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エネ庁長官に聞く、日本の再エネ政策とエネルギー自給率向上への道筋


日本の再エネ政策とエネルギー自給率向上への道筋

村瀬佳史・資源エネルギー庁長官が、日本のエネルギー政策における重要な課題やその背景、そして再生可能エネルギー(再エネ)の推進に向けた取り組みについて、インタビューで語ってくださいました。エネルギーの安定供給と脱炭素化を両立させるための戦略が詳しく紹介されています。
以下、彼の発言内容を整理し、解説いたします。

1. 現在のエネルギー情勢と日本の課題

世界的なエネルギー情勢が大きく変動している中、日本は依然として化石燃料の多くを海外に依存しています。ロシアによるウクライナ侵攻や中東の緊張が続く中、エネルギー供給の不安定さや価格の高騰が大きなリスクとなっており、日本のエネルギー政策においても対応が急がれています。

村瀬氏は「今、世界は1970年代の石油ショック時と同様のリスクに直面している」と述べ、日本のエネルギー自給構造を強化し、国内のエネルギー自給率を向上させることが不可欠だと強調しています。現在、日本は自動車の輸出などで得た外貨を、そのままエネルギー輸入に費やしているという現状もあり、経済的負担が重くのしかかっています。

2. エネルギー政策の基本方針「S+3E」

日本のエネルギー政策の指針として掲げられているのが「S+3E」原則です。この原則は次のような項目で構成されており、バランスを保ちながらエネルギー政策を進めるための基盤となっています。

  • Safety(安全性):エネルギーの安定供給と脱炭素化を進める上で、安全性の確保が第一です。

  • Energy Security(エネルギーの安定供給):安定したエネルギー供給を維持し、急な供給停止リスクにも対応できるようにすること。

  • Economic Efficiency(経済効率性):経済的な負担を抑えながら、効率的にエネルギーを利用すること。

  • Environment(環境適合):環境負荷を減らし、持続可能な社会の実現を目指します。

村瀬氏はこの「S+3E」原則に基づき、省エネの推進、再エネの主力電源化、安全な原子力の活用など、多様な施策を組み合わせて政策を進めていくと述べています。

3. 脱炭素社会に向けた取り組み

日本政府は2023年に「GX(グリーントランスフォーメーション)推進戦略」を閣議決定しました。これにより、再エネと原子力の割合を増やし、化石燃料からの脱却を目指しています。2030年までに火力発電依存率を41%まで下げるとともに、再エネを36~38%、原子力を20~22%まで引き上げるという目標が設定されています。

村瀬氏は、2030年には2013年度比で温室効果ガス排出量を46%削減する目標もあり、これを達成するためには再エネと原子力の両方を安定的に供給する体制を構築する必要があると述べました。特に、再エネの拡大には固定価格買取制度(FIT)を利用してきた実績もありますが、今後も同じスピードで拡大していくことが求められています。

4. 原子力発電の再稼働と地域住民への配慮

日本のエネルギー自給率向上に向け、原子力発電の再稼働も重要な要素とされています。2024年には、東北電力・女川原発2号機と中国電力・島根原発2号機の再稼働が予定されていますが、これには地域住民や自治体の理解が必要不可欠です。村瀬氏は、地元との信頼関係を構築し、丁寧に進めることが重要だと強調しています。

また、女川2号機は東日本大震災以降初の沸騰水型軽水炉の再稼働であり、過去に被災した原発の再稼働としても注目されています。

5. 火力発電の今後と新技術の活用

日本は当面のエネルギー供給の安定を保つために、一定の火力発電の活用が避けられません。ただし、発電効率の低い石炭火力発電については、段階的に削減を進め、将来的にはフェードアウトする方向で進んでいます。

また、トランジション期(移行期)においては、水素やアンモニア、CCUS(CO2回収・利用・貯留)といった新技術を活用し、火力発電のクリーン化を進める方針です。最近の通常国会では、水素社会推進法および二酸化炭素貯留事業法も成立しており、新たな技術の普及に向けた体制が整っています。

6. まとめと今後の展望

日本のエネルギー政策は、再エネと原子力の積極的な導入、そして新技術を活用した火力発電のクリーン化によって、エネルギーの安定供給と脱炭素化の両立を目指しています。村瀬氏が述べたように、地政学的リスクが高まる中で日本がエネルギー自給率を高め、経済的負担を軽減するためには、再エネの拡大と安全な原子力の利用が欠かせません。

エネルギー政策は国の経済や安全保障に直結する重要な分野です。私たちも今後の動向に注目し、エネルギーの効率的かつ持続可能な利用を日々意識していくことが大切です。

村瀬佳史長官のインタビューからもわかるように、日本のエネルギー政策は複雑な課題を抱えながらも、将来を見据えた取り組みが進められています。

村瀬エネ庁長官「再エネか原発か」の議論は終焉
#東洋経済オンライン @Toyokeizai
https://toyokeizai.net/articles/-/839434

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