PBR3 解体新書 シナリオ(ナナの王国歴史探訪ツアー)
ある晴れた日のパズラーバ王国。城下町は今日も多くの人々で賑わっている。
パズルの手筋を語る者、新たなパズルを生み出す者、パズルの腕前を競う者。
「規格外パズル」に端を発した騒動の後も、国民たちは様々な形でパズルを愛し続けている。
パズルによって独自の文化を発展させる様子は世界中から注目を集めており、パズラーバ王国にはたくさんの観光客が訪れる。
観光客たちをもてなそうと、王国では「パズラーバ王国・歴史探訪ツアー」なるものが行われていた。
歴史探訪ツアー ⓪イントロダクション
参加者A「ほう、さすがパズルを愛する者たちの国。どこを眺めてもパズルで溢れていますな」
参加者B「そうですね……私の国にもパズルの文化は存在しますが、限られた地域にわずかに伝わるのみ。これほど濃密なパズル文化に触れることができるとは」
参加者C「ああ、驚きだぜ……俺はインダイアって国から来たんだが、アンタらはどこの人だい」
参加者A「わしはトゥルクァという国から」
参加者B「私はジャルマニの者です」
参加者D「ママーっ! あれかってー!」
参加者E「あれはアムリカーンにもあるでしょ! 我慢しなさい」
参加者D「えー……」
ナナ「参加者のみなさんはお揃いのようですね。それでは始めるとしましょう……こほん。みなさん、ようこそパズラーバ王国へ! 本日は『パズラーバ王国・歴史探訪ツアー』にご参加いただきありがとうございます! 案内は私、ナナ=ヴェアードが務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いします!」
パチパチ、と参加者たちの拍手が鳴り響く。
ナナ「このツアーではパズラーバ王国の各所を巡り、王国のさまざまな文化に触れながら、王国が辿ってきた歴史を紹介していきます」
参加者D「んー……むずかしくてたいくつそう……」
参加者E「こらっ、ガイドさんが話している途中でしょ」
ナナ「ふふっ、大丈夫です! 体を動かす体験をしたり、お菓子をみんなで食べたり……乗り物に乗ったりすることもできますよ」
参加者D「ほんと!?」
ナナ「うん! 楽しみにしてね! ……あっ、もちろん大人のみなさんも楽しめる内容になっているのでご安心ください。それでは最初の目的地へ向かいましょう!」
歴史探訪ツアー ①王国における『パズル』の存在
ナナ「さて私たちは今、シーカック街道を歩いています。最初の目的地に向かう前に、まずはパズラーバ王国における『パズル』の存在についてお話することにしましょう。みなさんの国にもパズルはあるはずですが……みなさんはどのような形でパズルを見たことがありますか?」
参加者A「むう、トゥルクァでは紙に書かれたものしか見たことがないが。それが普通ではないのかね」
参加者B「私も……書物に載っているパズルしか見たことがありません」
ナナ「そうですよね。パズルといえば紙に書かれていて、紙に書き込んで解くもの。これがみなさんの中の常識でしょう……あっ、ちょうどいいタイミングでアレが出てきましたね!」
参加者C「アレってなんだよ、ってうわあ! なんだこいつ!」
ナナ「これはShikakuというパズルの魔物です!」
参加者C「ま、魔物!? いいのかよ魔物がこんなところにいて!」
ナナ「安心してください。 魔物といっても、人々に危害を加えたりすることはありません」
参加者E「でも、パズルの魔物って一体……? この魔物自体がパズルだというの?」
ナナ「その通りです! かつてパズラーバ王国では、ほとんどのパズルは生物、あるいは魂の憑依という形で存在していたのです。パズルを取り巻く環境が大きく変わった現在でも、この辺りには非凶悪性のパズルの魔物が数多く存在しています」
参加者D「すげー! パズルがうごいてる! あっ、まものってことは……これってやっつけられるの?」
ナナ「そうです! ということで、早速みなさんにこの魔物をやっつけていただきます。それでは……活発そうなあなたにやってもらいましょう!」
参加者C「俺が!? やっつけるったって、どうすりゃいいんだよ」
ナナ「これは盤面を切り分けるパズル。この短剣を使って、真っ二つに切り裂いてしまってください!」
参加者C「なんだかすげえツアーだな……おりゃっ!」
魔物の中心に向かって振り下ろされた短剣は、甲高い音とともに弾き返されてしまった!
