出張・経費・法人カードを一まとめ: ユニコーン企業Navanをレビューしてみた
蒸し蒸し、ジメジメ、寝苦しい、そして今週は多額の税金請求に悩まされている謎のおじさんTK(通称:謎オジ)です。 ところで先週末の朝は、気分転換に手作りパンを使って鯖サンドを創作してみました。ソースは豆板醤、大蒜、胡麻ペーストに香辛料を加えてエスニック風にしました。皆さんは週末いつもどうお過ごしですか?
さて、本題に入りますが、世界の先進的なテクノロジーやサービスを紹介するシリーズの第3弾として、企業の旅行管理や経費管理 (Travel & Expense)のオールインワンソリューションで革命起こすNavan(旧 TripAction)を紹介します。Navanという社名はアイルランドの町の名前が由来なのかと思いきや、「navigate(ナビゲート)」と「avant(革新的)」を組み合わせたもので、企業へTravel & Expenseサービスを簡潔でエレガントに提供する意図があるとのことです。
フィンテックの大きなトレンドとしても企業向けTravel & Expense分野は注目の一つです。トラベル管理なら TravelPerk、経費精算ならConcur、Expensify、法人カードならBrex、Rampなどグローバルワイドなソリューションプロバイダとして有名ですが、私の知る限り旅行管理、経費管理、法人カードの3つの巨大な市場を統合できるグローバルソリューションとして秀でた企業は今の所Navanのみではないかと思います。(正しくはNavanは法人カード機能は無く統合できるだけですが)
Navanは、元々2015年に旧名TripActionとして企業向けの旅行管理プラットフォームサービスを開始したのですが、上記3つの市場を統合しワークフローを自動化することが、企業にとってもユーザーにとってもエクスペリエンスに大きな革命を起こすと考え、2021年から相次ぐ企業の買収を経て現在のポートフォリオとグローバル展開を進めました。さすが資金力があるスタートアップならではの展開モデルです。ちなみに、2024年5月のCEO Ariel Cohen,のコメントだと、既に黒字化へ転じIPOも近いということのようで、IPO後にどんな株価が付くのか非常に楽しみです。それでは、早速 Navanについて、紹介していきます。
1. 会社概要
サービス名: Navan(旧 TripAction)
本社所在地: アメリカ カリフォルニア パロアルト
設立:2015年
創業者:CEO: Ariel Cohen, CTO: Ilan Twig
評価額: 92億ドル(約1兆4500億円)
調達額:15億ドル
主な投資家:Andreessen Horowitz、Coatue、Goldman Sachs、Lightspeed
同社は、明確な顧客数は公表していないが数千社に上り、例えばDatabricks, Lyft,アドビ, Netflix, Shopify, トムソン・ロイター、ハイネケンなど錚々たる企業に利用されています。昨年2023年12月に5%にあたる145名のレイオフを発表しているが、既にキャッシュフローの黒字化を達成し、今もなお収益が平均で約40%増加、同社のフィンテック事業は旅行事業(30%)よりも高い成長率(100%)を示しているようで、順調な成長をしている企業といえます。
2. 実際に触ってみた
では早速、触ってみます。こちらはアカウントを作る前の画面ですが、Navanは旅行の予約において中間マージンを取らず、他社と比べてどれだけのお金をセーブできるかを宣伝/強調しています。 右下紫の"Create company account"ボタンを押して前に進めます。
するとワークスペースが出現しました。最初のセットアップについてはワークフローが分かりやすくナビゲートしてくれます。(スクショはChrome上のGoogle翻訳で日本語化しているため、多少日本語に違和感あるのはご了承ください)
最初は会社組織とユーザー(従業員)を設定します。ユーザー設定はマニュアル設定以外にも外部のHRISシステムとの連携やCSVファイルでの一括アップロードが可能です。残念ながら日本独自のHRISはサポートされていませんでした。
メンバーの登録が一通り終わると、従業員には個別ログイン設定の案内通知がメールで届くので、登録をし、モバイルアプリをダウンロードします。
セットアップが完了すると、従業員は早速アプリを使って、旅行の予約を開始できます。
