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Puzzle Boss Rush No.9 Fusion Black 解説・裏話

こんにちは、パズルボスラッシュDay 9、Fusion Black立案者のゆずっこです。
この記事では、このモンスターが生まれるまでの紆余曲折、生まれてからの阿鼻叫喚などを濃密に描いたものになります。この記事は無料なので読んでね!(理由は後述)

Fusion Blackが生まれた理由

ボスラッシュをパズルで行うと聞き、作るのが最も得意なパズルであるへやわけで勝負したいという強い思いがありました。ただ、めちゃめちゃでかいへやわけをチーム戦で解かせるのは明らかに飽きるし展開に乏しいという思いがあり、この2つを解消するべく色々と考えた結果、条件を「全体白連結」にした各領域19×19を3×3に配置したでかい複合盤面を作成するということで落ち着きました。
さて、黒マスを塗るだけのパズルで内部表出のみ、白を連結させても壊れないパズルというと…
思いつく限りでは、ぬりみさき、のりのり、黒どこ、tapaのバリアント、caveくらいでしたね。
ここで様々なパズル大会のインストを漁り始めます。まずはたまたまiPadに入っていたものから…… JZCパズル祭り2017という大会のインストラクションになんとsunglassopiaなるパズルがあるじゃないですか。
これは採用するしかない!そして大きいギミックを仕込むしかない!と意気込んだのはよかったのですが、現状のパズルは7つ、それもサングラスのレンズになってくれそうな、黒がタテヨコに少しでも連結してくれるものがcave (ルール的に都合が非常によい)とその他黒全連結のものしかない状況でした。あと2つどうしよう、と過去の世界パズル選手権 (WPC) のインストラクションを漁っていると2017年インド大会ラウンド7にcanal viewを発見し、使い勝手がよさそうという点で採用しました。ただ、これ以降他のWPCのインストを見てもめぼしいのが出てきません。そんな中、サングラスを使用した複合パズルのギミックを考えていたところあるパズルの存在を思い出します。それはSSS (Sundoko Snake Shape)というもので、Yuki KawabeさんがGrand Master Puzzlesというサイトに投稿したものでした。こんなイロモノ、じゃなくて珍しい種類があるならこのサイトを掘っていけば何かしら使えそうなパズルがあるのではないか、そう思い探していたところ、見つけたのがinner coralでした。
選定に紆余曲折ありましたがこれで9種類、あとはsunglassopiaの特大ギミックが発動できるように配置するだけでした。このようにして一人で作ったプロトタイプが(チェッカーの皆さんの多大な努力のおかげで)完成しましたが、1つだけ問題が発生しました。それは難しすぎて解ける人が非常に限られてくることでした。
これではボスラッシュの意図と合わない、ということで難易度を落としたものを新たに作ろうということになりました。せっかくなので複数人で作ることにしまして、PBRのメンバーに募集をかけたところのりのりをutimeが、cave, canal view, sunglassopiaをにょろっぴぃが担当することになりました。さてこの時実は難易度を落とす方法として3つ案がありました。「1つの領域を10×10にする」「種類を減らして38×38にする」「ただ単に難易度をめっちゃ下げる」の3つでした。どれにしようか迷っているうちにutimeがのりのりを19×19で仕上げてきたので3つ目の案に落ち着きました。
新しく作る時に注意したことは主に3つ、「入り口を複数作る」「大域手筋を使いすぎない」「プロトタイプで使用した上級手筋を封印する」でした。チーム戦なのでチーム有利にしたいですからね。

解き筋

それでは、盤面を見ていきましょう

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…改めて見るとでかい、ですね。作っていた時の感覚よりでかいです。ただ各領域は19×19なので17×17が解ければ問題ない大きさでしょう。
各領域に入り口があると思いますが、一番特殊なのがのりのりです。白連結に注意して進めましょう。
ここでのりのりの作者utimeさんからの解き筋指南です。
utime「上部に着目します。

