見出し画像

再エネの安定供給を支える蓄電池ビジネスの全貌!次なる成長のカギとは?

近年、再生可能エネルギー(再エネ)に関連する技術や事業が急速に発展しており、日本でも太陽光発電や風力発電の普及が進んでいます。しかし、これらの再エネには、発電量が天候や時間帯に左右されるという大きな課題があります。こうした変動を補い、電力の安定供給を支える技術として注目されているのが「系統用蓄電池」です。今回は、2024年に話題となっている蓄電池事業の構造や成長性について、分かりやすく説明します。


1、蓄電池事業の急成長と「次の鉱脈」

オリックスや関西電力が共同で進めている和歌山県の「紀の川蓄電所」や、オリックスが滋賀県で手がける国内最大級の系統用蓄電所「米原湖東蓄電所」など、蓄電池事業への投資が加速しています。これらの施設は、再エネの電力を効率的に利用し、売電収入を得るために重要な役割を果たします。

オリックスはこれまで太陽光発電を中心とした再エネ事業を進めてきましたが、次に注目しているのが大型蓄電池です。このシフトは、再エネの不安定な発電量を安定させるための「調整力」への投資を重視していることから来ています。このような事業は、「次の鉱脈」として期待されており、今後さらに成長が見込まれています。

2、系統用蓄電池事業の構造

蓄電池事業の基本的な構造は、電力の供給過剰時に余剰電力を蓄え、需要が発電量を上回るタイミングでその電力を放電して販売するというシンプルな仕組みです。これを分かりやすく説明すると、以下の3つのプロセスが中心となります。

2.1. 充電

系統用蓄電池は、主に太陽光や風力など、再エネで発生した余剰電力を蓄えます。日中など発電量が多い時期には、電力が需要を上回るため、その余剰分を蓄電池に充電します。これにより、電力の無駄遣いを防ぎ、再エネの利用効率を向上させることができます。

2.2. 放電

蓄えた電力は、発電量が不足するタイミング、例えば夜間や風が弱い時などに放電されます。こうした電力供給の調整が行われることで、電力の安定供給が可能となり、停電や電力不足のリスクが軽減されます。

2.3. 売電収益

蓄電池に蓄えた電力は、市場で販売され、売電収益が得られます。特に、電力需要が高く電力価格が上昇しているタイミングで放電することで、収益を最大化することが可能です。市場価格が変動する中で、適切なタイミングで電力を売買することが、事業者にとって重要な戦略となります。

3、長期脱炭素電源オークションと収益モデル

蓄電池事業の拡大を支える制度の一つに「長期脱炭素電源オークション」があります。この制度では、再エネや蓄電池の新設に対する補助金が提供され、事業者が設備導入の際に安定した初期投資の回収ができるようになっています。オークションで案件が落札されると、20年間にわたって建設費や運用費の一部が補助されます。

ただし、このオークション制度には特定の条件があり、売電収益の約9割は小売電気事業者に渡る仕組みになっています。そのため、蓄電池事業者にとっては、売電収益の残り1割で事業を成り立たせることが必要です。この制約を克服するためには、効率的な運用と、適切なタイミングでの放電が求められます。

4、国内で急成長する蓄電池市場

2023年の長期脱炭素電源オークションの結果、蓄電池に対する事業者からの関心が急激に高まっていることが明らかになりました。オークションでは、蓄電池案件に対する応募が募集枠の約5倍に達し、太陽光や風力を上回る注目を集めました。

さらに、通信業界やエネルギー業界からも次々に蓄電池事業への参入が発表されています。例えば、KDDIは2024年12月に大型系統用蓄電池の建設を開始する予定です。石油資源開発も千葉県で同社初の蓄電池事業に着手しており、これにより安定的な収益構造を目指しています。このように、様々な業種の企業が蓄電池事業に乗り出していることから、国内の蓄電池市場は急成長を遂げています。

5、外資系企業との競争と国際市場

日本国内で蓄電池事業が活発化する中、外資系企業も強力なプレイヤーとして参入しています。特に、英国や台湾、中国の企業が多くの案件を落札しており、国際的な競争が激化しています。例えば、英国のエク・エナジーや中国のCATL(寧徳時代新能源科技)が日本市場に進出し、蓄電池開発を積極的に行っています。

外資系企業は、価格競争力や法整備において先行しており、日本の事業者はこの競争に追随する形で、技術や知見を蓄えていく必要があります。また、再エネ市場においては、特に中国が原料段階からサプライチェーンを掌握していることから、日本の太陽光パネル市場と同様に、蓄電池市場でも中国にリードを許している状況です。

6、日本の蓄電池事業の未来

蓄電池事業は、再エネの普及を支えるために不可欠な存在であり、今後も成長が続くことが期待されています。2030年代には、日本国内の蓄電池の総出力が80万キロワットを超えると予想されており、蓄電池事業は再エネの安定供給を支える重要な要素となるでしょう。

ただし、日本企業が国内外の競争に勝ち抜くためには、技術開発やコスト削減の努力が不可欠です。特に、外資系企業との競争においては、価格競争力だけでなく、サプライチェーンの強化や技術革新が求められます。政府による補助金制度や市場整備のサポートも期待されますが、企業自身の戦略も重要な鍵となるでしょう。

まとめ

再エネの拡大に伴い、蓄電池事業は今後のエネルギーインフラの中核を担う存在です。系統用蓄電池は、電力の供給と需要のバランスを保ち、再エネを最大限に活用するための重要な技術です。日本国内でも多くの企業が参入を表明し、蓄電池市場は急成長を遂げていますが、外資系企業との競争も激化しています。こうした状況の中で、日本企業が持続的に成長するためには、技術力の強化と市場戦略の工夫が不可欠です。蓄電池事業は、再エネの次なる「鉱脈」として、今後も注目を集め続けるでしょう。


外資と競う再エネ蓄電池事業、太陽光に続くバブル到来か -
日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC010SN0R01C24A0000000/

#再生可能エネルギー #蓄電池 #電力ビジネス   #オリックス #脱炭素 #エネルギーインフラ #再エネ事業


いいなと思ったら応援しよう!