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2040年の発電コストはどうなる?具体的な数字で見るエネルギーの未来

皆さん、こんにちは。今回は、私たちの将来のエネルギーを考える上で非常に重要な資料、「2040年の発電コスト検証」を、具体的な数字を交えながら解説します。
この資料は、第7次エネルギー基本計画策定に向けて国が検証したもので、今後のエネルギー政策を議論する上での重要な基礎資料です。

なぜ発電コスト検証が重要なのか?

エネルギー政策における「経済性」「安定供給」「環境適合性」。発電コストは「経済性」に直結し、将来のエネルギーミックス(電源構成)を検討する上で不可欠です。今回の検証では、太陽光、風力、水素、火力、原子力といった主要電源の2040年時点の発電コストが試算されています。

発電コストの計算方法

発電コストは「LCOE(均等化発電原価)」で計算されます。これは、発電所の建設費や運転維持費などの総費用を発電する総電力量で割ったもので、1kWhあたりの発電コストを示します。今回の検証では、2023年時点と2040年時点に新しく発電所を建設・運転した場合のLCOEを比較しています。既存の発電所を運転する場合のコストではないことに注意が必要です。

主要な電源のコストを具体的に見てみよう

今回の検証から、特に重要なポイントを具体的な数字と共にご紹介します。

  • 太陽光発電

    • 事業用太陽光 モデルプラント(設備容量250kW、設備利用率18.3%)の場合、2040年のLCOE(政策経費込み)は約8.5円/kWhと試算されています。ただし、設備費などのパラメータによって7.0~8.9円/kWhの範囲で変動する可能性があります。政策経費(補助金など)を含めると一定のコストがかかることが分かります。

    • ペロブスカイト太陽電池 今回初めて試算されたペロブスカイト太陽電池の2040年のLCOE(政策経費込み)は約16.5円/kWhです。現時点では事業用太陽光よりも高コストですが、今後の技術革新によるコストダウンが期待されます。

  • 水素発電

    • 水素発電は、水素の製造方法でコストが大きく異なります。今回の検証では、国産グリーン水素(再生可能エネルギー由来)を用いた場合、輸入ブルー水素(天然ガス由来)よりも低コストになるという試算結果が出ています。具体的な数字としては、国産グリーン水素を用いた場合のコストは約28.8円/kWh(STEPSシナリオ)とされています。(輸入ブルー水素の場合は約29.9円/kWh

  • 火力発電

    • 火力発電では、CO2対策費用が大きな要素となります。2040年のCO2対策費用は、前回(2021年)検証の2030年の費用(4,280円/t-CO2)から大幅に増加し、4倍以上になるとされています。具体的な金額は、参照するシナリオによって幅がありますが、大幅なコスト増は避けられないでしょう。CCS(二酸化炭素回収貯留)を付加したLNG火力の場合、CCS費用とCO2対策費用が加算され、さらにコストが増加します。

  • 原子力発電

    • 原子力発電の2023年時点のコスト(新設の場合)は、政策経費込みで約12.6円/kWh以上と試算されています。運転期間を60年に延長すれば約11.7円/kWhまで低下する可能性がありますが、安全対策費や廃炉費用などを含めると、依然として高コストです。

統合コストとは?具体的な影響も解説

「統合コスト」は、太陽光や風力などの変動性再生可能エネルギーの導入量増加に伴い、電力系統の安定に必要な追加コストです。今回の検証では、変動性再エネの設備容量が4割、5割、6割のケースで分析が行われ、統合コストを考慮したLCOE(LCOE*)が算出されています。例えば、太陽光発電の場合、通常のLCOEに加えて、統合コストが数円/kWh程度上乗せされる可能性があります。この影響は、再エネ導入比率が高くなるほど大きくなります。

デマンドレスポンスでコストを抑える?

デマンドレスポンス(DR)は、電力需要を時間帯によって調整する取り組みです。今回の検証では、ヒートポンプ給湯器や電気自動車の普及によるDR効果が試算され、LCOE を抑制する効果があることが示されています。具体的な数字は示されていませんが、DRの活用は統合コスト低減に有効な手段と言えるでしょう。

この資料から何を読み取るべきか?

今回の発電コスト検証は将来のコスト試算であり、実際のコストは技術革新や政策動向で変動します。しかし、この資料は将来のエネルギー政策を考える上で重要な情報を提供しています。

特に重要なのは、以下の点です。

  • 再生可能エネルギーの導入拡大には、統合コストの考慮が不可欠であること。具体的な金額として、数円/kWh程度上乗せされる可能性があることを認識する必要があります。

  • 水素発電は、製造方法でコストが大きく変動すること。国産グリーン水素のコストが比較的低い可能性があるという情報は重要です。

  • 火力発電は、CO2対策費用が重要な要素となること。具体的な金額として、CO2価格の大幅な上昇が示唆されていることを認識する必要があります。

  • デマンドレスポンスなどの需要側の対策も、コスト削減に貢献する可能性があること。

私たちにできること

この資料を通して、私たちは将来のエネルギーについてより深く考えることができます。再生可能エネルギーの普及、水素エネルギーの活用、火力発電のCO2対策、デマンドレスポンスなど、様々な課題について具体的な数字に基づいて議論し、より良い未来を築くために貢献できます。

ぜひ、この機会にエネルギー問題について考えてみてください。ご意見やご感想もお待ちしております。

第7次エネルギー基本計画の策定に向けて、将来の各電源の発電コストの検証が進んでいる。第5回「発電コスト検証ワーキンググループ」より

https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/mitoshi/cost_wg/2024/05.html

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