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黄色部分のいずれかは黒マスですが、どちらにせよ赤部分が黒マスでないと青部分がどちらも黒マスとなり分断されてしまいます。」

utimeさん、ありがとうございました。さて、簡単な手筋で進めるとこのような盤面になります。

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黒どこの盤面で同じ数字が意味ありげに固まっているところがありますね。ここでは黒どこの黒隣接禁という性質を利用した手筋が出てきます。33や5555というように並んでいるところは、それぞれの数字であと一つだけ白マスが置ける、という状況になっています。この時に、例えば5555の数字を全部満たすように黒マスを置こうとすると5555の上下にジグザグに置くしかありません。へやわけで言う2×4に4が入ったものが5555の上下に出現するのです。この手筋を利用すると黒どこがほとんど埋まります。

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のりのりもこの盤面の中では良心的なのでのりのりも埋めてしまいましょう。作者のutimeさんに代わります。
utime「左下部から。まずは塗り分けます。

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赤枠内部の各のりは、青色部分と黄色部分を1つずつ含む一方、赤枠内部の十字形の領域に着目すると、青色部分は高々2つしかのりに含まれないことが分かります。
よって赤枠内部ののりは高々2つ、赤枠内部の黒マスは高々4つであることが分かります。
一方、赤枠内部には3つの領域が含まれているので、そのうち赤枠からはみ出している部分(赤色のマス目)は黒マス確定です。

最後の埋め方です。

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黄色部分、青色部分に含まれる黒マスは計偶数個なので、赤色部分に含まれる黒マスも偶数個となります。赤色部分がともに黒マスなら黄色部分が破綻するので赤色部分は白マス確定です。
解説しなかった箇所は、分かりやすく浅めな仮置きのみでスイスイ解けると思います。」

utimeさん、ありがとうございました。この調子でいくとnorinoriが埋まると思います。

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この調子でぬりみさきに行きましょう。ぬりみさきは「禁止形」といったルール上矛盾する形が多く存在しますが、今回は極力使わないで解けるように作ったつもりです。知識は差がつきやすいですからね。さて、白連結に注意しながら右上と右下の孤立しそうな白マスなどを救ってあげましょう。

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さて、7割ほど埋まったと思います。ここでへやわけを見てみましょう。へやわけにはこのボス最難関の入り口が仕込んであります。1が密集しているところで三連禁の個数と黒マスの個数を見比べながら白マスを確定させていって黒マスの範囲を狭める、という高等テクニックです。ただ、非常にマニアックな議論になるので、強い興味がある方以外は読み飛ばしてもらって結構です。

まず以下の形において赤には少なくとも1つ、オレンジには少なくとも4つ黒マスが入ります。

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ここで、3の部屋のうちオレンジがかっていた部分は黒マスが2つまでしか入らないので、黒マスの必要数と最大数が一致するためオレンジの領域に含まれなかった1の部屋の一部が白マスとして確定します。

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ここでその下の1の部屋の白マスが確定します。すると右にあった3の部屋の黒マスが入る場所が3つとも確定します(下図青部分)。

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よって3の部屋の青くない部分は白マスと確定し少し進みます。
そうすると確定した白マスから三連禁が生じ、新たにオレンジのマスの一部が白マスとして確定します。

