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株式会社矢野経済研究所による太陽光発電市場の現状分析

株式会社矢野経済研究所が発表した日本の太陽光発電市場の現状分析と見通しについての解説記事です。太陽光発電に関心のある方や、今後の市場動向を知りたい方に向けて、詳しく丁寧に解説していきます。


株式会社矢野経済研究所は、太陽光発電市場に関する調査を発表しました。この発表では、FIT(固定価格買取制度)を活用した太陽光発電の導入が縮小しつつある一方で、PPA(Power Purchase Agreement)を活用した太陽光発電の導入が拡大していることが強調されています。2030年度に向けて、太陽光発電市場はどのように変化していくのでしょうか。ここでは、その詳細を見ていきます。

1、FIT制度の縮小とPPAの拡大

FIT制度の現状と課題

FIT(Feed-in Tariff、再生可能エネルギーの固定価格買取制度)は、日本で2012年に開始され、太陽光発電市場の急成長を支えてきました。しかし、FITによる太陽光発電の導入は徐々に縮小しています。2023年度には、太陽光発電導入容量が5,040MW(ACベース)と予測され、前年から大幅に減少する見通しです。

特に、事業用の太陽光発電に関しては、売電価格の低下や2017年から始まった入札制度によって、新規の導入が減少しています。また、低圧区分の太陽光発電においては、2020年度から地域活用要件が導入され、発電した電力の30%以上を自家消費することが求められるようになりました。これにより、認定容量がさらに減少しているのです。

PPAの導入拡大

一方、FITに依存しないPPAの導入が国内で急速に拡大しています。PPAは、第三者であるPPA事業者が太陽光発電設備を設置・所有し、発電した電力を長期的に需要家に供給する契約形態です。電力の供給だけでなく、環境価値も取引される点が注目されています。

2、オンサイトPPAとオフサイトPPAの特徴

オンサイトPPAの特徴

オンサイトPPAは、需要家の建物の屋上や敷地内にPPA事業者が太陽光発電設備を設置し、その設備で発電された電力を需要家が直接利用するモデルです。FIT制度に依存せず、企業や施設が脱炭素化の一環として導入を進めています。特に、近年の電力料金の高騰が追い風となり、2023年度の非住宅オンサイトPPAの導入容量は870MWに達し、全体の17.3%を占めると見込まれています。

オンサイトPPAの大きな利点は、需要家が太陽光発電設備の初期費用を負担することなく、長期的に再生可能エネルギーを使用できることです。これにより、設備投資の負担が軽減されるだけでなく、運転管理もPPA事業者に委託することで、企業の運営負担が軽減されます。

オフサイトPPAの特徴

オフサイトPPAは、需要家が利用する施設から離れた場所に太陽光発電設備を設置し、発電された電力を供給するモデルです。オフサイトPPAでは、設置場所の制約がないため、PPA事業者は大規模な発電所を設置できるというメリットがあります。これにより、長期的に安定した電力供給が可能であり、環境価値を重視する企業にとっては、脱炭素化の推進に大きく寄与する形態となっています。

2022年度頃から本格化してきたオフサイトPPAは、2023年度には445MWに達し、全体の8.8%を占めると推計されています。今後、さらにその導入規模が拡大していくことが予想されており、特に一案件ごとの規模が大きくなる傾向が強まっています。

3、2030年度の太陽光発電市場の見通し

2030年度の市場予測

矢野経済研究所によると、2030年度の国内の太陽光発電導入容量は6,049MWに達すると予測されています。この増加は、FIT制度に依存しないPPAの導入拡大によるものとされています。特に、オフサイトPPAの導入が顕著で、2026年度にはオンサイトPPAの導入容量を上回る見込みです。

また、2030年度にはFIT制度を活用した太陽光発電(住宅用および事業用)の導入容量は850MWにまで縮小すると予測されています。これは、全体のわずか14.1%に過ぎず、太陽光発電市場全体におけるFITの影響力が大幅に低下することを示しています。

FIT制度の今後

FIT制度は、日本における再生可能エネルギー導入の基盤を築いた一方で、電力価格の低下や制度の見直しにより、その役割は縮小していくと予想されています。今後は、自家消費型の太陽光発電やPPAといった、新たなビジネスモデルが市場の主役になるでしょう。

4、PPA契約のメリットと今後の展望

PPA契約のメリット

PPA契約は、企業や需要家にとって初期費用の負担がないことが大きなメリットです。特に、脱炭素化が求められる現代において、PPAによる再生可能エネルギーの導入は持続可能な社会に向けた重要なステップとなります。また、契約期間が長期にわたるため、電力価格の変動リスクを回避し、安定的なエネルギー供給が可能です。

今後の展望

2030年度に向けて、日本の太陽光発電市場はPPAを中心に成長していくと予測されています。特に、オフサイトPPAの導入が加速することで、太陽光発電の市場規模が拡大していくことは間違いありません。企業にとっても、長期的なエネルギー戦略の一環としてPPAの活用は今後ますます重要になるでしょう。

まとめ

株式会社矢野経済研究所の調査によると、日本の太陽光発電市場はFIT制度からPPAへのシフトが進んでいます。2030年度には、オフサイトPPAが市場の主流となり、太陽光発電導入容量の多くを占めると予測されています。再生可能エネルギーの導入が求められる中、PPAは企業にとっても持続可能なエネルギー供給の重要な選択肢となるでしょう。

これからのエネルギー市場の動向に注目しながら、太陽光発電の導入を検討していくことが、持続可能な未来を築く一歩となるかもしれません。

2030年度にはオフサイトPPAが最多、次いでオンサイトPPA。FIT制度活用の太陽光発電(住宅用及び事業用)は縮小を予測
ソーラージャナルより
https://solarjournal.jp/news/55450/

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