Puzzle Boss Rush 2 Day4 Light and shadow

セクション間につながりはありません。お好きなところからお読みください。

§0 挨拶

こんにちは、あーくです。今回のパズルボスラッシュ2で4問目のLight and shadowを制作しました。
9日間通して、制作者当てが最も易しい問題だったのではないでしょうか。私が作りそうなパズルが問題リストの中にLight and shadowしかなく、Light and shadowを作りそうな人が作者リストの中に私しかいません。マッチメイクするとなれば真っ先に決まります。

解体新書のここでは、この問題を作るに至った経緯やら背景となる思想やらを書き連ねていこうと思います。

§1 どうして試行錯誤問?

みんなが闇に呑まれて苦しむ姿を鑑賞したかったので。
…というのは本音として、建前には、「1.RPGにはいろいろな性質のボスがいてこそ」「2.試行錯誤問でしか現れないような綺麗な配置の問題を観賞してほしい」という思いがありました。

1つ目。これは率直に言えば前年私が参加したときの不満点からきています。RPGのボスは個性があるからこそ魅力的なのであって、単純にHPが高くて強力な全体攻撃の連打で押してくるボスばかりだったら飽きませんか?という話です。
RPGにおいてボス戦がダレないのは、2体同時に倒さないと復活したり、物理攻撃を仕掛けると戦闘を丸ごとリセットしてきたり、5、4、3、2、1、メガフレアだったり、そういったボスが適度に配置されているからだと思うのです。
試行錯誤問がトータルで見ればウケが悪いのは承知。それでも、一連の問題セットの中にはこういう変わり種がいるべきだ。そう思い、私は試行錯誤問を作ることにしたのです。
まあ所詮建前なのですけれどね。

2つ目。パズルを作るにあたり、理詰めで解けることを優先するとどうしてもきつい配置制約の盤面を完成させることは難しくなります。綺麗な配置の理詰め問を作ろうと作り始めたまではいいものの「理詰め」「綺麗な配置A(例:対称配置)」「綺麗な配置B(例:数字縛り)」の同時実現は困難と察せられて落胆、そんなことは日常です。
ではこの状況になったときにどれを捨てるか。多くの人がどちらかの配置制約を放棄するところで、私は理詰めを捨てるのです。試行錯誤問が生まれるのは、実はそれだけの分岐なのです。
さて、こう言った以上は配置が普通の理詰め問より綺麗でなければなりません。私は試行錯誤問には理詰めを捨てるに見合うだけの綺麗さを求めますし、解く人にもそこを見てほしいと願っています。こんな配置でも唯一解になるのだということ。理という刃でカッティングされた宝石でなく、ただそこに転がっている綺麗な石。人工的には作りにくく、またあえて作る価値も見いだされない、路傍の石の美。それを感じてほしいと思ったのです。
まあ所詮建前なのですけれどね。

§2 人生初の試行錯誤問難度調整

ボスラッシュは早解き一本勝負なので、トケタ?への投稿などと異なり、難度を調節しなければなりません。いろいろ問題を作っておいて後から難度順にそれらしく並べよう、とはできないのです。自由にヒント数字を配置してよければ盤面を大量にコピーして探索の広がり具合を制御しながらヒントを置いていけばよいのですが、今回は数字も込めて点対称配置にすると最初に決めていたのでこの方針での制御は困難です。
ではどうするか。たくさん作って、それらしい難度になったものを提出する。これしかないでしょう。難度「調整」とは何だったのか。
そんなわけで、最初に易しめの問題を投稿してタイムを出してもらいそれを参考に盤面サイズ等の目途をつけることにしました。そのときの問題がこちらです。

画像1


こちらで解けます

これが10分かそこらで解かれてしまうのには正直驚きましたが、ともあれこれで作るべきものがはっきりしました。Light and Shadowはカタマリの平均マス数が大きくなると探索範囲が広くなるので、ヒントは6を主軸に。サイズも一回り大きくして12×12としましょう。これで難度が二回りくらい上がった問題が作れるでしょう。