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ここで下図の赤い5つのマスに注目します。

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ここに必要なのはリンクとチェーンという議論です。リンクは2マスの間の真偽関係を指す語で、2種類 (+1種類) あります。強リンクと弱リンク (とそれらを合わせた強弱リンク) です。チェーンはリンクの連なったものという意味ですが、弱リンクと強リンクが交互に来るものが有用です (作者の心の声:チェーンについてはなにやら誤用のような何かが広まっているので使用する際は各自定義を確認してからにしてください)。それぞれの定義についてはSP1さんのサイトが簡単で、hodokuのサイトが非常に詳しいですが、へやわけの場合だと強リンクは「どっちも白マス(偽)にならない」、弱リンクは「どっちも黒マス(真)にならない」です。またチェーンには、強リンクと弱リンクが交互に来るもののうち、環状になったものでかつリンクの数が奇数であると開始地点の真偽が確定するという強い性質があります(弱リンクで始めた場合偽に、強リンクで始めた場合真になります)。さて、この5つのマスについてチェーンを組み立てていきましょう。
①のマスから開始します。①と②は隣同士のマスであり、三連禁の関係から強弱リンクです。②と③は隣同士のマスであり、かつ前述の議論からこの2つのマスには必ず1つ黒マスが入ります。よってこれらも強弱リンクとなります。③と④は隣同士ですが、黒マスが入らないこともありますのでここは弱リンクとなります。④と⑤は、一番最初と同様強弱リンクとなります。⑤と①は両方1の部屋に属するので弱リンクとなります。強弱リンクは強リンクと弱リンク両方として扱えることを考慮し、ここで=を強リンク、ーを弱リンクと置くと、以上から①ー②=③ー④=⑤ー①となり、奇数個の交互のリンクからなる環状のチェーンができました。つまり①のマスは偽、次の図のように白マスになる、ということが分かりました。

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ここからは簡単でしょう。へやわけが大体埋まります。

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次はpataに挑戦してみましょう。そこまで難しい手筋は使いません(使わないように作りました)。Tapaを解いたことがある方ならなんとかなるでしょう。黒マス全連結に注意しながら進めていきましょう。

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次はinner coralに行ってみましょう。どの方向にどの数字が対応するかを決めることが重要です。数字マスを通して黒マスを見る時、その2つのマスで数字が2つ共有することも大事です。黒マスが連結するために脱出する経路をがんばって見定めましょう。すると下図まで進むはずです。

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半分くらいですね…どうやら左の方にも目を向ける必要がありそうです。それではsunglassopiaを見てみましょう。ここで大事なのはsunglassopiaにある黒マスとタテヨコにつながった黒マスは全てレンズになる、ということです。どのレンズがどのつるにつながるかを考えながら進めていきましょう。

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おや?サングラスのレンズが上下のパズルに染み出していきましたね。下のcanal viewは黒連結なので大きなレンズができそうです。Canal viewを進めつつ、どのつるにつながるか注意して線対称の位置に黒マスと隣接する白マスだけを写していきましょう。

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Caveとcanal viewとsunglassopiaは全部同時に進めないと解けなさそうですね。がんばりましょう。Caveは白マスがどれだけ伸びるか、canal viewは黒マスがどれだけ伸びるかを意識すると良いかもしれません。

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途中経過です。Sunglassopiaにもちゃんと注目しましょう。矢印のヒントは見落としがちなので…
またCaveのルール「黒マスは盤面内のどこかの辺に接続しなければいけない」により、一番大きいサングラスのレンズがcave領域内で辺と接続することが分かります。よって、白マスの間の空白マスを黒マスが通る、というところが出てきます。またcaveで他のレンズが入っている領域には対称となるcanal viewの位置において黒マスが存在し得ません。よってcanal viewの左上に大きく白マスが決まります。がんばってください。がんばると下図まで進みます。

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ここでinner coralまで戻りましょう。大きい数字をイラストロジックのように考えると数マス決まったりしますよ。多分ここら辺まで来られると思います。

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ここでへやわけの下の方の黒マスはinner coralの黒マスとつながっている(つまり白マスを外に逃がせない壁として働いている)ので、へやわけの一番下の行の左の方にある黒マスとinner coralの黒マスはつながってはいけないことが分かります。そうするとinner coralの左上に黒マスが入らないことまで決まりますね。あとはウイニングランです。

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あれ、止まってしまいましたね…ここで注目すべきはcaveの右下の黒マスです。Pataとつながっていますが、これらはpataを通じて盤面の辺に接続しなければならないのです。これを考慮して進めると…

