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日本経済新聞の「私見卓見」の高瀬香絵さんの主張の一般論とその限界

高瀬香絵さんが主張するエネルギー政策の方向性は、再生可能エネルギーの拡大とその潜在力についてです。特に、風力発電や太陽光発電のコストの低下と技術革新による蓄電池の利用が進むことで、日本でも自然エネルギーの割合を大幅に増やすことが可能だと述べています。また、自然エネルギーの導入が企業の経済活動に与える影響や、国際競争力の観点からもその必要性を強調しています。

しかし、高瀬さんの議論は一般論としての枠を超えて、具体的な解決方法についての説明がやや不足しています。例えば、自然エネルギーの大規模導入の具体的な実施方法や、それに伴う技術的・経済的な課題への対応策についての詳細が乏しいと感じられます。

東ガスの取り組みとShizen Connectのアグリゲーター事業

このような背景の中、東京ガスなどが出資するShizen Connectのアグリゲーター事業に注目する価値があります。アグリゲーターは、複数の小規模な発電設備や蓄電設備を集約し、あたかも一つの大規模な発電所のように機能させることで、電力の需給バランスを効率的に調整する役割を果たします。

Shizen Connectの事業内容

Shizen Connectは、自然電力の子会社であり、全国に散在する小型蓄電池の稼働状況を集め、それを一括して制御するシステムを提供しています。これにより、家庭用蓄電池や電気自動車(EV)の蓄電池を束ねて制御し、仮想発電所(VPP)として機能させることが可能となります。具体的には、以下のような取り組みが行われています。

  1. 家庭用蓄電池の統合管理:

    • Shizen Connectのシステムは、オムロンやニチコンなど国内の主要な家庭用蓄電池に対応しており、家庭向け蓄電池市場の半数以上をカバーしています。

    • このシステムは、東京電力エナジーパートナーや関西電力と協力し、実証実験を進めています。

  2. EVや再生可能エネルギー発電所との連携:

    • 西日本鉄道や四国電力がEVバス、JERAが再生エネ発電所に併設された蓄電池を利用するなど、家庭用以外の蓄電池も活用しています。

  3. 目標と期待:

    • Shizen Connectは、2030年までに制御する電源容量を100万キロワットに増やす目標を掲げています。

    • 米欧ではすでにVPPを利用した調整力の売買が盛んであり、日本でも蓄電池の価格が下がり市場が成熟すれば、同様のビジネスが拡大することが期待されています。

アグリゲーターの重要性

アグリゲーター事業は、再生可能エネルギーの不安定な供給を安定化させる上で非常に重要です。複数の小規模なエネルギー源を集約することで、供給の変動を平準化し、電力系統の安定化に寄与します。特に、蓄電池の利用が進むことで、夜間や天候不順時でも安定した電力供給が可能となり、再生可能エネルギーの割合を増やすことが現実的になります。

結論

高瀬香絵さんの主張する自然エネルギーの重要性は理解できるものの、具体的な解決策の提示が必要です。その点で、Shizen Connectのようなアグリゲーター事業は、再生可能エネルギーの導入と安定供給の両面で重要な役割を果たすと考えられます。日本のエネルギー戦略において、こうした具体的な取り組みを積極的に評価し、導入を推進することが求められます。


もっと増やせる太陽光や風力:日本経済新聞

<要約>もっと増やせる太陽光や風力 自然エネルギー財団シニアマネージャー 高瀬香絵

2040年度までの日本のエネルギー基本計画が年末までに決定される。現在、製造時に多くのCO2を排出する製品は選ばれにくくなっており、エネルギー戦略によっては日本での操業を続けるかどうか企業は判断を迫られる。

世界では風力発電や太陽光発電のコストが大きく下がり、蓄電池のコストも急速に低下している。自然エネルギーの電力比率が50%を超える国も増加している。

日本でも自然エネルギーの大幅な導入は可能であり、特に洋上風力のポテンシャルは日本全体の電力需要の8倍以上に達する。住宅の太陽光設置率は1割程度で、農地に太陽光発電を設置することで農家の収入を補うことも可能である。

技術革新により、蓄電池を中心としたシステムで電力の安定供給が可能となり、従来の「火力が必要」という常識は古くなった。例えば、アイルランドでは蓄電池が系統安定化に寄与している。

自然エネルギー財団の研究では、80%の自然エネルギーでも電力の安定供給が可能であることが示され、増強された蓄電池や連系線の建設コストを含めても発電コストはウクライナ危機前の水準と同等である。これにより、ガス価格高騰の影響を受けにくく、化石燃料の輸入額も減少する。自然エネルギー導入が進めば、日本のエネルギー自給が可能となる。

大手IT企業や半導体企業は、電力の100%を自然エネルギーとすることを宣言しており、安価で大量の自然エネルギーがデータセンターや半導体工場の立地条件となっている。日本全体の利益となるエネルギー戦略を決めるためには、既成概念にとらわれない議論が必要である。

 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO81966020Z00C24A7KE8000/

家庭用蓄電池「発電所」に:日本経済新聞

<要約> 家庭用蓄電池「発電所」に東ガスなど新興企業が出資

Shizen Connect(シゼンコネクト、東京・中央)が蓄電池の一括制御システムを手掛け、東京ガスや北海道電力などから出資を受けました。エネルギー大手企業は、新興企業と協力して全国の家庭用蓄電池を一元管理し、出力制御の緩和に向けた調整力を提供することを目指しています。

主な出資者には、JERA、北陸電力、四国電力、東急不動産、西日本鉄道、新日本空調の8社が含まれ、合計出資額は約3億~4億円と見られます。

シゼンコネクトは、自然電力の子会社であり、全国の小型蓄電池の稼働状況を集めて制御するシステムを持ち、すでに東京電力エナジーパートナーや関西電力とも協力しています。

仮想発電所(VPP)として家庭用蓄電池や電気自動車の蓄電池を束ねて制御し、需給に応じた電力の調整力を提供します。日本電機工業会によれば、家庭用蓄電池は2024年3月末時点で約700万キロワット時の規模があります。

今回の出資企業は、家庭用以外にもEVバスや再生エネ発電所に併設された蓄電池を活用しています。シゼンコネクトは2030年までに制御する電源を合計100万キロワットに増やすことを目指しています。

米欧ではVPPによる調整力の売買ビジネスが広がっており、日本でも蓄電池の価格が下がれば市場が成熟し、制御力が増えていくと期待されています。

 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO81977990Z00C24A7TB1000/

#太陽光発電 #蓄電池 #日本経済新聞 #アグリゲータ

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