参加者C「いってえーー! さっぱり切れねえじゃねーか!」
参加者A「ほっほっほ……若いの、狙いが違いますぞ。短剣を貸しなされ、正しくはこうじゃ」
老人が振り下ろした短剣は、魔物のやや左側を鮮やかに切り裂いた。
参加者D「おじさんすげー! まっぷたつだ!」
参加者B「狙いを変えただけなのに、どうしてこんな差が……!」
参加者C「そうか、わかったぞ。数字は切った後のマスの数を表してるんだな! だからど真ん中より左を狙ったのか……くっそおーー!」
ナナ「ふふっ、気付いたようですね。パズルの魔物は、正しいルールに従わないと決して倒すことができないのです」
参加者E「へえー、不思議なものねえ……あ、昔の人は魔物を倒してパズルを楽しんでいたんでしょう? 倒してばかりだといつか魔物が絶滅してしまうのではないかしら?」
ナナ「いいところに気付きましたね! ええっと……ありました、あの石碑をご覧ください!」
参加者B「これは先ほどのパズル……! しかし、姿が少し異なっています」
ナナ「魂が宿ったパズルを解くと、その魂は解き放たれ、やがて別の生物あるいは物質に憑依するのです。その過程でパズルは少しずつ姿を変えるため、国民は長い間にわたってパズルを楽しむことができたのです」
参加者A「つまりこの石碑のパズルを解けば、また別のどこかで新たなパズルが生まれるということじゃな。ふーむ、よくできた世界じゃのう」
歴史探訪ツアー ②王国の危機・パズルスタンピード
ナナ「さて、最初の目的地に到着しました」
参加者C「国立パズルスタンピード博物館? なんだ、パズルスタンピードって」
ナナ「それは建物の中でお話しましょう。こちらにお進みください」
参加者E「なんだか物々しい雰囲気ねえ」
参加者D「くらくてよくみえないよー」
ナナ「それではみなさん、右手をご覧ください」
ナナの合図で照明が点り、参加者たちの目の前に巨大なオブジェが姿を現す。
参加者A「こ、これは……なんと巨大な」
ナナ「これはかつてパズラーバ王国に現れた、Shikakuの魔物を忠実に再現したオブジェです」
参加者B「Shikakuの魔物……先ほど街道で遭遇したあの魔物がこのような姿に……?」
参加者C「なんだこりゃあ……でもよ、パズルは人間を襲ったりはしないんだろ?」
ナナ「このパズルは王国のとある集落に出現した後、民家を踏み潰し、たくさんの人々を襲ったのです」
参加者D「そんなっ……!」
ナナ「本来パズルは凶暴なものではなく、パズルと人間たちは平和に共存し続けることができるはずでした。しかしパズラーバ王国に突如、サイズも難易度も桁違いなパズルが多数出現し、王国を混乱に陥れたのです……この一連の現象は『パズルスタンピード』と呼ばれ、その災禍は王国に語り継がれています」
参加者B「パズラーバ王国にそのような過去があったとは……心が痛みます」
ナナ「パズルスタンピードという未曾有の危機に立ち上がったのが『人類存続キャラバン』という組織です。彼らの活躍の軌跡をぜひその目でご覧ください」
参加者E「この銅像は、ブルート……エヴォルス? どなたかしら」
ナナ「ブルート=エヴォルスは、人類存続キャラバンを率いて王国を平和に導いた団長……王国では知らない者がいない、伝説の男です」
参加者C「ふうん……ってか、なんか変なポーズじゃねえか? なんつうか、筋肉をアピールしてるような……」
ナナ「ブルート団長じきじきに、ぜひこのポーズで作ってほしいと依頼があり……」
参加者D「ねえ、ブルートってどんなひとなのー? すごいひと?」
ナナ「ブルート団長といえば、あらゆるパズルを総当たりで解くスタイルで有名です。なんでも、全部試したほうが早いんだそうで……他の団員たちが数日かけても解けなかったパズルを、ほんの数時間ですべて解き切ってしまったという逸話が残っています」
参加者C「そもそもパズルで数日ってなんなんだよ……」
