データ活用の民主化: AirTableの紹介
そろそろ梅雨に入りそうな予感。皆さんはどうお過ごしですか? 謎のおじさんTK(通称:謎オジ)は夕食のカレーを煮込みながら、このブログを執筆中ですが、因みに私はハウスのジャワカレー辛口に、豚肉と冷凍のアサリを入れて煮込んだ、シーフードポークカレーがお気に入りです!!
さて、本題に入りますが、世界の先進的なテクノロジーやサービスを紹介するシリーズの第2弾として紹介したいのがAirTable(エアテーブル)です。一瞬フードデリバリーの会社かと思ったのは私だけ? クラウド上のデータベースだからAirTableという名前なんですね。私はデータベースというと難しいイメージありました。SQLの習得、難しい設計、データの衝突管理、クレンジングや名寄せ、データ保護やセキュリティ対策などを考えるとIT部門に管理を任せる必要がありました。 しかし個人やチームが管理するExcel上のデータ、更にはセールスフォースなどのSaaS環境にデータが分散化しています。こうしたデータやログを集約して分析する時は、まずCSVファイルでそれぞれダウンロードし、Excelに集約してピボットテーブルを作って相関分析をする、などの煩雑なマニュアル作業が必要でした。こうした課題をノーコードながら一発で解決、データベース管理・可視化を民主化してくれるのが、AirTableです。 それでは、早速 AirTableについて、紹介していきます。
1. 会社概要
サービス名: AirTable
提供会社の名称: Formagrid, Inc.
本社所在地: アメリカ サンフランシスコ
設立:2013年
創業者:Howie Liu, Andrew Ofstad, Emmett Nicholas
評価額: 110億ドル(約1兆6000億円)
同社は、「誰でも簡単にカスタムアプリケーションを作成できるようにする」をミッションに、クラウドベースのコラボレーションデータベースを提供する企業です。Airtableのプラットフォームは、スプレッドシートの使いやすさと、データベースの柔軟性を兼ね備えており、ユーザーはプロジェクト管理、タスク管理、データベース構築、アプリケーション開発など、さまざまな業務においてノーコードで各部門でも活用できる手軽さから、Fortune100の実に80%を含む幅広い企業群 (約45万社)で利用されています。 昨年の9月に27%の人員を削減するなどのニュースも流れましたが、2023年には$375 Million(約560億円)のARR(前年比50%増)を達成するなど、依然として順調に成長している企業です。
2. 実際に触ってみた
では早速、触ってみます。インストールや初期設定方法については直感的で難しくないのでここでは説明を割愛します。設定を一通り終えると、ワークスペースが現れます。 スクラッチで始めることもできますが、テンプレートを活用して様々なビューのデータベース活用アプリを作ることもできます。ワークスペースの共有も簡単で、画面構成はMiroそっくりだと感じました。
まずテンプレートを覗いてみます。ユースケース別に様々なテンプレートを確認できます。 カテゴリーとしては、プロジェクト管理、マーケティング、プロダクト開発、運用、IT&サポート、エンジニア開発 などに分かれています。
今回はテンプレート一覧からバグトラッカーのテンプレートを選択しました。(画像はGoogle Translatorで日本語に変換して表示しています) 勿論一からスクラッチで作っていくことも可能です。
画面の左には、様々なビューを選択することができます。今見えているバグパイプラインはカンバン形式のビューになっています。ここでは進行状況やステータスに合わせてカードが分類されており、それぞれのカードにはバグ報告事案の内容(例えばバグの内容、優先度、開設日、担当者)が全てレコードとして含まれ、その一部が表示されています。仮にステータスが変われば、担当者は例えば進行中から完了にドラッグ&ドロップでステータスを簡単に変更することができます。
またカードを1度クリックすると、非表示設定されたバグの詳細情報も確認できます。 各項目の内容は担当者自身が変更する事も可能で、例えば優先度を変更したり、担当者のアサインを変更するなど、直感的で分かりやすUIとなっています。
次に左のメニューバーから、違うビューを選択してみます。今回はスプレッドシート形式で表示された『優先度別のバグ』を選択しました。上から優先度の高い項目が表示され、完了ステータスが一目で確認できます。
また画面の右側では、そのスプレッドシートの内容をグラフ化したり、ガントチャートなどでビジュアル化するなどのカスタマイズが簡単にできるようになっています。
外部データのインポートや既存テーブルへのデータの追加は上部のメニューバーからファイルの種類を選んで実行します。例えばセールスフォースなどメジャーなアプリケーションであればそのまま取り込めますし、一覧に掲載されていないアプリの場合でもCSVに取り込めるものであれば1ステップ作業が増えますが、対応は可能です。 このようにしてデータの相関分析なども実行できます。
さらに、ワークフローの自動化シナリオも作ることができます。上部のメニューから自動化を選択し、手順に従ってシナリオを作ることができます。例)フォーム(バグ報告)が送信された時に、チームメンバーXに、その通知を知らせる、などのワークフローは簡単に作れます。
プランをアップグレードすると、ワークスペース管理をグループで共有することができます。アップグレードメニューは以下の通りです。プランによる違いは、基本的にはレコード数、実行数、データのサイズなどの規模/拡張性に依ります。それ以外は連携できるアプリの数、サポートされているビューの種類が異なります。Freeでは、グリッドビュー、カレンダービュー、フォームビューのみをサポートしますが、Businessでは、ガントチャート、ギャラリーなど全てのビューをサポートしています。またBusinessでは、ワークフローによる自動化やセキュリティ管理なども含まれてきます。
