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マルジェラ(Margiela)の奇妙なTabiブーツ

ファッションに関心があるかたなら、
「マルジェラ」を聞いたことがない方は少ないのではないでしょうか?

マルジェラといえば、何を思い浮かべますか?

白い糸で4点に留められた象徴的なタグ?
デザイナーやスタッフの白い白衣?
モノトーンで統一された百貨店のマネキン?

マルジェラは歴史あるブランドにも関わらず、
名前を聞いて何かしらを思い浮かべられるほどに
幅広い年代に愛され、「マルジェラ」というブランドの統一感も保ち続けている
とても偉大なブランドだと思います。

そして、マルジェラのアイテムの中でも
ロングヒットとなり、アイコン的存在でもあるのがタイトルにもある
「Tabiブーツ」だと私は思います。

私はあのブーツを見たとき、
「え!めっちゃ変?!??!何あれ!??!?!?」
足袋ソックスや五本指ソックスを初めて見たときとは比べものにならないくらいの衝撃を受け、同時に違和感を覚えたのを思い出します。

本記事ではそんな奇妙なTabiブーツに焦点を当てながら
マルジェラ(Maison Martin Margiela)についてのブランド理解を
深めていきたいと思います。

早速Tabiブーツができるまでを紹介していきます!

Tabiブーツの起源は、1988年のマルジェラのデビューとなったランウェイで、
最初に歩いたモデルが着用していたことから始まります。

アイディアの発想は日本人なら誰しも知っているであろう、あの「足袋」です。

なぜ、日本の足袋だったの?マルジェラさん…と思いますよね?

それは初めてのコレクションのテーマから紐解くことができます。
ショーでマルジェラは、「身体を、戯れるべきもうひとつの布」と捉えてコレクションを展開しています。

それによって、「何もまとわないこと」が、当時他有名ブランドが展開していた過剰な表現と同等のデザイン効果を与えうることを示そうとしました。

靴に関しては、ヒールの上に裸足で載っているような感覚のシューズが欲しいと考えていたようです。当時日本へ旅行に行っていたマルジェラは、日本の歴史に触れていく中で、15世紀前の日本の作業労働用の履きものと出会います。
もともと足袋は靴下として始まり、二股に分かれたつま先は、足の親指を分けることでバランスをより良く保つためのデザインとして考えられていました。
その機能性こそ、当時マルジェラが発想していたテーマと合致し、Tabiブーツのアイディアへと変わったと推測できます。

日本旅行に帰るなり、Tabiブーツをデザイン化をします。
ヒールは横から見ると太くて高いが、前から見ると細い。そして、伝統的に男性っぽい雰囲気を醸し出すレザー。ブーツの内側を走る金具は、彼が見つけ出したオリジナルのデザインを参考にして作られました。

そして前述のショーで、Tabiブーツを披露します。
が、ただモデルに履かせるだけではなかったのです!!!

マルジェラはこのショーでのTabiブーツを注目させるためにフィナーレで仕掛けを施します。

それは、モデルたちがマルジェラのチームが着ていたのと同じ白衣を着て、赤い塗料に浸されたTabiブーツで、ランウェイの上に足跡ともひづめの跡とも言えない、不思議な赤い模様を残していったのです。

この仕掛けについてマルジェラは、
「観客はその新しい靴に気付くべきだと思ったんだ。とすれば、足跡よりもそれがはっきりと伝わるものがあるだろうか?」と述べています。
(「Foot Print: The Tracks of Shoes in Fashion / フットプリント: ファッションにおける靴の足跡」展の際に行われた貴重なインタビューより)

意図的にこの靴に注目を浴びせようと考えたのですね。このころから、マルジェラのこのアイテムにおける情熱が感じられます。人々はその見たこともない靴の形に奇妙さを覚えつつも、次第に虜になっていく感覚を覚えたのではないでしょうか。

マルジェラは、次のコレクションで、この白地に赤いひづめの足跡がついた布を、ガムテープで貼り合わせてベストに作り変え再利用し、コレクションとして発表しています。それはデザイン上の理念であると同時に予算的事情に基づく決定でもありました。

こうして、足袋の発想、次のコレクションでの再利用など、
「身近なものを新たに奇妙なものに作り変え、奇妙なものを美しく作り変える。限られたリソースの中で、今あるものを最大限に活かし、新しいものを創造する」というマルジェラの信念がTabiブーツを通して形となり、世の人々にその信念が伝わった初めての機会だったのではないでしょうか。


彼はコレクションを経てこう語っていたそうです。
「最初の頃は新しい型を作る予算がなかった。だから靴が必要なら、タビを作り続けるしか仕方がなかったんだ。でも、いくつかのコレクションが終わった頃には、タビについて問い合わせが入るようになった。そして、どんどん需要が増えた。それ以来、問い合わせが途切れることはなかったんだ、ありがたいことにね!」

今も注目され続けている「サスティナブル」という考え方を、必然的に数年前からマルジェラはブランドを通して伝え続けていたというということですね。

ここから、発表後すぐにTabiの人気は爆発的に上がり、マルジェラにとっても、ブランドを下支えした大切なアイテムであるということが感じ取れます。

ここまでがざっくりとしたTabiブーツができるまでのご紹介でした。
まだまだこの中にも割愛したストーリーは多くありますが、
これだけでもマルタンマルジェラという人の服に対する情熱や、
Tabiに込められた思いを感じとることができますよね…

さて、あなたはTabiブーツをどう思いますか?

馴染みのある足袋が、マルジェラのアイディアによってブーツに変化することで
化学反応が生まれ、このブーツを見ると、奇妙でも、美しいでも、賛否どちらにせよ、何かしらを思うに違いありません。


「何かを思わせる」という点で、多くの人の心を打つことに成功したこのアイテムは、ファッションは必ずしも美しくある必要はないとうことを教えてくれているようです。

それはファッションに限らず、異様なものでも美しくなれる、そして、少しのひねりやアイディアが、時代を越えても色褪せることのない成果を導き出すこともあるという世の中の法則を、マルジェラはTabiブーツを通して体現し教えてくれているように感じました。


次は又してもマルジェラ!
マルジェラが「タグをあえて裏に隠した理由」について書きたいと思います〜!
今回は少しブーツの誕生に焦点を当てましたが、ブランドの歴史についても触れられたらいいなと思います!


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