歴史探訪ツアー ③生活に密着するパズル
ナナ「さて次の目的地は少し遠いので、あちらのRailway(*1)を使って移動します!」
参加者D「やったー! のりものだ!」
参加者A「見たところは普通の列車じゃな、これは何かパズルと関係があるのかね」
ナナ「実はこの列車、すべてがパズルなんです」
参加者B「列車が、パズル……? どういうことですか」
ナナ「それは乗った後に説明しましょう。さあ、3番ステーションからお乗りください」
参加者たちが乗り込むと、列車はゆっくりと動き出した。
ナナ「さてみなさんが乗っているこちらのRailway、すべてがパズルだとお伝えしましたが……何か気付いたことはありますか?」
参加者E「よく見たら地面がマス目になっているわね」
参加者A「まさかこの列車、パズルの盤面に線を引くように走っているのかね」
ナナ「その通りです! Railwayとは、数字のマスを順番に通りながら1つのループを作るパズル。この仕組みを利用して整備されたのが、この交通機関なのです」
参加者B「パズルはもはや単なる娯楽ではなく、生活に密着した存在なのですね」
ナナ「次の目的地は8番ステーションが最寄りです。到着まで、ごゆっくりお過ごしください」
参加者C「8番ステーション? なんだ、向こうに見えてるじゃねえか。直進すればすぐだな」
ナナ「いけません! Railwayは数字を順番に辿るのが決まりなのです。もしルールを破ってしまうと……」
参加者D「どうなっちゃうの?」
ナナ「線路はメチャクチャになり、車両は崩壊し、あたり一帯が混沌に包まれすべてが破綻してしまうのです!」
参加者C「なんだよその物騒な設定は……」
ナナ「ちなみにRailwayも魂が宿ったパズルなので、駅や線路の配置は日々変わっていきます」
参加者C「すげー不便!」
ナナ「それと昔、Railwayが全マス通過であることをうっかり失念した国民が敷地内に倉庫を建てて、倉庫が粉砕されたという記録も残っています」
参加者C「すげー物騒!」
歴史探訪ツアー ④教育機関の発達
ナナ「長い移動お疲れ様でした、ここが次の見学ポイントです!」
参加者B「ここは……学校でしょうか?」
参加者E「国立調査団員養成学校、って書いてあるわね」
ナナ「ここはパズルのスペシャリストを目指す子供たちの学びの場です! 先ほど解説したパズルスタンピードがきっかけで、人材育成を目的として国王の命で設立された学校なのです。名前に『調査団員』とあるのは、その当時の名残ですね」
参加者A「パズルの教育機関も整備されているとは、文化が成熟されておりますな」
参加者D「おねえちゃんもここにいたの?」
ナナ「はい! 仲間たちと共に勉強したり、実習をしたり、秘密の遺跡を……あっ、これは学校とは関係がない話でしたね」
参加者B「遺跡?」
ナナ「気になった方はぜひ別の機会に調べてみてくださいねー。さて、実は近々この学校では年に一度の学園祭が行われるのです! 今日は特別に、催し物の準備をしている様子をみなさんにお見せしたいと思います!」
参加者D「うわー! たのしそう!」
ナナの案内で校内を歩き回る参加者たち。
教室では、学生たちが真剣な眼差しで催し物の準備に励んでいる。
ナナ「あなたは確かトゥルクァの方でしたよね。さあ、トゥルクァを代表するパズルといえばなんですか?」
参加者A「それはもちろん、Tapa(*2)ですな」
ナナ「こちらの学生さんはTapaについて研究をしているようですよ」
学生「僕はTapaのバリアント……つまり変種パズルについての本を執筆しました。ぜひ、読んでみてください」
参加者A「どれ……Tapa、んっ? Pataとは何だ!? Tapa Islands、Elimination Tapa、Twopa……なんということだ、これらがすべてTapaの仲間なのか」
