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ハイパーボリア人観てきたよ【ネタバレなしレビュー】
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「オオカミの家」で世界的に注目を集めたチリの監督コンビ、クリストバル・レオン&ホアキン・コシーニャの長編第2作。主演俳優アントーニア・ギーセンやパペット姿のレオン&コシーニャ監督が実名で登場し、チリ現代史の暗部やナチスドイツをモチーフに、実写やコマ撮りなどさまざまな手法を駆使して描きだす。
女優で臨床心理学者のアントーニア(アント)・ギーセンは、幻聴に悩まされているというゲーム好きの患者を診察する。アントからその話を聞かされた友人の映画監督レオン&コシーニャは、幻聴の内容が実在したチリの外交官・詩人でヒトラーの信奉者でもあったミゲル・セラーノの言葉だと気づき、これをもとにアントの主演映画を撮ろうと提案。アントはセラーノの人生を振り返る映画の撮影を始めるが、いつしか謎の階層に迷い込み、チリの政治家ハイメ・グスマンから、国を揺るがすほどの脅威が記録された映画フィルムを探すよう命じられる。
レオン&コシーニャ監督による2023年製作の短編「名前のノート」が同時上映。
大変心待ちにしていたハイパーボリア人、観に行って来ました。より多彩かつ大胆かつ繊細になった表現技法の数々に圧倒されっぱなし。
「オオカミの家」の画面構成が色彩豊かでファンタジー風味な分、今作のセピアな寒々しさと白黒ダークで風刺の効いた味わいがより刺さる。
実写と芸術が入り混じる映像は、どこからどこまでが現実かまるで分からなくなって、映画の中に迷い込んでしまったのかと不安になる。観客を攫って動けなくするのが本当に上手い。
オオカミの家より難解で、一度観ただけでは到底理解出来ない深みにハマりました。
多分、噛めば噛むほど味わい深いスルメタイプの作品。チリの政治的・歴史的背景に触れながらも、問いかけを空中に何度も投げるような複雑さと、その投げ続けた問いが一気に押し寄せて返ってくるような迫力を感じた。
※追記 クトゥルフ神話的要素はエッセンスにひと混ぜ香る程度。本質は他のところにある作品でした。
同時上映の短編、「名前のノート」も素晴らしかった。
公開したばかりなので、みんな観て欲しい。そして考えて欲しい。
考えることを止めない大切さや何かに左右されない純粋な意志とか、現代社会が置いてきぼりにしつつあるものごとについて。
そう思いました。