作れませんでした。

ヒントが全部6だと別解が出やすく、最初作った数問は全て複数解。それに難度の上がり具合が予想以上で、たとえ唯一解になっても3時間コースの問題になりそうです。事前に「あまりに闇だったらボツにする」と丑の刻に五寸釘を刺された身としてはどうにか1時間コースくらいにしたいところです。
となればサイズ削減が順当でしょう。100マスは6で割り切れないから2を2つ入れることにして、2は制約が強いので遠くに配置して2の周りから決まらないようにすれば良さそうです。実際に作ってみると、周縁部の自明な別解にだけ気を付ければ割と唯一解になります。
こうして、いくつかの問題が生まれました。そこから出題する問題を選ぶわけですが、今回この作業は容易でした。今回出題に至ったものは候補の中で
・6の配置が色まで完全に対称
・左上が部分的に決まるくせに左上から場合分けを始めると非常に時間がかかる
という輝く特長を持っていたのです。これを出題しなさいとの神の声が聞こえた気がしました。
こうして世にまた一つの闇が生を受けたのでした。やったね!

§3 蓋を開けてみると

問題完成時点で、私はガチ勢の平均想定タイムを40~60分程度と見込んでいました。上手く全探索すれば1時間かからないくらいの探索範囲ですが、それは作者が制約の強い箇所を知っているからであり、実際にはもう少し非効率的な探索が行われるだろう、その上で期待値的には全探索タイムの半分で解が見つかるだろうと踏んでの予想でした。
この問題は左上が理詰めでわずかに決まりますが、それにつられて左上から仮定を始めると可能なパターンが非常に多くて3時間コースになります。これにはまる人は結構いるのではないかと思っていました。
解きチェックにおいても、72分を記録したdeuさんが「ラストパターンだった」と書いていたので概ね予想通りかなと思い、意図したとおりの難度になったことに満足して出題を待ちました。

蓋を開けてみれば、トップが約6分、以降も30分以内にわんさか。
引ければ一発の問題なのである程度覚悟はしていましたがそれにしてもトップのしもりんさんの6分はちょっと意味が分からないですし、他の人のタイムを見ても別に3時間コースの問題を作って出しても良かったのでは?と思わずにはいられない結果。なんてこった。

もちろん名を挙げた勇者たちの背後に多くの挑戦者の屍が並んでいる可能性はあるのですが、それにしてもボスを名乗るだけの威厳くらいは欲しかったですね。釘なんて刺されていてはいけなかった。
簡単すぎるというほどでもなかったとは思うので、もう一回りですね。次はもう一回り難しくします。次あるのか?

§4 ストーリーについて

突然ですが、皆さんはドラゴンクエスト6をプレイしたことがあるでしょうか。このゲームの序盤に訪れる月鏡の塔なるダンジョンに、「シャドー」というモンスターが現れます。このシャドー、物理防御力が法外に高く、この時点での最強物理攻撃であろうハッサン(攻撃役のキャラ)のとびひざげりですらダメージが通りません(攻撃呪文は通ります)。一方で相手は冷たい息で着実にこちらのHPを削ってきます。こちらの呪文や特技が揃っていないゲーム序盤ゆえの難敵であり、多くのプレイヤーが「にげる」を選択したのではないかと思います。
余談ですが私は幼い頃にドラゴンクエスト6をプレイし、こいつ相手にMPを使い切ってリレミト(ダンジョンからの脱出呪文)を使えなくなりそのまま全滅したことがあります。
シャドーのこの特徴を基本のモデルとして、「光と影の精霊、Light and shadow。理詰めの剣や槌はその体をすり抜けてしまう。倒すためには精神力を消費して呪文「引き」もしくは呪文「全探索」を使わなければならない。」という設定が生まれました。

なお、他にも制作時に提出していない怪文書系の設定がいろいろあります。
・この精霊自体には世界を闇に染めようなどといった意思はなく、理詰め問と試行錯誤問の均衡をとるために存在する。
・世界の理詰めと試行錯誤の均衡が大きく崩れたとき、劣勢な側の思念を受けて成長する。今回の舞台となった世界では理詰め問が優位であったため試行錯誤問へと育っていった。もし試行錯誤問が優位な世界であったならば、理詰め問へと育っていただろう。
・戦闘に際して物理的な攻撃手段は持たず、精神に干渉する攻撃を行う。精神干渉を受けるとパズルの嗜好が変わる場合があり、今まで理詰め問ばかり作っていた人が試行錯誤問を作るようになる、もしくはその逆が起こる原因の一つにこの精霊との接触があるとされている。
・容姿が可愛い。それはもう、ものすごく可愛い。