学生「Tapaの魂は活発に変化を起こしていて、現在わかっているだけでも100を超えるバリアントが存在しています。今回はせっかくなので、みなさんにこの本を差し上げたいと思います。ぜひ、みなさんの国でもTapaとその仲間たちを広めてください」
参加者A「おおっ、これはありがたい。いい土産ができたわい」
少し離れた場所では、学生がお菓子作りの練習をしている。
学生「いらっしゃいませー! 食べられるパズル、Double Chocoはいかがですかー! ミルクチョコとホワイトチョコが織りなす極上の味わい! うまく切り分けて食べてくださいねー!」
ナナ「今日はみなさんのために特製のDouble Chocoを作ってくれたみたいです。じゃん!」
ナナ「このDouble Chocoは6つのブロックに分けることができます。最初の1切れは私が頂くので、残りの5切れをみなさんで分けて食べましょう!」
参加者D「やったー!」
ナナ「それじゃあ私は左下を……えいっ。2マスだけもらいますね」
参加者C「できるだけ大きく切ればいいんだな! んー……ああくそっ、2マスしかわからねえ!」
参加者B「私も、2マスしか切れませんでした……」
参加者D「あっ、わかった! ここをこうすれば……どう、あってる?」
参加者A「ぬうっ、12マスも持っていくとは!」
屋外でも催し物が行われると案内され、参加者たちは野外演習場へと向かった。
学生「ここでは、私たちが実際に学校で行っている演習を体験することができます! ぜひ、やってみてください」
参加者E「野外演習、一体どんなことをするのかしら」
ナナ「せっかくなので、みなさんに体験してもらいましょう! では……さっき魔物をうまく倒せなかったあなた!」
参加者C「また俺かよ! 今度は何をやらされるんだ……」
学生「森林を模したこのフィールドの奥に、宝箱が置かれています。その中身を無事持ち帰ることができれば演習成功です」
参加者C「なんだ、ずいぶん単純じゃねえか」
参加者B「看板がありますね……Tiger in the Woods(*3)……?」
参加者C「は?」
学生「そう! この森林には獰猛な虎が住み着いていて、木々の間を絶え間なく駆け回っているのです! 虎の動きを予測しながら、虎に襲われないよう慎重に進んでください! それではよーい……」
参加者C「えっちょっと待て聞いてねえよ無理だろおい」
学生「スタート!」
参加者C「聞けよ! ええっと……こっちにはいねえな、ここをこうやって……」
ナナ「あっ! 右から来ます!」
参加者C「えっ? うっ、うわああああ!!」
歴史探訪ツアー ⑤パズルの新たな形 〜パズルは『作る』時代へ〜
養成学校を後にした参加者たちは、最後の見学ポイントを訪れるため城下町へと向かっていた。
参加者D「おじさん、たのしそうだったねー!」
参加者C「はあ……ったく、寿命が縮んだぜ……虎が偽物ならそれを先に言ってくれよ……」
ナナ「緊張感がなくては、演習の意味がありませんからね。 さて、あの大きな建物が最後の見学ポイントですよ!」
参加者B「遠目で見ても巨大さがわかります、あれは何かの工場なのでしょうか」
建物に入り、参加者たちは説明を聞きながらひたすら奥へと進んでいく。
ナナ「みなさん、街道での話を思い出してください。パズラーバ王国において、パズルはどのような形で存在していたでしょうか?」
参加者E「ええと、パズルの魔物がいたり、石碑に刻まれたりしていたわね」
ナナ「そうですね。つまりパズルを楽しむには、まずはパズルを見つけなければならない。これではパズルを楽しむ機会は限られてしまいます」
参加者A「なるほど。魂は再びどこかに宿るとはいえ、それがどこにあるのかはわからないわけですな。年寄りにはしんどい話じゃ」
ナナ「そこでパズラーバ王国では、誰もがいつでも気軽にパズルを楽しむことができるよう、ある巨大なシステムを作るプロジェクトが始まりました。それが、今みなさんの眼下に広がる機構です」