予想以上にカスタマイズ性も高く、奥が深いので、一旦ここまでにしたいのですが、最後にAirTable がAIをどのように取り込んでいこうとしているかが関心がありましたので、AirTable AIについて触れておきます。AirTable AIには 1. ルーティング機能 2. サマリー機能 3. ドラフト生成機能、の大きく3つです。
1. ルーティング機能は、例えばテキスト化された顧客フィードバック内容をを元に、正しいチームへ自動で担当割するようなワークフロー機能です。2. サマリー機能は、例えばミーティングのサマリーをキャプチャーし、アクションアイテムや締切日などの情報を抽出し、アクションアイテムテーブルに自動で落とし込むようなワークフローです。3. ドラフト生成機能は、例えば製品開発プロジェクトシートから製品化できた機能だけを抽出し、プロダクトリリースのドキュメントを作成したり、プレスリリースのドラフトを作成するような機能です。 まだまだ、これからAI機能は拡張されていくと思いますが、AirTableの活用に関連する人間の単純作業部分を自動化して効率化できるように改善しようとしていることが読み解けます。
3. サービスを利用した感想
率直な感想としては、プロジェクト管理、マーケティング、プロダクト開発、運用、IT&サポート、エンジニア開発など、色々な部門で、色々な用途に柔軟に活用できそうだと思いました。
競合他社と比較した際の優位点
結論として用途によって一部機能はぶつかるものの、直接的な競合企業は余り無いです。 AirTableはデータベースであり、データ管理機能とそれを表示するビューの種類やカスタマイズ機能が優れていてどの部門でも簡単にデータの活用・分析ができる点が優れています。 ただし、Google Sheetsで事足りる場合や計算機能が必要な場合はAirTableは不向きですし、データ量が大規模だったり大規模組織で使うようなケースでは、解析なども専門的なデータベース管理システム(DBMS)や高度なプロジェクト管理ツール(例JiraやAsana)と比較すると、汎用性がメリットである一方、機能性は不足しているのと、アプリが重くなるといった評価も聞きます。
4. 日本におけるターゲット市場
想定されるユーザー層
1. 中小企業(SMBs):
• コスト効率を重視し、柔軟でカスタマイズ可能なツールを必要とする企業。Airtableの低価格プランは、中小企業にとって魅力的です。
2. スタートアップ:
• 高速な展開と適応が求められるスタートアップ企業にとって、Airtableの迅速な設定と柔軟なカスタマイズは大きな利点です。
3. 大企業の特定部門:
• 大企業内の特定の部門(例えば、マーケティング部門、クリエイティブ部門など)が、プロジェクトの効率的な管理とチーム間のコラボレーションにAirtableを利用します。
5. 教育機関:
• 学校や大学が、学生データ管理、研究プロジェクトの追跡、教育プログラムの運営に使用します。
ターゲットとする業界や市場セグメント
1. テクノロジー:
• ソフトウェア開発、ITサービス、スタートアップ企業が、プロジェクト管理、バグ追跡、製品開発の進捗管理に利用します。
2. マーケティングおよび広告:
• マーケティングキャンペーンの計画と管理、クライアントデータの追跡、広告効果の分析に使用されます。
3. メディアおよびエンターテイメント:
• コンテンツ制作、イベント管理、スケジュール管理、プロジェクト追跡に利用されます。
4. 教育:
• 教育機関、教育プログラム、研究プロジェクトの管理に使用されます。
5. 非営利団体:
• プロジェクト管理、資金調達、ボランティア管理、イベント計画に利用されます。
5. 日本展開における期待と想定される課題
• 期待値: これまで企業においては、基幹システムに集約化されIT部門が管理するという構造でしたが、組織やシステムが分散化し、モビリティの高い環境が進む中で、データ活用の民主化は、特にDXを推進する企業において、非常に重要になります。 AirTableはこうした環境において、是非普及して欲しいサービスです。
• 課題: AirTable自体は日本語をサポートしていません。また各部門がAirTableをどう活用したらどれだけの成果が見込めるかを真剣に考えられるかどうかでその価値は決まってくるだろうと思います。 また、AsanaやGoogle Sheetsはそれなりに普及しているので、上記に記したような、AirTableの特徴を活かし、これまでの作業コストをどう削減できるかだけではなく、日本や特定の業界/企業ならではのデータのユースケース・価値を見出す必要があるのかもしれません。 を確立する必要があるでしょう。さらに、日本向けには、日本語でのサポート対応が求められるかと思います。AirTableの今後に期待しましょう。
6. まとめ
今日のブログは、特にバグトラックのユースケースを取り上げてしまった事もあり、これまでのタスク管理業務の代替ソリューションとしてのAirTableの利便性を強調する記事となってしまいましたが、企業の大きな流れとしては、基幹システム集約型から、様々なSaaSサービスを活用する方向に向かっています。その中で、分散したデータを(IT部門を介さず)いかに有効活用しバリューにするかは、DX化における鍵だと思います。そうした意味で、AirTableのようなソリューションの活用を考えてみても良いのではないかと思います。 皆さんはどう感じましたか?
ということで、海外企業探訪ブログ第2弾を締めます。ご感想などあれば是非フィードバックお願いします。以上、謎のおじさんTK(通称:謎オジ)がお送りしました。
2024年6月10日 さあ、カレーを食べるぞ!
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