予約の開始は、右下のNew+(紫のボタン)から New Tripを選択して前に進めます。画面を見てもらえると分かりますが、飛行機の予約、ホテル、列車、レンタカーを一つのアプリからまとめて予約できます。 確認したところ、飛行機、ホテル、レンタカーは日本での予約が可能です。ただし列車についてはまだ日本がサポートされていませんでした。 また画面の上部にはBusinessとPersonalで予約を分けることができ、Business用途であれば、そのまま企業アカウントへ請求/法人カードなど任意の支払い方法から自動で引き落とされるように設定できます。 モバイルアプリは英語のみですが苦にはならないと思います。将来このアプリ上で全ての予約ができ、マニュアルでの経費精算の手間がなくな流のであれば、非常に便利でユーザーエクスペリエンスも高いと感じました。
デモ利用で使っているため、実際に予約はしませんでしたが、予約を完了すると予約一覧や、過去の旅行履歴一覧が確認できます。従業員向けの画面はシンプルにこれだけです。
管理画面に戻りますが、Travel AdminのDashboardに進むと、特定期間における予算の利用状況や経費カテゴリーごとの利用率などが一目で分かります。また右上のAnalyzeボタンを押すと、利用状況の詳細についてカスタマイズ分析が可能です。
その他、レポートや渡航先の危険情報の集約、承認一覧、予算の上限を決めるなどトラベルポリシーの設定なども全て管理画面から設定することができます。
コンフィグレーション画面では、支払い方法の選択、連携させたい法人カード等の支払い方法の設定なども可能です。例えばコストセンターや経費の種類ごとに支払い方法を分けるなどの細かい設定も可能となっています。
なお、デモ画面には実際のデータが記載されていないため、分かりづらい部分があるかと思いますが、ご了承ください。
価格ですが、200名以下は基本無料、それ以上はエンタープライズ向けの有償価格になるようですが価格は非公開です。 無料プランには、経費追跡、経費精算、旅行管理などの基本機能がすべて含まれています。 エンタープライズプランプランの特徴は以下の通りです。
. 高度な機能: Enterpriseプランは、大企業向けに設計された包括的な旅行および経費管理ソリューションです。以下のような高度な機能が含まれます。
• 会計ソフトとの統合: QuickBooks、NetSuite、Xero、Sageなどの人気会計ソフトと統合可能です。
• カスタマイズ可能な制御と権限: 強化されたアクセス制御、コンプライアンス管理、カスタマイズ可能なフィールド。
• 高度なレポートと分析: リアルタイムレポート、予算管理、詐欺検出。
• 専用サポート: 専任のアカウントマネージャーと優先カスタマーサポートが含まれます 。
3. サービスを利用した感想
日本語の未サポート、日本のHRISや法人カードも未サポート、や日本における電車のサポートがされていない点が日本での展開においては色々と難点があり正直 現時点で日本企業での利用は難しいと感じる一方で、旅行、経費精算、法人カードを含む支払い管理が一元化され、ポリシーベースで自動化できる点は、可能性を感じました。 特に、グローバル企業であれば、バックオフィス機能を本社に集約したい、あるいは従業員の海外出張が多い企業の場合に、グローバルの経費を統一されたポリシーの下で一元的に管理できるTravel & Expenseは非常に魅力的です。 また法人カードやHRISなど現在利用されているものともシームレスに連携できる点なども、利用のハードルを下げるソリューションとなっており、よくできていると感じました。 繰り返しになりますが、日本企業にとっては、日本の電車(新幹線や特急等)の予約機能が欲しいですね。これはJRがデータの連携を許さないんだろうな。
4. まとめ
今回のNavanは、日本での利用を考えた場合に、若干足りなさを感じるものの、3つの大きな市場(旅行予約、経費精算、法人カード)を横串で差して、しかもグローバル展開まで視野に入れることで、大きな時価評価額を得たNavanのビジネスモデルは、グローバルスタートアップのあり方として、非常に王道な展開方法であり、日本のスタートアップのグローバル展開方法を考える上でもヒントになるのではと感じました。 皆さんはどう感じましたか?
ということで、海外企業探訪ブログ第3弾を締めます。ご感想などあれば是非フィードバックお願いします。以上、謎のおじさんTK(通称:謎オジ)がお送りしました。
2024年6月20日
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