参加者D「これぜんぶ!? すげー!」
ナナ「その名も『CaSP』。現在は稼働を停止しているのですが、パズルを自動的に作ってしまうシステムです」
参加者B「パズルを自動的に作る……! なんという技術でしょう」
ナナ「ざっくりと説明すると、CaSPは世界中に散らばるあらゆるパズルの魂を収集し、それをもとに新たなパズルを生成するという仕組みです。自動的にパズルを解く機能も搭載されており、生成された問題の唯一解チェックもバッチリ。気軽にたくさんのパズルを解くことができるようになり、国民はとても喜んだそうです」
参加者C「噂には聞いてたが、マジだったんだな……やべえよこの国」
ナナ「しかし問題もありました。そもそもCaSPはパズルを広く普及させるためのシステムであったため、生成されるパズルの難易度は低く抑えられていました。また、システムが急ごしらえでパズルを生成するため、凝った内容のパズルはどうしても作ることができません。その結果、古くからパズルを愛する者たちにとってはやりごたえに欠け、不満が溜まっていったのです」
参加者B「全員を満足させることはできなかった……ということですね」
ナナ「そしてこの状況に目をつけたのが、かつてパズルスタンピードで我々を苦しめ、一度は私たちの手によって倒されたはずの存在……『魔王』だったのです。魔王はパズル愛好家たちの心につけ込み、巧みに操り、高難度のパズルを人力で作るようそそのかしました」
参加者A「パズルを人力で作るじゃと!? パズルは人間の手によって作ることができるものだったのか」
ナナ「はい。実はパズラーバ王国においても、パズルを人間の手によって作るという文化はほとんど伝わっていませんでした。……さて、人力で高難易度のパズルが作られると何が起こるでしょうか?」
参加者D「んー、わかんないや」
ナナ「作られた高難易度のパズルは、直接CaSPに取り込まれていったのです。すると、CaSPはそのパズルをもとに高難易度のパズルを作るようになる。これを私たちは『規格外パズル』と呼びました」
参加者C「ふーん、そしたら愛好家たちは喜ぶんじゃないのか?」
ナナ「しかしそうはいきません。迂闊に高難易度のパズルを王国に公開してしまうと、それを解くことができない国民が多発します。すると、パズルを解くことができなかったことによる怒りや悲しみといった感情が王国中に渦巻き、既存のパズルが凶暴化する原因となり得る……これだけは避けなければなりません」
参加者B「感情がパズルを変貌させる……不思議なことですね」
ナナ「規格外パズルは発見次第、職員たちの手によって処理が行われてきました。しかし、規格外パズルはついに王国に溢れてしまいます。その結果、王国は負の感情で溢れ、多くの凶暴なパズルが出現し……パズラーバ王国は、パズルスタンピード以来の危機を迎えたのです」
参加者A「国民を喜ばせるはずの仕組みが、かえって国民を危機に晒してしまったというわけですな」
ナナ「……はい。実は私もCaSPの開発や運営に長く携わっていたのですが、とても苦しい思いをしました」
重い空気に包まれ、参加者たちは一様に口を閉ざしていた。
ナナ「しかしこの悲劇は、パズラーバ王国に新たな道を示したのです。『パズルを人間の手によって作る』——これまでは与えられたパズルを解くのみであった国民たちにとって、この技術はまさに衝撃というほかありませんでした」
参加者B「これは……王国に新たな文化が生まれるということですね」
ナナ「そうです! それでは、もう少し先に進むとしましょう!」
参加者たちはCaSPを後にし、もう1つの広大な空間へと足を運んだ。
参加者E「まあ、ここにも大きな機械があったのね! もしかしてこれが今話題のアレかしら?」
