見出し画像

脱炭素がポンプ市場を拡大させる理由とは?

はじめに

近年、世界的な脱炭素化の流れに伴い、さまざまな産業での技術革新が進んでいます。その中でも、産業用ポンプは今、新しい市場を切り開く役割を果たし始めています。ポンプと聞くと一見地味に思われるかもしれませんが、実は社会インフラの基盤を支える重要な技術です。そして、その技術が脱炭素のためにどのように拡大しているのか、今回は具体的な事例を交えてご紹介します。


1、ポンプとは何か?産業の基盤を支える重要技術

ポンプは、液体やガスなどの流体を移動させるための機械装置で、さまざまな産業で使用されています。例えば、上下水道システムでは水を汲み上げて送水するポンプが、また石油化学プラントでは原油や化学物質を輸送するポンプが使われています。このように、ポンプはエネルギー消費量が大きく、脱炭素化の進展に伴い、エネルギー効率や持続可能な運用が求められる分野です。

2、脱炭素化とポンプ市場の関連性

脱炭素化とは、温室効果ガスの排出を抑制し、持続可能な社会を実現するための取り組みです。再生可能エネルギーの導入や、水資源の保護・管理が重要視される中、ポンプはこれらのインフラ整備に欠かせない役割を担っています。

特に、再生可能エネルギーの活用が進む地域では、ポンプの需要が急速に高まっています。例えば、風力や太陽光発電による電力を利用し、海水を淡水化する技術が広がりつつあります。脱炭素社会の実現に向けた新たなニーズが、従来の石油やガス輸送に依存していたポンプ市場に変革をもたらしています。

3、北アフリカでの新たな市場拡大

酉島製作所という大阪に本拠を構える企業が、海水淡水化プラント向けのポンプで新市場を切り開いています。特に北アフリカのアルジェリアでの受注が大きく、同国で計画されている4つの淡水化プラントに143台ものポンプを納入することが決まっています。このプラントは、1日に300万人分の飲料水を供給する大規模な施設であり、酉島製作所の技術がその稼働を支えるのです。

4、欧州からの支援と再生可能エネルギーの普及

北アフリカ諸国では、数年前から太陽光や風力発電といった再生可能エネルギープロジェクトが大規模に展開されています。この背景には、脱炭素化を進める欧州からの資金と技術支援があります。ヨーロッパは再生可能エネルギーの導入を加速させ、将来的には北アフリカからの電力供給を見据えた動きも進んでいます。

北アフリカは、アフリカ全体の太陽光発電容量の20%、風力発電の50%を占めており、この地域のエネルギー供給が大幅に強化されています。これにより、電力不足が解消されるとともに、慢性的な水不足への対策として海水淡水化プラントの導入が進んでいます。

5、省電力技術で受注を獲得

酉島製作所が北アフリカで成功を収めた理由の一つは、省電力技術にあります。海水淡水化プラントでは、稼働エネルギーの80%以上がポンプの動力に使われるため、少ない電力で効率的に水をくみ上げる技術は非常に重要です。酉島製作所は、他の欧州勢と比べて省エネ性能に優れている点をアピールし、競合に勝ち抜きました。

また、酉島製作所はエジプトにメンテナンス工場を建設中であり、アフリカ全体でのサービス提供体制を強化しています。これにより、現地でのポンプ交換や修理が迅速に行われるようになり、信頼性が向上することで、さらに多くの受注が期待されています。

6、新燃料への対応、帝国電機製作所の事例

脱炭素化に伴い、新たな燃料として注目される液化アンモニアや水素などの取り扱いも重要です。これらの燃料は強い毒性や引火性を持つため、安全かつ効率的に輸送できるポンプが求められています。兵庫県に拠点を持つ帝国電機製作所は、液化アンモニアやCO2回収用ポンプの分野で実績を積み、脱炭素燃料向けの需要を満たすポンプを提供しています。

同社のポンプは、モーターと流体を押し出す羽根車を一体化させた構造を持ち、流体が漏れずに安全に輸送できる設計が特徴です。これにより、環境負荷の少ない新燃料を安全に扱える技術が評価され、受注が増加しています。

7、技術革新と持続可能なポンプ市場

ポンプ業界では、技術革新が進んでいます。例えば、鶴見製作所は鋳物加工に3Dプリンターを導入し、生産コストの削減と品質向上を同時に実現しています。3Dプリンターによって、従来の木型を使用しない生産プロセスが可能となり、保管コストを大幅に削減できるため、多品種少量生産にも対応できる柔軟性が向上しています。

こうした技術革新が進むことで、ポンプの省エネ性能や生産効率がさらに高まることが期待されており、脱炭素社会を実現するための基盤技術としてのポンプの重要性がますます増しています。

8、ポンプが切り開く脱炭素社会

脱炭素化に向けた世界的な取り組みにおいて、産業用ポンプの技術は重要な役割を果たしています。特に、再生可能エネルギーの普及や新燃料の導入に伴い、ポンプ市場は大きく成長しています。酉島製作所や帝国電機製作所などの企業は、革新的な技術と持続可能な運用方法を開発し、新しい市場で成功を収めています。

これからも、ポンプ技術の進化は脱炭素社会を支える柱の一つとして注目され続けるでしょう。ポンプの未来には、さらなるエネルギー効率の向上や持続可能な資源管理が期待され、企業の技術力が問われる時代が到来しています。

ポンプ、脱炭素で新市場 酉島製作所はアフリカ進出 -
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF1971C0Z10C24A9000000/

#脱炭素 #再生可能エネルギー #ポンプ技術 #海水淡水化 #サステナビリティ #技術革新 #アフリカ市場


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?