどこへ行ったのか?〜
企業が発電した電力がどこへ送られたのかを正確に把握するには、トラッキングの仕組みが必要です。電気は目に見えないため、「A社の電気がB社に供給された」という証明が難しいのです。
課題
誰が、どれだけの電力を提供し、誰が受け取ったのかを記録する必要がある。
CO2排出削減の効果を証明できないと、企業の環境目標達成の評価ができない。
解決策
ブロックチェーン技術の活用
企業間での電力取引を透明化し、データを改ざん不可能な形で記録。
電力証書(グリーン証書)の発行
どの企業の電力が再生可能エネルギー由来かを証明する仕組みを整備。
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