ナナ「その通り! 眼下に広がる巨大な機構は……そう! このたびついに完成した、パズラーバ王国が誇るパズル制作/公開システム、『パズラーバ・サークル』です! パズルはついに、『解く』時代から『作る』時代へ! 二度の災禍を乗り越え、私たちが手に入れたのはパズルを作るという文化。初心者も上級者も関係なく、誰もが気軽にパズルを楽しむことができる時代がついに訪れたのです! お手元の端末で、さまざまな作家による渾身のパズルをご体験ください!」
参加者A「数々のドラマがあって、今のパズラーバ王国があったというわけじゃな。うーむ、いい話じゃのう……ではわしはTapaを解いてみようか」
参加者C「うーん、このコロリエって人のパズルをやってみるかな! なんか可愛らしいし」
参加者D「ママー! Nurimisakiってパズルとけたよー!」
参加者E「あらまあすご……ちょっと待って、難易度:★5(Super Hard)って……!」
歴史探訪ツアー ⑥エンディング
ナナ「これにてすべての行程は終了となります。本日のツアーはいかがでしたか?」
参加者B「私は世界各国の歴史を学んでいるのですが、実に濃密な内容で好奇心が掻き立てられるツアーでした」
参加者C「なんかやたらとイジられてた気がするけどよ……でもまあ、楽しかったぜ」
ナナ「ふふっ、ありがとうございます! パズラーバ王国は、世界中にパズルの文化を広めることを大きな目標としています。いつかみなさんの国々でもパズルを気軽に楽しむことができるようになれば……そう願っております。それではみなさん、本日は『パズラーバ王国・歴史探訪ツアー』にご参加いただきありがとうございました! どうか気をつけてお帰りください!」
参加者たちは解散し、ナナは業務報告を行うためパズル庁本部へと向かった。
ナナ「ふーっ、今日はこれで終わりっと。今日もいい感じにできたかな……あれ? さっきまでこのあたりにYajilinの魔物がいたはずなんだけど……」
(*1)Railway
実在するパズルで、ルールはおおむねナナさんの説明の通りです。中級者向けパズルコンテスト・Pre-PGP 2020 Round6にて出題されていますので、興味がある方は実際に解いてみましょう。難易度は控えめです。おや、作者の名前には見覚えがありますねえ……
(*2)Tapa
トゥルクァ……ではなく、トルコのパズル作家・Serkan Yürekli氏が考案したパズルです。初代Puzzle Boss RushのBoss No.1 TEN PUZZLESにて登場したパズルでもあります。
登場したTapaの仲間たちもすべて実在するバリアントで、Pataは初代Puzzle Boss RushのBoss No.9 FUSION BLACKで見覚えがあるという方も多いのではないでしょうか。
(*3)Tiger in the Woods
こちらも実在する、盤面に1つのパスを描くパズルです。上級者向けパズルコンテスト・Post Pre-PGP 2020 Finalにて出題されています(難易度は高めです)。
※記載がありませんが、実際は「移動途中のマスをゴールにしてはいけない」というルールもありますのでご注意ください。
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クロスレビュー
(広瀬あつみ)
しーか君かわいい。(勝手に名前を付けるな)
歴史探訪ツアー、行ってみたくなりますね。王国に行ったら、ちょっとなにかいたずらして物騒なことを起こしてみたいです(
(あーく)
広瀬さんと共謀してちょっといたずらしたいです。
石碑の問題をこっそり超難問に書き換えておくとか。ガイド中にナナさん「では解いてみましょう!…あれ?…あれ?」ってなるの見たいですね。パズルが解けないと闇のパワーがたまるらしいのでその勢いでナナさんを闇の道に引き込みましょう。しかし冷静に考えてみるとただの迷惑行為であるな。
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