それはそうと、いつの間にか攻撃力が法外に高い設定になっていました。まあ精神攻撃を仕掛けてくる設定なんかは伝えていなかったので仕方がないです。

§5 モブ兵士から学ぶこと

ストーリー上では同僚のモブ兵士が功を焦って返り討ちにあっていましたが、10×10のLight and shadowを小さいと感じて侮るような無能では、生きて帰れただけでも僥倖と言えるでしょう。相手がLight and Shadowだったから精神にダメージを負うだけで済みましたが、これがDoppelBlock(パズルの一種。大抵は試行錯誤問で、8×8でも非常に危険)だったら問答無用で喰われていたところですし、カーブデータ(パズルの一種。ほとんどが試行錯誤問で、8×8でも非常に危険)だったら捕らえられて魔王城の地下で隊の内情について洗いざらい吐かされていたことでしょう。
しかしながら、喰われていた方がまだマシだったという可能性もあります。隊に帰っても、作戦を破った挙句敗走したとあっては今後の道は暗いでしょう。馬謖なら斬られているところです。果たして彼に名誉挽回の機会は与えられたのでしょうか。
種類にもよりますが、多くの試行錯誤問で10×10はジャイアント相当です。12×12ならスーパージャイアントと言ってよいでしょう。これを読んでいる皆様に於かれましても、ゆめゆめ「理詰めなら小サイズ」の感覚に惑わされることなきよう。彼と同じ道を辿らぬようにしましょう。
作っている側からすると油断して突っ込んで泥沼にはまってくれる方が見ていて楽しいのですけれどね。

§6 結び

まずは、挑んでくださった皆様、ありがとうございました。正解に至らず諦めてしまってもいいです。闇に飲まれる姿が見られたら私は満足です。
それなりの探索範囲がある試行錯誤問を、早解き要素がある場でしかも単問で出題することに関しては私の中にすら迷いがありましたが、それでも§1で書いたような事情から押し切ることにしました。建前とか書いていますけれど、こういうパズルもあると伝えたい、というのは本気です。
物が物だけにネガティブな感想もいただきましたが、それも当然のことと思っています。好みに合わない人は多いだろうし、何ならそういう人の方が多いだろうとも。しかし好みに合わないからといって、こんなものはパズルでないと思ってほしくはないのです。
パズルの世界は広いもの。試行錯誤問という「影」もまた、パズルの世界に必要なものだと私は思っています。使う手筋が限定され、それを組み合わせて解けることが保証された雑誌の世界から出ないならともかく、そこから出るならばどこかの段階で向き合わねばならぬ影。その影は人によっては触れたくないもので、排除したくなるかもしれませんが…一切の影を排除したパズルの世界は、白マスに「100」とだけ書かれた10×10のLight and shadowくらいつまらないと私は思うのです。
この問題に挑みこの文章を読んだ人が、たとえ自らそれを作ることは無くとも、試行錯誤問と共栄していくことを願い。

光あれば影あり、影あれば光あり。

この文言をもって、結びとしたく思います。

本文記事は以上となります。
以下は他の制作者によるクロスレビューとなります。

クロスレビュー

・kattun
配置の美しい問題、いいですよね。大好きです。答えが1通りになるのを見つけた時はとても嬉しい。手筋まで美しけりゃ文句ナシなんですが、そんな問題はそうそうできないのもまた事実。

今回のライシャは、まさにそういった「美しい理詰め」から反対方向に振り切った印象の問題でした。個人的には5ばっかりの方が好きだったんですけどね、あれで簡単ってウソですよね……?

ところで本音が隠しきれていないんですがこれは一体。

・にょろっぴぃ
ライト・アンド・シャドーを自称していますが、実際はライト・アンド・ムドーぐらいだと思います。本文中の第1形態を倒すと本問が出てきます。ぬおおおー!かっー!
五寸釘を事前に大量に刺しておいたおかげで、現実的な難易度になりましたが、欲を言えば本問と初期版の中間ぐらいで良かったんじゃないかと思います。初期版をうっかり5分で解いてしまったのが誤算で、50分かかったとか報告しておけば良かったと今頃後悔しています。

・広瀬あつみ
本音をまずずばっと書いていくスタイル、好きです(!)。
そういえば当日の出題真際になって、紙で解く派のひと向けに、(penpa-editでたくさんの盤面を開けるのと同様に)一度にたくさん問題盤面が印刷できるようになっていると良いのかなと気づいて、あんな感じのpdfを作成してみたのでした。どなたかの助けになったならば嬉しいです。
防御力や回避率が高い敵キャラを物理で倒すには、めげずに何度も攻撃、ですね。

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