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完成です。めでたしめでたし。

共同作者からのコメント

utime「本来テスターの役割で運営に入ったのですが、最後のボスはみんなで作ろうという流れになり、作らせていただきました。のりのりは解いたことがほぼなかったのですが、のりのり以外の隅は全く解いたことがなかったので、のりのりを担当いたしました。のりのりの初等手筋を知らなかったため、逆にパズル勢でない方でも解きやすい仕上がりになったかもしれません。」

にょろっぴぃ「左側の3種類を担当しました。あと、JZC2017でSunglassopiaを出題した張本人です。まさかこんな形で返ってくるとは、この世界、何が起こるか分かりません。
それはともかく、最初に57×57ということと、ジャンルを書いた画面を渡されて「この人は正気なのか」と思いました。9ジャンル複合57×57の時点で完全に狂気でしたが、大部分の人が知らないだろうマイナージャンルもてんこ盛りです。その後、ゆずっこの強い要望により、いつのまにか原案の解きチェックをすることになり、その流れでいつの間にか作問にも参加していました。原案を踏まえ、「左3種類は連結したサングラスを絶対入れないといけない」と思い、3種類をまとめて引き受けることにしました。
そんな経緯からか、方針は非常に立てやすく「3種類を連結させたサングラスを入れ、中心軸を盤面の中心からずらす」「それとは別に、Caveと連結させたサングラスを入れる」「知識のいる手筋は入れない」といった方針で一気に作りました。時間がなかったこともあり、確か2時間ぐらいで作った気がします。2点目の方針を取る時点で、Canal Viewにはかなりの空きスペースが出来ることになりますが、盤面全体が大きいので、空きスペースが多少できても問題ないだろうと判断しました。
なるべく易しくしようと思っていたのですが、大域ギミックがあるからか、想定よりも難しくなってしまったのが反省点です。これでもヒントを大分追加したのですが、特にサングラスの序盤が難しいと思います。
ところでへやわけ、あれは何なんですかね…。解きチェックしていたら確実に「難しすぎるので難易度を下げて下さい」と言っていたかと思います(笑)下の裏話にも繋がる話ですが、突貫工事で最後の方、チェックや難易度管理に手が回らなかったことがとても悔やまれます。ところで、「最後だし易しくすれば57×57行ける!」って推したのは誰ですかね…」

裏話

この盤面、実は完成したのがDay7実施時あたりで、急いでチェッカーの皆様に投げ、色々と修正し、チェック含めできあがったのが当日の昼というかつてない突貫工事でした。そのうえ、inner coralのヒントを見逃し解無しとなっていた盤面を出題してしまいました。開始後3時間経って(当日の24時)ようやく把握して修正が出る失態を犯してしまいました。非常に申し訳ありません。参加者の3時間を徒に浪費してしまったお詫びとして、この記事だけは全ボスの中で無料となっております。
本当は、最初の想定としてはこの問題を非常に簡単にしておいて、参加者に「あれ、ラスボスなのに手応えがないぞ、どういうことだ」と思ってほしかったのですがサイズの問題もありまして普通に難しいという声がいっぱい出ました。複数人で作問する時の難しい点ですね。もっと連絡を取り合わないといけなさそう。
さて、当日参加された方でpdfをダウンロードした時に“omoteboss.pdf”とファイル名が書いてあったことに気付いた方はいましたか?これは単純なミスで、本当は裏ボスのことを伏せておくはずだったのです。開始直後に気付いた方がいたので、もうこれはしょうがないと諦めてそのままにしました。修正が入るとさらに怪しまれますからね。

結語
長々とお付き合いいただきありがとうございました。これにてDay9 Fusion Blackの解説・裏話は終了です。この解説をみて「お、できそうだな」と思った方は是非裏ボスの方にも挑戦してください。ここに“特別に”裏ボスへのリンクを貼っておくので是非…

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